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大阪の産女

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第一章

               大阪の産女
 古田早希は夫の真一と二十四の時に結婚して四年になる、そして結婚した時に弟の洋平にこう言った。
「あんた大学こっちでしょ」
「神戸の八条大学の体育学部に受かったからね」
 洋平は元々野球部にいてその縁で推薦を受けたのだ、洋平は一九〇あり非常に逞しい下半身を持っている。ポジションはピッチャーだ。それで茶色の髪をショートにしていて如何にも気が強そうだがしっかりとした顔立ちで細い眉も奇麗な姉に言うのだった。姉は弟より三十センチ以上小さいが胸はかなり大きくグラビアアイドル顔負けのスタイルである。とはいっても姉弟なので洋平がそのことに思うことはない。
「だからね」
「私と真一さんのお家淀川区になるから」
「淀川区?」
「大阪よ。そっちの社宅に入るのよ」
「ああ、八条オートバイの」
 八条グループが経営している企業の一つだ、世界的なオートバイ企業である。尚早希は夫とは福井から関西にいて大学のサークルで知り合い大学卒業しお互いに就職してからも交際を続けこの度ゴールインしたのだ。
「お義兄さんあそこで働いてたね」
「販売担当でね」
「そうだったね」
「私はコンビニだけれどね」
 こちらの八条グループの企業である。
「それで八条オートバイの社宅に入るけれど」
「僕もなんだ」
「寮に入るの?」
「実はどうしようかと思ってたんだ」
「それもいいけれどね」
「こっとに出て来たからなんだ」
「私達もこっちに住むし」
 それでというのだ。
「どうせならね」
「一緒に住もうっていうんだ」
「そう、どう?」
「いや、野球部の寮の方が野球に専念出来るから」 
 これが洋平の返事だった。
「今はいいよ」
「そうなの」
「まあ引退まで野球に専念してね」
「それで頑張っていくの」
「そうするよ。ただいつも連絡はするから」
 このことは断ってだ、そしてだった。
 洋平は大学時代も高校時代と同じく野球に専念した、そうして就職もだった。八条グループで運営しているプロ野球リーグである八条リーグにだ。
「選手じゃないけれどね」
「トレーナーとしてなのね」
「兼球場の職員としてね」
 その立場でというのだ。
「福岡球場にね」
「就職が決まったのね」
「うん、そうなったよ」
「よかったじゃない」
「ただね」
 ここでだ、洋平は自宅に呼んで夫と共に自分の就職を祝ってくれている姉に言った。テーブルの上には彼の好物とビールがある。姉の服装はシャツに膝までの半ズボンと実にラフなものである。洋平と真一の恰好も同じだ。
「福岡に就職したけれど」
「転勤あるわよね」
「八条リーグ全体での採用だからね」
「だから北海道に行ったり」
「沖縄に行くこともあるよ。大丈夫かな」
「あんたの体力だと大丈夫でしょ」
 心美は弟にすぐに返した。
「その体格で」
「だといいけれどね。結構上半身がね」
「そんなになの」
「ちょっと不安があるんだ」
 自分としてはだ。
「だからね」
「これから不安なの」
「どうしたものかな」
「体力の問題じゃないんじゃないかな」
 ここでだ、早希の夫の真一が妻の横から言ってきた。背は一七〇位で洋平と比べると大きさが全く違う。 
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