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デート・ア・ライブ〜崇宮暁夜の物語〜

作者:瑠璃色
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デート 後編


「えーと、福引き所………あれか」
 
 士道と十香が大通りのカフェで何故か店員の格好をしていた令音に渡された『サポートする。自然にデートを続けたまえ』と記されたレシートと福引券を渡された後、店を出て道なりに進むと、赤いクロスを敷いた長机の上に、大きな抽選器 が置かれたスペースが見えてきた。

ハッピを羽織った男が、抽選器のところに一人、商品渡し口に一人おり、その後方に、賞品と思しき自転車やら米やらが並べられていた。既に数名、人が並んでいる。
 
「・・・・」
 
 士道は頬を掻いた。うろ覚えではあるが、ハッピを着た男達は勿論のこと、並んでいる客の顔もまた、<フラクシナス>内部で見たことがある気がしたのだ。

「おお!」
 
 しかしそんなもの十香に関係あるはずがない。士道から受け取った(というか、物凄く物欲しそうに見るものだから持たせてやった)福引き券を握り締め、目を輝かせる。

十香が特殊災害生命体『精霊』であるとは到底思えないな。と士道は苦笑いを浮かべる。

「ほら、じゃあ並んで」
 
「ん」
 
 十香が頷き、列の最後尾につく。前に並んだ客が抽選器を回すのを見ながら、首と目をめまぐるしく動かしていた。
 すぐに、十香の番がくる。十香は前の客に倣って券を係員に手渡し、抽選器に手を掛けた。よく見ると係員は<早過ぎた倦怠期(バッドマリッジ)>川越だった。

「これを回せばいいのだな?」
 
 そう言って十香は、ぐるぐると抽選器を回す。数秒後、抽選器から赤いハズレ玉が飛び出した。
 
「・・・っと、残念だったな。赤はポケットティ―――」
 
 士道が言いかけた時、川越が手に持っていた鐘をガランガランと高らかに鳴らした。
 
「大当たり!」
 
「おお!」
 
「は、はあ………?」
 
 士道は眉を顰め、間の抜けた声を発したが・・・川越の後ろで別の係員が、後ろに貼ってあった賞品ボード『1位』のところに書いてある金色の玉を、赤いマジックペンで塗り潰しているのを目撃し、声を出すのを止めた。

「おめでとうございます!1位はなんと、ドリームランド完全無料ペアチケット!」
 
「おお、何だこれはシドー!」
 
「・・・テーマパークか?聞いたことない名前だけど・・・」
 
 興奮した様子でチケットを受け取る十香に、士道が訝しげな調子で返す。すると川越が、ずずい、と顔を寄せ、
 
「裏に地図が書いてありますので、是非!これからすぐにでも!」
 
「・・・っ、は、はあ」
 
 気圧されるように一歩下がりながら、チケットの裏を見る。確かに地図が書いてあった。というか物凄く近かった。
 
「こんなところにテーマパークなんてあったか・・・?」
 
 士道は首を捻ったが、まあ、<ラタトスク>の指示である。何かあるのだろう。
 
「・・・行ってみるか?十香」
 
「うむ!」
 
 十香も乗り気なようなので、取り敢えず足を運んでみることにする。
 場所は本当に近かった。この福引き所から路地に入って数百メートル。また両側には雑居ビルが並んでおり、とてもではないがテーマパークがあるようには思えない。

だが―――

「おお!シドー!城があるぞ!あそこに行くのか!?」
 
 十香が今までになく興奮しながら、前方を指差す。士道は、そんな馬鹿なと思いつつチケットの裏面から視線を外して顔を前に向ける。
 
「・・・ッ」
 
 瞬間、士道はその場に凍りついた。
 確かに小さいながらも、西洋風のお城である。看板にドリームランドとも書いてある。
ついでにその下に『ご休憩・二時間4000円~ ご宿泊・8000円~』という文字も書いてあった。まあつまりは、大人しか入ってはいけない愛のホテルだった。

「も、戻るぞ十香・・・っ!俺ってばうっかりさんだから道を間違えた!」
 
「ぬ?あそこではないのか?」
 
「ああそうだ。ほ、ほら、早く戻るぞ」
 
「あそこにも寄っていかないか?入ってみたいぞ」
 
「・・・ッ!い、いやいやいや。今日のところはやめとこう!な!?」
 
「むう・・・そうか」
 
 残念そうに言う十香には悪かったが、流石にあそこは無理である。 士道は、恐らく上空から一部始終を見ているであろう琴里に睨みをくれてやってから道を戻っていった。



「ふぅ、落ち着いたし戻るか」

アクセサリーショップからかなり離れた雑居ビル付近の自販機から二人分の飲み物を取り出して息を吐く。折紙のせいでドクドクと早鐘を打っていた鼓動は今は治まっていた。携帯で現時刻を確認し、飲み物両手に歩いていると、少し小さめの西洋風のお城の前に見覚えのある青年と少女がいるのを視界に捉える。

「・・・士道? それにあの女は・・・ってそんなわけないか」

暁夜は頭を振って、止めていた足を動かそうとして、

「やべっ!?」

ズサっと、建物の陰に隠れた。というのも、西洋風のお城の方から暁夜のいる方向へと士道と十香に似た少女が歩いてきたからだ。息を潜め、気配を殺す。徐々に士道達の姿がハッキリと見え、驚きに目を見開いた。

