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真田十勇士

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巻ノ最後 訪れるものその五

「大御所様の天下は仕方ないにしろ」
「それは天下の流れであっただろう」
「しかしな」
「それでもな」 
 飲みつつだ、嘆きと共に言うのだった。
「ああしてな」
「我等は誤ったわ」
「豊臣の臣下であったのに」
「佐吉、治部憎しばかりであったわ」
 石田三成、彼への憎しみに凝り固まっていた自分達を嘆くのだった。
「今思うと愚かなこと」
「全くじゃ」
「そのことを思うとな」
「嘆かわしい」
 こう言うばかりだった、そしてそのことを言いつつだ。彼等は幸村のことも思うのだった。
「右大臣様をお助けしてくれた」
「そして戦国の最後に見事な戦ぶりを見せたわ」
「武なら我等と思っていたが」
「それもな」
「又兵衛もな」
 黒田は彼の名前を出した、酔いはかなり回っているが言葉ははっきりとしている。
「あの者もな」
「うむ、聞いておるぞ」
「真田殿と共に見事に戦ったな」
「大坂でも駿府でもな」
「そうしたのう」
「あれだけの戦が出来る者、わし程度では使えなかったか」
 黒田はしみじみとした口調で述べた。
「ではな」
「もうよいな」
「お主もな」
「それでよいな」
「何もせぬな」
「せぬわ」
 確かな声でだ、黒田は他の者達に答えた。
「過去のことは忘れた、ではな」
「それではな」
「後藤殿の武士の道を歩む様を見守ろう」
「薩摩からそうした話も聞くであろう」
「それではな」
「わしもじゃ」
 福島も言葉ははっきりしている、酒乱である彼も今は幾ら飲んでもそれでも乱れることはなかった。
「その歩みぶり聞くとしよう」
「そうじゃな」
「戦国の世は終わった」
「我等も後は世を去るのみ」
「ではな」
「あの御仁の話死ぬまで聞こう」
 こう話してだ、そしてだった。
 七将の残った者達も話していた、過去のことを。しかし先も見ていてそのうえで最後まで生きようと決意していた。
 天海は柳生を茶室に入れていた、そこで。
 彼に茶を淹れつつだ、こう言っていた。
「戦国の世は終わりこれからは」
「うむ、泰平の世になる故」
「それを守る政であるべきです」
「全くでありますな、しかし僧正は」
 柳生は天海から茶を受け取りさらに言った。
「世では何かと言われていますが」
「ははは、その様ですな」
「それは長生き故ですな」
「化けものの様に言われていますな」
「ですがその政へのお考えは」 
 穏やかなものだとだ、柳生は彼に話した。
「至ってですな」
「拙僧はどうも謀や血生臭いことはです」
「お好きではないですか」
「戦国の世が終わることを願っていました」
「だからですか」
「そうした政を考えていました、そして」
 天海はさらに話した。 
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