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寝ると何でも

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第一章

               寝ると何でも
 ねむきの趣味は寝ることだ、それでいつも友人達ににこにことして言うのだった。
「やっぱり人間寝ないとね」
「駄目だっていうんだな」
「寝ていないと」
「そうしていないとか」
「そうだよ、寝るとね」
 人間の欲求の中に絶対にあるものの一つであるこれを果たすと、というのだ。
「頭も休められるし体力も回復するし」
「嫌なことも忘れられるしか」
「起きていることからも解放されて」
「こんないいことはないよ、寝ると」
 それこそというのだ。
「これ以上はいいことはないからな」
「だからか」
「それでか」
「御前はいつも寝ているんだな」
「寝るのが趣味なんだな」
「そうだよ、気楽にしてすぐに寝たら」
 それこそというのだ。
「起きた時最高に幸せだからね」
「それでいつも寝てるんだな」
「暇さえあれば」
「そうしているんだな」
「もう寝不足なんかね。想像しただけで」
 ねむきが経験したことのないことだ、彼は生まれてからずっとよく寝ていてそれでだったのである。
「恐ろしいよ」
「いや、寝不足の経験ないのか?」
「それはかなり凄いぞ」
「毎日それだけ寝ているってことか」
「寝不足感じたことがない位に」
「そうだよ、何でも生まれた時からよく寝る子で」
 このことは彼の両親にも言われていることだ。
「幼稚園の時も小学生の時もそうで」
「それで今もか」
「今もよく寝るんだな」
「そうだよ。童話で眠れる森の美女ってあるけれど」
 童話の中でもとりわけ有名なものの一つであろう、アニメにもなっていてそちらでも有名になっている。
「ああしてね」
「ずっと寝ていたいか」
「そこまで寝たいんだな」
「そうだよ、もう一生寝られるなら」
 それこそ死ぬまでとだ、ねむきは彼独特のほわんとした和やかな感じの顔と口調で友人達に対して話した。
「本当に幸せだよね」
「本当に寝るの好きだな」
「何処まで寝るのが好きなんだ」
「幾ら何でも好き過ぎるだろ」
「確かに寝るのは気持ちよくてもな」
 友人達はねむきの言葉に呆れるばかりだった、だが彼はあくまで寝ることを趣味にしていてとかくよく寝ていた。
 それでだ、夏の暑い時もだ。
 家や移動の際の電車やバスの中でもよく寝ていた、それでだ。
 暑さに参る者が多い中でも彼はいつも元気だった、それで塾の夏期講習から温和かつ健康的な感じで帰って来た彼に夏バテが顔に出ている母が言った。
「あんたいつも元気ね」
「それがどうかしたの?」
「やっぱりあれ?」
 親だけあって彼のことをよく知っていて言うのだった。
「いつもよく寝てるからなの」
「そうだと思うよ。寝ているとね」
「頭も身体も休められて」
「気力も体力も回復するからね」
 自分から言うのだった。
「だからね」
「この夏でも元気なのね」
「そうだと思うよ、僕も」
「そうなのね」
「お母さんいつもお昼とか夜どうしているの?」
「夜は寝ているけれど」
 流石にそうしているとだ、母もねむきに答えた。
「けれどお昼は」
「この暑い中でなの」
「家事をしてそうしていない時は」
 ねむきが寝ている様なその時はというのだ。
「ドラマ観たりしているわ」
「寝ていないの」
「ええ、ちゃんと食べる様にはしていても」
 このことは気をつけている、夏でもしっかりと食べる様にして家族にも自分にも健康にいいものを出している。 
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