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真田十勇士

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巻ノ百五十 本丸の死闘その六

 するとだ、幸村の前にだった。漆黒の袖の長い忍装束を着た男が霧の様に出て来た。そうしてだった。
 そうしてだ、幸村に対して言った。
「真田殿、この度は」
「服部殿がか」
「お相手させて頂いて宜しいでしょうか」
 こう言うのだった。
「この度は」
「若し半蔵が勝てばな」
 家康は再び言った。
「わしの首お主にやる」
「それでは」
「そこでお主の勝ちとなる、わしはもう刀も持てぬわ」
 歳の為というのだ。
「大坂の戦で力を全て使ってしまったわ」
「だからですか」
「そうじゃ」
 それでというのだ。
「もう自ら刀も持てぬ、ではな」
「それがしが服部殿に勝てば」
「この首を取るのじゃ」
 そうしろというのだ。
「よいな、あと言っておくがな」
「はい、大御所殿はですな」
「影武者ではない」
 このことも言う家康だった。
「わかるな、そのことは」
「気で」
 それでわかるとだ、家康は答えたのだった。
「わかり申した」
「そうか、ではな」
「その首頂きます」
 自身が勝てばというのだ。
「必ず」
「その様にな」
「では」
 服部はまた幸村に声をかけた。
「宜しいですな」
「さすれば」
 幸村も応えた、そしてだった。
 二人は家康の前で激しい一騎打ちに入った、家康はその二人の勝負を座したまままんじりともせず見守ることにした。
 忍術と忍術がぶつかる、そしてだった。
 服部が手裏剣を投げると幸村は槍で弾き返す、服部はそれを見て言った。
「お見事」
「貴殿も。今の手裏剣は」
「容易にはですな」
「かわせませんでした」
 こう服部に話した。
「到底」
「拙者の手裏剣は違います」
 他の者達が使うそれとはというのだ。
「一度に幾つも投げ」
「そしてですな」
「それぞれ複雑な軌跡を描き敵に迫ります」
「左右に曲がり斜めや真下に落ち」
「その速度も様々です」
 決して一定ではないというのだ。
「そうしたものですが」
「その手裏剣をですな」
「真田殿は全てかわすか弾かれますな」
「それがし達ならば」
 幸村は服部と今度は刀と槍の勝負に入った、服部の剣術を幸村の槍術で受けて立ち互角の勝負を演じている。
「あの手裏剣もでござる」
「防げるのですな」
「左様でござる」
「十勇士、大助殿に後藤殿も」
「そして長曾我部殿と明石殿も」
 この度駿府に来た彼等はというのだ。 
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