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真田十勇士

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巻ノ最後 訪れるものその四

「そしてじゃ」
「はい、ご息女は」
「そなたがやがてな」
「そうさせて頂きます」
 妻に迎えることをだ、片倉は主に約した。
「殿がそう言われるなら」
「その様にな、戦の世は終わったが」
 それはというのだ。
「だがそれはな」
「はい、それはですな」
「真田殿が終わらせたな」
「戦国の幕を下ろしたのは」
「あの御仁であったわ」 
 幸村、他ならぬその彼だというのだ。
「まさにな」
「左様ですな」
「うむ、天下に名を轟かす素晴らしき戦ぶりをし」
「大坂、そして駿府で」
「そしてじゃ」
 駿府の戦は表立って語られてはいない、だがそれでもというのだ。
「戦国の幕を下ろした、わしの野心も消えたが」
「天下はですか」
「うむ、もうよい」
 それはというのだ。
「完全にな」
「それでは」
「うむ、この仙台をな」
「治めていきましょうぞ」
 成実が笑顔で応えた。
「これからは」
「そうしようぞ、寒いがそれでもな」
「この藩を豊かにしますか」
「他の藩が驚くまでにな」
 それこそとだ、政宗は笑って言った。彼もまた景勝と同じく泰平になってからのことを見据えていた。
 それは立花宗成も同じだった、だが彼は。
 少し寂しい顔でだ、家臣の者達にこう言っていた。
「戦はなくなった、民達にはよいが」
「殿にとっては」
「この状況は」
「うむ、それはな」
 どうにもというのだ。
「寂しい、しかし真田殿に負けぬまでにな」
「鍛錬を積まれ」
「これからもですな」
「武士の道を歩んでいきたい」
 武芸を明日売る者としてだ、そのうえでというのだ。
「そしてその果てを見ようぞ」
「それでは」
「殿はその様に」
「我等はその殿を盛り立てさせて頂きます」
「これからも」
「頼むぞ」
 立花はこうした考えだった、彼もまた先を見ていた。しかし先を見ている者達だけではなかった。
 かつての七将、福島正則と加藤義明、黒田長政、蜂須賀家政、細川忠興、池田輝政の面々は江戸において集まっていた。そうして共に飲みつつこんなことを話していた。
「戦の世もな」
「うむ、終わったわ」
「右大臣様は生き延びられたが」
 彼等もこのことは知っていた、内密であるが。
「しかしな」
「それでもな」
「我等はな」
「虎之助も死んだしのう」
「七人が六人になった」
「思えば七人でおった時がな」
 そうしていた時がというのだ。
「最もよかったやもな」
「そうじゃな」
「今思うとな」
「佐吉や桂松と争ったが」
「若気の至りであった」
「危うく右大臣様のお命を失うところであった」
 家康についてしまったことがひいてはというのだ。 
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