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空に星が輝く様に

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48部分:第四話 桜の木の下でその十一


第四話 桜の木の下でその十一

「その中庭にね」
「そうだな。じゃあ」
「今から」
 こうして五人で中庭に出る。そうしてそのうえで椎名が案内した場所は桜の木の下だった。その下にビニールを敷いて座るのだった。
「そうか、ここか」
「どう?」
 椎名は陽太郎に対して問う。見れば彼女もその手にパンを持っている。しかしそのパンは何かというとだ。
「ええと、ロシアパンか」
「それとチーズ蒸しパン。他にも黒パン」
「ロシアパンか」
「食べたら頑丈になれそうだから」
 だから選んだというのだ。見ればその大きさはかなりのものだ。小柄な椎名が持てばそれはさらに大きく見えるものであった。
「だから」
「何かよくわからない理由だな」
「ロシアは大きくて何があってもすぐに復活するから」
 少なくともその体力と回復力と生命力では他の国家の追随を許さない。
「それでなの」
「それでなのか」
「あとこれ」
 言いながらさらに出してきたのは牛乳だった。毎日骨太である。
「これを飲むの」
「牛乳?」
「これで最高だから」
 その独特の抑揚の見られない口調で話す。
「パンには牛乳」
「まあいいけれどな。俺はこれにしてるけれどさ」
 陽太郎が出してきたのはフルーツジュースだった。
「ビタミンも考えてさ」
「僕はこれ」
 赤瀬は野菜ジュースと牛乳を出してきた。二本である。
「これだけ飲んで食べないと身体がもたないから」
「そうだろうな」
 陽太郎はその彼を見上げながら述べた。
「赤瀬でかいもんな。二メートルあるんじゃないか?」
「そこまではないけれど」
「けれど二メートル超えるような」
「このままいけばね」
 狭山と津島はお握りに相応しいお茶であった。やはりお握りにはお茶である。ペットボトルのものだ。
「なるよな」
「成長してるから」
「なるかな、やっぱり」
 赤瀬自身からも言ってきた。
「やっぱりこのままだと」
「なるって。まだでかくなるからな」
「間違いなくね」
「二メートルか」
 陽太郎もそれを言う。
「そこまででかくなれるなんてな」
「羨ましい?」
「もっと背欲しいとは思ってるさ」
 実際そう思っている陽太郎だった。
「せめて一八〇はな」
「それ欲張りだから」
 ここで言ってきたのは椎名だった。
「それで満足すべき」
「何でそう言うんだよ」
「小さいから」
 ぽつりとした感じで言う椎名だった。
「私は」
「そういえば椎名ってな」
「そうよね」
 狭山と津島もここで言う。
「小柄だよな」
「結構ね」
「昔からそうだった」
 またその抑揚のない声で言うのであった。
「小さかったから」
「つまり小柄か」
「そういうことなのね」
「どうしても伸びなかった」
 自分で言うのだった。
 
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