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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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ココヤシ村編
  泥棒猫ナミ

 跳躍、飛翔、加速を繰り返し、宙を闊歩する。
 
 引力と斥力の力を足下に同時に発生させ、宙に擬似的な足場を作ることで跳躍(・・)する。
 跳躍後は飛翔(・・)して更に加速

 これを幾度も繰り返すことで偉大なる航路(グランドライン)をかなりの速度で移動する。

 アキトは現在、偉大なる航路(グランドライン)を逆走していた。
 世界広しと言えど偉大なる航路(グランドライン)をこんな方法で逆走するのは自分くらいではなかろうか。

 だが、船を要さずに航海が可能だが、少しでも加減を間違えてしまえば海に落ちかねないので気を抜くことはできない。
 正面から吹き荒れる強風を能力によって弾く必要もあるため、かなりの重労働だ。



 アキトが島を出発してから数刻

 漸く前方に世界を両断する赤い土の大陸(レッドライン)の姿が現れた。
 天を貫くが如くそびえ立ち、途轍もない標高を誇っている。

 アキトは常識を無視し、空中を闊歩することで赤い土の大陸(レッドライン)を楽々と突破する。

 アキトは漸く東の海(イーストブルー)へ辿り着いた。

 長時間の能力の使用に負った疲労を回復すべく、アキトは眼下の島に降り立つことを決意する。
 能力を解除し、重力に逆らうことなく大気を突き抜け、アキトは落下するのであった。







▽▲▽▲







 島の沿岸へと降り立ったアキト

 周囲は人気がなく閑散としている。
 海から吹く微風がアキトの頬を静かに撫でた。

 前方を見れば一人の女性が歩いてる。
 先ず、アキトは彼女にこの島の食事処について尋ねてみることにした。



「すみません。少し尋ねたいことがあるのですが……」

 背を向けて前方を歩く女性にアキトは声を掛ける。

「あんた、ここでは見ない顔だね?今、この島に来たのかい?」

 此方に振り返った女性は、女性として理想的なプロポーションを誇る美人であった。
 日光を反射する褐色の肌が彼女のショートヘアの青色の髪と合わさり大人の色気を醸し出している。

「俺の名前はアキトと言います。今、この島に来たところです」

 アキトは警戒されることがないように当たり障りのない言葉で話す。

「そう、私の名前はノジコっていうんだ、よろしく。それで私に何か用かい?」

 どうやら掴みは悪くなく、此方の受け答えに応じてくれるようだ。
 笑顔で此方に話し掛けてくれている。

「この島には食事を取るつもりで来たのですが、良い食事処を知りませんか?」

 簡潔に自分がこの島へと赴いた目的を告げる。

「そういうこと。じゃあ、あんたはこの島の現状を何も知らないってことかい。……取りあえず私の家に来てくれない?食事は出すからさ」

 有り難い申し出だ。

 アキトは彼女のご厚意に甘えることを決意する。
 だが、初対面の男を自身の家に招き入れるのは少し不用心ではないかと、アキトは逡巡せざるを得ない。
 無論、アキトに手を出すつもりなど毛頭なかったのだが

 こうして彼女の申し出を受けたアキトはとある一軒家へと案内されるのであった。




 食事を食し終えたアキトは感謝の言葉を述べ、手を合わせる。

 食事を食べ終えた後の感謝の言葉は忘れない。
 当然のマナーだ。

「ん、お粗末さん」

 彼女の食器を片付ける様子も様になっている。
 思えばこうして女性と話すのは久方ぶりの経験であり、何か感慨深いものが沸き上がってきた。

 思わず瞳が緩み、涙が出てきそうである。


思考が完全におっさんである。何か悲しくなってきた……

 
 思考はオヤジそのもの、アキトは違う意味で泣きそうになった。
 湧き上がる相反する感情を抑え、アキトは早速本題に入る。

「それで本題なのですが、フーシャ村という村をご存知ですか?」

 ルフィが故郷であるフーシャ村のことはシャンクスから聞き及んでいる。

「フーシャ村?悪いけど知らないわね。此処ははココヤシ村っていうのよ」
「ココヤシ村ですか?」

 いまいち要領を得ることが出来ない。

「それでは、ゴア王国という国をご存知ですか?フーシャ村はその王国の辺境に位置する村なのですが……」
「ゴア王国?……悪いけどそのゴア王国という名前の国も知らないわね」

