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東方刑務所の人狼ゲーム

作者:エギナ
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ジンロウゲーム

 リビングに用意された十二の席のうち、埋まっているのはたったの四席。残りの八席はぽっかりと空いている。
 集まった四人の人狼ゲーム参加者は、それぞれ全員の顔を確認する。
「いやぁ……まさか、この四人が残るなんてなぁ」
 楽しそうに笑う一条輝。このゲームを最初から最後まで引っ張ってきた、今回の人狼ゲームの最重要人物だろう。きっと彼がいるかいないかでは結果が変わっていたと思う。
「そうだね。てっきり、雷が共有者って名乗り出た時から陽は終っちゃうと思っていたよ」
 苦笑いを浮かべながらそう言う一条聖月。一番始めから最後まで占い師としてゲームを支えてきた彼女。仲間の死を一番悲しみ、毎日のように泣いていたこの優しさはこのゲームでは要らない要素。あっても意味を持たない要素なのだが、これで変わったことももしかしたらあるのかもしれないと思うと、彼女もかなり重要な人物だったと思う。
「ホントに、もう三日目からビクビクしっぱなしだったよ。……ったく、雷も思い切り過ぎだっての」
 目を伏せつつ悲しそうに言う陽。この人狼ゲームに参加した人の中で、自分を犠牲にしてまで村人陣営を勝ちに導こうとした雷と一番仲が良かった陽。雷のお墓が作られてからは毎日のように丘の上に行って手を合わせていた。話し合いを進めるのに重要な共有者だが、今の状態では能力を持たないただの村人と同じ扱い。だけどここまで生き抜いてきた強い意志はきっと他のどこかでも生かす機会があるはずだ。
「にしても、楽しかったよ。この人狼ゲームは」
 輝と同じような笑顔で笑う零。三日目にたった三人しかいない仲間を一人失い、それから今まで戦ってきたのだ。相手の表情から未来を読み、そして行動していかないと出来なかったことだ。普通ならそんなこと出来ないのだが、きっとそれをすることができるほどの強い意志を持っているのだろう。
「もうお互いの役職はわかったよな?」
 そう問いかける輝。
 残っている人の役職は占い師、共有者、人狼、狂人。一日目に聖月が自分は占い師であるとカミングアウトし、四日目に陽が共有者であるとカミングアウトした。輝は占いで白という結果が出ているため、人狼では無く狂人。そして、残った零が人狼なのだ。
「でも、まさかお兄ちゃんが狂人だとは思わなかったな~」
 相変わらず苦笑いをしつつ言葉をつくる聖月。それを「お兄ちゃん」、つまり輝も苦笑いで返した。
「嘘吐け。もっと前からわかっていただろ?俺が狂人であること、零が人狼であること」
 兄妹に隠し事は通じないという事はこういう事なのだろうか。確かに聖月は早い段階から零が人狼で、輝が狂人であることが分かっていた。
「確信は無かったから言い出せなかったけど、言い出せたらちょっとは変わっていたのかな……」
「そうだね。間違いなく僕らは三日目にして全滅だったよ」
 椅子の背もたれに背中を預け、上を向いて言う聖月に零がそう言う。
「でも、言ってくれれば俺だって一緒に反論したんだからな?」
 口を尖らせて言う陽に聖月は「ごめんごめん」と軽く謝罪を入れると、陽も聖月と同じように背中を椅子の背もたれに預けて上を向く。
「……これから、どうやって死のうかな」
 人狼ゲームを終わらせるにはどちらかの陣営が勝つしかない。そのために、聖月か陽が死んで零と輝が生きるか、それとも零と輝が死んで聖月と陽が生きるか、又は全員が死ぬかの三つの選択肢がある。
 だが、ここまで来た彼らはどの選択肢を選ぶかは既に決めていた。流石ここまで生き抜いてきた四人であるとも言える。
「……投票の時間だね」
 少し悲しそうに聖月が言うと、四人は顔を見合わせる。すると、輝は言った。
「最後は一人一人投票していこう。で、投票と一緒に一言」
 もちろん三人の答えは「オーケー」だった。


「じゃあ僕から。楽しい時間をありがとう。またどこかで会えることを楽しみにしているよ」


零   → 陽


「あ、次俺か。……元気でな。またいつか会おうぜ」


陽   → 輝


「次は俺だね。今までずっとだましていてごめんね。君達の事は絶対に忘れないから。俺を負かした君達の事」


輝   → 聖月


「……つ、次会った時も……罪を犯していたら……ゆ、許さない……か、ら……ぐすっ」


聖月  →


「聖月……早く僕の名前を選択してよ。そして、早くゲームを終わらせて?」
「聖月……大丈夫だよ……また会えるから」
「聖月……落ち着いて押しなさい。後悔しないように……」


「……うぅ……ぅうわあぁぁあああ‼」


聖月  → 零
 
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