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ネラプシ

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第二章

「今度の奴はな」
「そうなんですね」
「只の吸血鬼じゃない」
 役はこのことを言った、まずは車がある場所に向かいながら。
「相手は邪眼の持ち主だ」
「ああ、目ですか」
「見た相手を殺す」
「そりゃまた凄い奴ですね」
「ネラプシという、そいつが今回の我々の相手でな」
 それでというのだ。
「倒す必要がある」
「そうですか」
「そしてだ」
「こっちが見られたらですね」
「終わりだ」
 その吸血鬼にというのだ。
「その瞬間でな」
「じゃあ相手に会ったら」
「終わりだ」 
 またこう答えた役だった、赤い街並みと美女達を横目に見つつ本郷に話す。見れば美男も多いが二人共そちらにはあまり関心がない。
「我々もな」
「じゃあどうして戦えばいいか」
「わかるな」
「はい、それならそれで」
 見られれば駄目ならとだ、本郷もわかっている顔で答えた。
「簡単なことです」
「メデューサは自分の顔を直接見た者を石にした」
「そしてその吸血鬼はですね」
「名前をネラプシというが」
 本郷はここで吸血鬼の名前を出した。
「自分が見た相手をだ」
「石にするんじゃなくてですね」
「殺す」
「じゃあ下手したら街全体もですね」
「時折教会の塔の上から街を見下ろす」
「ああ、吸血鬼なのに十字架とか平気ですか」
 教会の塔の上に上がると聞いてだ、本郷もすぐに察した。
「そういう奴ですか」
「吸血鬼といっても色々だからな」
「教会の力も通用しないまでに強いですか」
「そこまでは知らないがな」
 しかしと言うのだった。
「とにかくそこから街全体を見てな」
「街の人間を皆殺しにすることもですね」
「ある、そこまで強力な相手だ」
「つくづくとんでもない奴ですね、そしてそのネラプシを」
「倒すぞ、いいな」
「はい、それじゃあ」
「それも二度と蘇らない様に徹底だ」
 吸血鬼は蘇るものだ、それで役は今こう本郷に言ったのだ。
「倒すぞ」
「ええ、じゃあもうそれこそ」
「村の人達が何と言ってもな」
「徹底的に倒しますか」
「この国の宗教の戒律も無視してな」
 多くの者にとって絶対と言っていいそれすら意に介さないというのだ。
「この辺りはキリスト教、そしてな」
「その中の正教ですね」
「正教の戒律もな」
「無視しますか」
「必要ならな」
 そう判断したらというのだ。
「そうするぞ」
「ですね、俺達は依頼を受けました」
「吸血鬼を倒して欲しいとな」
「ええ、それも二度と禍がない様に」
「それならだ」
 まさにというのだ。
「容赦なくだ」
「徹底的にですね」
「倒す、いいな」
「そうしてやることですね」
「正教の戒律を無視してでもな」
「そこで何を言われても」
「徹底的に倒さないとだ」
 ネラプシ、この吸血鬼をだ。 
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