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真田十勇士

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巻ノ百五十一 決していく戦その三

「一見すると普通の糸でありんすが」
「そんな糸をここで使わぬな」
「今の糸はあらゆるものを切る糸でありんす」
「まさにじゃな」
「はい」
 その通りという返事だった。
「刀と同じでありんす」
「危ういのう」
「かわしたでありんすよ」
「しかしじゃ」
 それでもというのだ。
「危うかったのは事実じゃ」
「だからそう言われるでありんすか」
「そうじゃ、しかしな」
 穴山は傀儡を鋭い目で見据えつつさらに言った。
「わしもお主に負けてはおらぬぞ」
「ではでありんすな」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。
「ここは秘術を使うわ」
「その秘術とは」
「言わぬ、その目に見せる」
 鉄砲を右手に出しての言葉だ。
「お主のその目でな」
「それではでありんす」 
 傀儡も穴山のその言葉を受けて言った。
「あっちもでありんす」
「お主の秘術を見せるか」
「そうさせてもらうでありんすよ」
「そうか、ではどちらの秘術が上かな」
「決めるでありんすよ、ただ」
 傀儡は穴山に妖しい笑みのまま告げた。
「あっちもでありんす」
「負けるつもりはじゃな」
「ないでありんす」
 全く、という返事だった。
「そうでありんす」
「そうじゃあな」
「では」
「あっちの秘術でありんすよ」
 傀儡が言うとだ、彼女の周りに。
二体三体と公卿の恰好をし能面を被った人程の大きさの人形達が出て来てだ。その彼等が。
 穴山に向かってきた、傀儡はその彼等を見つつ言った。
「全部あっちの可愛い人形達でありんすよ」
「只の人形ではないな」
「そうでありんす」
 まさにというのだ。
「あっちが思う通りに動くでありんすよ」
「心で動かしているか」
「そうでありんす」
「念力が」
「いや、言った通りでありんす」
 これが傀儡の返事だった。
「あっちが思った通りにでありんす」
「そうか、思うままにとはか」
「そういうことでありんすよ」
「そこまで出来るとはな」
「思うままに手裏剣を放ち刀を使い」
「戦うか」
「この者達をどう倒すでありんすか」
 既に穴山を囲んでいる、そして。
 傀儡の言う通り手裏剣を放ち刀を振るってくる、そうしてきていた。
「あんた様は」
「だからだ、秘術をだ」
「使ってでありんすか」
「この人形達を倒す、しかしだな」
「この人形は鉄よりも硬いでありんすよ」
 このことも言うのだった。
「鉄砲でも倒せないでありんすよ」
「倒せると言えば」
 その秘術でとだ、穴山は傀儡に言い返した。
「どうする」
「ではそれを見せてもらうでありんす」
「そうか、ではな」
「見せてくれるでありんすか」
「今からな、その秘術を見せよう」
 穴山はマントを翻した、そうして。
 姿を消した、一瞬遅れて人形の一体の刀が空を切った。その彼等が。 
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