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真田十勇士

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巻ノ百四十八 適わなかった夢その十

「泳げますし登ることも」
「出来るな」
「大凧やむささびの術は使えませぬが」
 しかしというのだ。
「そうしたことは出来ます。
「よし、ではな」
「二手に分かれてですな」
「城に入り込む、夜にな」
「そうしてそのうえで」
「戦いに入るぞ」
 大助に対して話した。
「よいな」
「それでは」
 大助も頷きだ、駿府に入った時にどう攻めるのかも話していった。そうしてそのことを話してだった。どう戦うのかを本格的に考え話していた。戦は密かに近付きだしていた。
 しかしだ、江戸はというと。
 家康からの文を見てだ、秀忠は大奥でお江に話した。
「大御所様から文があった」
「何とありましたか」
「うむ、右大臣殿のことじゃが」
「はい、密かにですね」
 お江は秀忠に応えて言った。
「薩摩に逃れられていますね」
「国松殿もな」
「そのことは聞いています」
「うむ、姉君のことは残念であったがな」
 お江が何としても助けたいと思っていた茶々のことについてはだ、秀忠も苦い顔になり言った。
「しかしな」
「それでもですね」
「うむ、右大臣殿とご子息の国松殿はな」
「薩摩に逃れられて」
「そこに入られた」
「そしてこれからはですね」
「薩摩で過ごされる、しかし幕府としてはな」
 秀忠はお江に幕府は秀頼をどうしているのかを話した。
「右大臣殿はあの戦で腹を切られた」
「姉上と共に」
「国松殿は都で首を刎ねられた」
「そういうことにしますか」
「そして薩摩に入った豊臣の家臣達もじゃ」 
 彼等もというのだ。
「多くは死ぬか捕らえられ首を刎ねられた」
「その様にしてですか」
「戦は終わった、そしてな」
「戦の世もですか」
「これで完全に終わった、それでこれからはな」
「天下泰平の為のご政道をですか」
「為せと文にあった」
 お江に淡々とした口調で述べていく。
「余もこの江戸で天下泰平を確かにせよと言われた」
「その文で」
「その様にな、そしてこれから駿府でな」
 ここで一呼吸置いてだ、秀忠はさらに話した。
「実は戦があるとのことじゃ」
「駿府で」
「そうじゃ、真田源次郎が生きておってな」
「真田殿といいますと」
「知らぬか」
「あの真田源次郎殿ですか」
「そうじゃ、あの御仁は実は生きておってな」
 それでというのだ。
「薩摩に逃れておってな」
「その真田殿がですか」
「薩摩から駿府に来てな」
「大御所殿と一戦ですか」
「そうなるとのことじゃ、しかしな」
「江戸はですか」
「一切無用とのことじゃ」
 戦はというのだ。
「それよりも政じゃ」
「政ですか」
「それをせよとのことじゃ」
「では上様は」
「うむ、戦には関わるな」
 二度と、というのだった。 
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