 状況に進展はなし
 まあ、この島には食事を取ることを目的に赴いたのだから仕方ない。

「……そういえば俺をノジコさんの家に招いてくれた理由は何ですか?」

 この家に招いてもらった当初から気になっていたことだ。
 今日初めて出会った男を家に招き、食事もご馳走してくれる理由とは何なのだろうか

「そういえばまだ話してなかったわね……」

 途端、彼女の雰囲気が重苦しいものに変化する。
 真剣な面持ちとなった彼女が向かいに座り、言葉を紡いでいく。
 
 彼女の口から語られる内容は他人が軽々しく踏み込んでいいものではなかった。







「魚人であるアーロンに、魚人至上主義のアーロン帝国の建国。そして、この村はそのアーロンの支配を8年も受けているわけですか……」
「そういうこと。だからあんたも悪いことは言わないから、早くこの島から出て行ったほうが良いわよ」

 アキトの身を案じ、早くこの島から出ていくことを勧めるノジコ
 余程アーロンという存在は恐れられているようだ。

「その支配もナミの手によってもう少しで解放されるわけですか」
「あともう少しで1億ベリーが貯まるってナミから聞いているからね」

 1億べリー、途方もない金額だ。
 とても1人の少女が稼ぐことができる金額ではない。

 自分も賞金首を海軍に引き渡すことで漸く億単位の資金を得たのだ。
 戦士ではないナミという少女は一体どれだけの重荷を背負っているのだろう。

 当人であるナミはノジコの隣で静かに寝息を立てている。
 彼女との会話の最中に帰還したナミはアキトの存在に目もくれず窓を粉砕し、疲れ果てたように伏してしまった。
 
 余程心身共に疲れ果てていたのだろう。
 まるで死んだように眠っている。

 まだ二十歳でもない少女が身を削り、奮闘せざるを得ない状況を作り出しているアーロン一味に憤慨せざるを得ない。
 しかし、あくまで部外者である自分がこの島を取り巻く状況に物申せる立場でもないのは事実であり、アキトはこれ以上踏み込むことは出来なかった。



「食事ありがとうございました。美味しかったです」
「構わないよ。それよりも早くこの島から出ていくんだよ」

 再度ノジコはアキトに忠告する。
 自分達が生きるか死ぬかの瀬戸際でもあるにも関わらず、赤の他人を気遣うとは優しい女性だ。

「ええ、分かっていますよ」

 無論、最初からアキトは素直にこの島を出ていくつもりはなかった。
 海賊と呼ばれる輩に碌な奴がいないことは知っている。
 まだ推測の域を出ないが、ナミとアーロンの取引は失敗に終わる可能性がかなり高いだろう。

 アーロンという魚人が金の約束を守ることが事実であったとしても、それはあくまでナミとアーロンの2人の間で交わされた約束だ。
 そこに第三者が介入してしまえばナミの8年の頑張りは無に帰してしまうだろう。

「……外が騒がしいわね?」

 蜜柑畑しか存在しない外が騒がしい。
 来客か、それとも村人の誰かが足を運んできたのだろうか。

 ノジコはアキトにこの場で静かにしているように言いつけ、外へと足を進める。
 先程まで眠っていたナミは既に起き、ノジコと共に外へと出ていった。

 アキトは沈黙した様子で佇み、ノジコ達を見送るのであった。







▽▲▽▲







 蜜柑畑にて海軍とナミ達が衝突する。
 ナミとノジコ、ゲンさん、それと対面する形で睨み合う。

「まさかあんた達、アーロンの指示で!?」
「チチチチ、何を言っているのか分からないな」

 海軍大佐ネズミは笑う。
 その顔にあくどい笑みを浮かべながら

「何をしている、お前達!1億ベリー(・・・・)だ!1億ベリー(・・・・)なんて大金、簡単に見つかるはずだろう!」

 そう1億ベリー(・・・・)1億ベリー(・・・・)
 ネズミ大佐はさも当然の様に告げた。

「おい貴様、何故その金額を知っている!?」
「そのことを知ってどうする?我々は海軍として然るべき対処をしているだけだ」
「貴様らまさか!」
「貴方達、アーロンと繋がって……!?」
「まさか、アーロンが……ッ」

 間違いない。
 奴はアーロンの指示でこの場に足を運び、この様な横暴に走っているのだ。

 血が滴る勢いでナミは悔しさと憎悪で手を握り締め、般若の如く表情を浮かべる。

「君達はどうやら我々海軍に歯向かうつもりのようだ。それならば仕方ない。即刻、この場からお引き取り願おうか」

 手を上に掲げ、ネズミは部下に銃を構えさせる。
 銃の照準はノジコへと向かう。

 放たれる銃弾
 本来ならば治安を脅かす海賊へと放たれる銃弾が、無抵抗の民間人へと牙をむいた。

 迫りくる銃弾に思わず目をつぶるノジコ
 だが、いつまで経っても痛みは訪れなかった。







 恐る恐る瞳を開けたノジコの前には彼女を庇う様にアキトが佇んでいた。

「あんた……」

 ノジコは信じられないとばかりに大きく目を見開き、冷や汗を流す。
 アキトは彼女に背を向け、海軍と向かい合う。
 海軍の畜生にも劣る蛮行に静かに怒りをその胸に抱きながら

