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戦国異伝供書

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第六話 都への道その三

「民も落ち着いておる」
「治安もよくな」
「民達はあの御仁を悪く言わぬし」
「むしろいい殿様と言われておる」
「その外に出れば悪逆非道と評判じゃが」
「その政はな」 
 それはというのだ。
「至ってのう」
「よい政という」
「信貴山の民達はな」
「舌ってさえおる」
「妙なことじゃ」
「全くじゃ」
 松永が治めているが、というのだ。彼等はこのことを不思議に思っていた。そうした話もしつつだった。
 二人は大和の道を整えていった、それは順調に進み大和の北だけでなく吉野つまり道を造ることが出来る場所までだ。
 道を敷くことが予定通り出来た、そうして岐阜に戻ると信長に銭や宝を渡されたうえでそのうえで言われた。
「よくやってくれた」
「はい、有り難きお言葉」
「感謝致します」
 二人も信長に畏まって応えた。
「では次のお役目をです」
「申し付けて下さいます様」
「ははは、まあ今は大仕事をしたのじゃ」
 信長は次の仕事をという二人に笑って返した。
「暫し落ち着け」
「そうしてですか」
「次の時まではですか」
「休んでおれ、すぐにまた次の仕事を言い渡す」
 二人が望んでいるそれをというのだ。
「だからな」
「今はですな」
「休むべきですか」
「そうじゃ、馬も常に走ることは出来ぬ」
 だからだというのだ。
「休むべき時はな」
「休み」
「そして英気を養うべきですか」
「そうじゃ、今当家は領内のあらゆる政を進めておる」
 内政に治める仕組みを整えることまでというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「休むべき時はですか」
「休むのじゃ、それでじゃが」
 信長は二人にここで問うた。
「お主達わしに言いたいことがあるな」
「はい、松永殿ですが」
「それがし達も思いまするが」 
 二人は信長に応えすぐに述べた。
「やはりです」
「あのまま放っておきますると」
「何をするかわかりませぬ」
「ですから」
「除けか」
「はい、そしてです」
「当家の憂いを断ちましょうぞ」
 是非にと言うのだった。
「何時何をするかわかりませぬ」
「ですから」
「ははは、しかしじゃ」
 信長は二人にこう返した。
「お主達信貴山も見たであろう」
「よい政の様ですな」
「噂とは違って」
 二人も信長に率直に返した。
「どうやら」
「そのことは確かに見ました」
「若しまことに悪逆非道ならばな」
 松永がそうした輩ならというのだ。
「もうそれこそじゃ」
「信貴山やその周りはですか」
「ああはなっておりませぬか」
「そうじゃ、だからじゃ」
 それでというのだ。
「あの者はな」
「よいのですか」
「あれで」
「そうじゃ」
 その通りだというのだった。 
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