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真田十勇士

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巻ノ百四十五 落ちた先でその二

「ただ生きているなら」
「それでよいのですか」
「何もしようとは思わぬ」
「では」
「国松には自由に生きてもらいたい」
 秀頼の親としての言葉だ。
「余と違いな」
「人としてですか」
「そうしてもらいたい、そしてな」
「我等もですか」
「うむ、人としてじゃ」
 まさにというのだ。
「自由にな」
「生きてもよいのですか」
「もう余は一介の浪人となる」
「だからですか」
「碌も官位もなければな」
「家臣もですか」
「おらぬ、だからな」
 それ故にと言うのだった。
「お主達も自由にせよ」
「薩摩に入れば」
「お主達の戦をしてもよい、そしてな」
「その後もですか」
「自由に生きよ、お主は夢があろう」
「はい、武士として」
 幸村は秀頼に畏まって答えた。
「武士の道を歩みそうして」
「その道をじゃな」
「極めたいと思っております」
 その様にというのだ。
「武士のそれを」
「ではな」
「その武士の道をですか」
「歩みそしてじゃ」
「そのうえで」
「自由に生きるのじゃ」
「自由にですか」
 幸村は秀頼のその言葉を受けてまずは瞑目した、そうしてから秀頼に対してあらためて強い声で述べた。
「必ず薩摩に戻って参りまする」
「戦の後でか」
「はい、そして後は」
「自由に生きるか」
「そうします」
 こう秀頼に述べた。
「家臣、そして大助達と共に」
「後悔のない様にじゃな」
「して参りまする」
「わかった、ではな」
「はい、その道に従い」
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「天下一の武士になるのじゃ」
 秀頼の言葉も確かなものだった。
「是非な」
「さすれば」
「お主は余の様なものが家臣とするには過ぎた者じゃ」
「右大臣様が」
「そうじゃ、余程度の者が家臣としてはならん」
「では」
「自由に生きよ、自由に武士の道を歩みな」
「極めよと」
「そう言う、よいな」
「それもです」
「薩摩に戻ってか」
「考えまする、それがしは今は薩摩までです」
 肥後に着いてそうしてというのだ。
「何とかです」
「余を送るか」
「そう考えています、関白様との約束を果たします」
「叔父上か、あの方は」
 秀次の名を聞くとだ、秀頼は項垂れた。そうして申し訳ない顔になりそのうえで幸村に対して話をした。 
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