「随分と危ないな。何故、民間人の味方であるはずの海軍が彼女に銃口を向けているんだ?」

 握りしめていた掌を開き、アキトが淡々と口を動かす。 
 手からは無数の銃弾がこぼれ落ち、足元へと落ちていく。

 驚くことにアキトは素手で銃弾を掴み取っていた。
 突然のアキトの登場にネズミ大佐は驚きを隠せない。

「おいお前達、何をしている!奴を即座に始末しろ!」

 だがそれも一瞬、すぐさま部下に始末する旨を伝える。
 トップの命令に部下達は銃を構え、抜刀し、一斉にアキトへと襲い掛かった。

 ある者は銃弾が底を尽きるまで打ち続け、ある者は一切の手加減なく刀を振り下ろす。
 またある者は素手でアキトへと襲い掛かった。




 数秒後、周囲には凄惨たる光景が広がっていた。

 その身に自身が放った無数の銃弾(・・・・・・・・・・・)を受けた者、腕が有り得ない方向(・・・・・・・)にへし折れた者が崩れ落ちていた。
 皆一様に血を流し、悲鳴を上げている。

 対するアキトは全くの無傷であり、その場に佇んでいた。
 終始アキトは億劫な様子で目を瞑っていただけにも関わらず、この惨状である。

 ナミを含めたこの場の誰もが眼前の光景に言葉が出ない。
 ネズミ大佐は部下達が全滅したことに足が竦み、無様に尻餅をついてしまっていた。

「理解できないと言わんばかりの様子だな?」

 冷え切った声音で語り掛けるアキト
 その瞳はどこまでも冷たく、冷え切っていた。 



「何故、無抵抗の人間を攻撃したにも関わらず、自分達が血を流しているのか」



「なに、簡単な話だ」



「攻撃が直撃した瞬間に、弾き返してしまえば良い」 



「言ってしまえば反射の要領だな」

 無論、ただ弾き返しているわけではない。
 直撃した瞬間に能力を遣うことにより、威力を数倍に増幅させている。

「つまりお前達はわざわざ自分から自滅しに来ているということだ。理解できたか?」

 最もアキトの説明は既にネズミ大佐に届いてなどいない。
 ネズミ大佐は生まれて初めて心の底から震え上がっていた。
 真の恐怖と、決定的な挫折に

 余りの恐怖と絶望に涙を流したことも生まれて初めてのことであった。
 既に自分を取り巻く部下達はいない。
 戦闘力が皆無なネズミ大佐には打つ手がなかった。

「さて、次は此方の番だ。少しは意地を見せてくれよ」

 アキトは血に沈む海兵を踏み付けながら足を進め、遂にネズミ大佐の下へと辿り着く。
 続けて放心し、恐怖に慄くネズミ大佐の顔面を踏み付け、地へと陥没させた。

 歯は折れ、砕け散る。
 出血し、ネズミ大佐は為す術無く地に這いつくばった。

本命は生け捕りの方が処罰を下す際に、都合が良いのだが、本当にコレは生きているのだろうか?

 既にネズミ大佐からは反応がない。
 まるで死人のようだ。

「最後だ。誰の指示でこの場に来た?」

 海軍の恥晒しが

「ア、アーロン氏だ。アーロンの指示で我々は……」
 
 弱々し気に、遂にネズミ大佐は白状する。
 やはりアーロンの指示であり、ナミの予想は正しかった。

 言質は取った、もうこいつに用はない。
 アキトは容赦無くネズミ大佐を踏み潰し、地面の染みとする。

 見ればナミがノジコの制止を振り切り、アーロンパークへと一心不乱の様子で走り去っていく姿が見えた。
 アキトは彼女をどこか悲し気な様子で見据えていた。 
 

 
後書き
ネズミ大佐というド底辺の屑・畜生
原作でノジコを打ったのはマジで許さん

< 補足 >
→ アキトの移動方法はBleachの死神の瞬歩をイメージしてください。
流石にBleachほど速くはないですが

※ 今作はアキトの存在によって正史と異なる展開と時間の流れを歩んでいます
→ ナミは原作通りバラティエでルフィ達と別れており、現在ルフィたちはクリーク一味と交戦中です。
→ ゲンさんがアーロンに襲われているシーンはこの物語では存在しません。 
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