「やっぱり・・・『プリンセス(精霊)』。それにしても空間震を起こさずに来れる方法があるのか?でも、なんで今日だけ空間震を起こさなかったんだ?とりあえず、報告だな」

暁夜は士道と十香がいなくなったのを確認し、携帯を取り出し、アドレス帳から番号を選択して電話をかけた。

そして。

「--AST、崇宮暁夜二曹。 A-3108」

自分の所属と識別コードを小声で告げ、

「観測機を一つ、回してくれ」

そうお願いして、通話を切る。

「よし、折紙ん所に帰るか。なにか分かれば連絡来るだろうし」

二人分の飲み物の内、自分用のサイダーのペットボトルキャップを外し、微かに渇いた喉を潤してから隠れていた建物から出て、アクセサリーショップへと向かった。 その際に、士道達の後ろをついていくのはあちらが気づいた時にめんどくさいと考え、西洋風のお城方面へと歩くことにする。本当の理由は、西洋風のお城がどんな所なのか見てみたいという好奇心がくすぐられたからとは恥ずかしくて口に出して言えないが。サイダーを飲みながらトボトボとのんびり歩いて近づき、看板に目をやる。

その瞬間--

「ぶふぅぅぅぅぅぅッ!?」

思い切り口に含んでいたサイダーを吐き出した。看板を見て吹き出すなんて失礼かと思われるかもしれないが、仕方の無いことである。 何故なら、その看板には--

『ドリームランド』

と、書かれていたからだ。その名前は折紙が行きたいと言っていたラブホだった。 確かに場所も名前も知らないはずだ。というか折紙はどうしてこの場所を知っていたのか今度問いただした方がいいのかもしれないと暁夜は一人思った。

「早めにドリームランド見つけといてよかったぁ。 これでここの道は行かないように誘導すればこっちのもんだな」

暁夜は、良かった良かった。と胸をなで下ろして、口元を拭い、今度こそアクセサリーショップに向かった。

数十分後。

「待たせて悪い、折紙」

アクセサリーショップの自動ドアの左側の壁にもたれ掛かり、片手に紙袋を携えた折紙に謝罪の声をかける。

「問題ない。私もちょうど買い物を終えたとこ」

そう言って、紙袋から二つのアクセサリーを出す。 それは、二つが揃って初めて形をとるハート型のアクセサリー。 折紙はその片方を暁夜に差し出す。

「わざわざ俺の分まで買ったのか? 別に気を使わなくても・・・」

「違う。これはデート記念のプレゼント。 後は暁夜からお返しのプレゼントを貰うだけ」

「あー要するにお前も買えって事か。そのアクセ何円したん? 一応、お金も返しとくし」

暁夜は、折紙から片方のアクセサリーを受け取り、財布を取り出し、尋ねる。 それに対し、折紙は首を横に振って、

「お金はいらない。その代わりに、キスして」

そう告げた。

「キス? キスって、魚の?」

「違う。ベーゼまたは、接吻のこと」

「・・・拒否します。お前には、キスではなく、他のものを送ります」

「それは・・・子だn--」

「違うからな!? そんなお前が考えてるような卑猥なワードじゃねえからな!?」

折紙の言葉を遮り、暁夜は叫んだ。油断も隙もない発言に、暁夜は冷や汗を浮かべる。公共の場だというのに、全然ブレない折紙にある意味尊敬するがそれ以上に呆れてしまう。全然ブレない折紙にある意味尊敬するがそれ以上に呆れてしまう。公共の場などお構い無しの発言と態度に。

「じゃあ何をくれるの?」

「あー、と。 服とか?」

「服よりも下着の方が私は嬉しい」

「・・・はぁ。 分かったよ」

暁夜は大きな溜息をつき、妥協する。何となく、ここで断ったらそれ以上の無理難題が飛んでくる気がした。

「そうと決まれば、すぐに買いに行く」

「ちょ、引っ張らなくてもついてくから離してくれよ!?」

暁夜は、折紙に引っ張られていきながらそんな声を上げた。



「はぁ………はぁ」
 
 走ったわけでもないのに、妙に息が切れていた。様々な店が建ち並ぶ通りに出たところで、歩調を緩める。
 
「気分でも悪いのか、シドー?」
 
「や、そういうわけではないんだが・・・」
 
「ではどうした?」
 
 十香が首を傾げて問うてくる。

「・・・少し、お空にいる妹に思いを()せていたんだ」
 
「お空にいるのか」
 
 少し驚いたような顔を作る十香。

「ああ。可愛い妹だったんだがなあ・・・」
 
 まさかあんな二重人格だったとは、と嘆息する。

「そうか・・・」
 
 何故か十香がしんみりした空気を発するのを見て、士道ははたと気づいた。今の言い方では、まるで琴里が死んでしまっているみたいではないか。

「ああいや。違うんだ十香。それは―――」
 
 士道はそこで言葉を止めた。
 
「お願いしまーす」
 
 急に目の前に、女がポケットティッシュを差し出してきたからだ。咄嗟に手を出してそれを受け取ると、女は小さく会釈をしてどこかへ去っていった。
 
「シドー?何だそれは」
 
「ああ、これはポケットティッシュっていって―――」
 
 そう言いかけて、士道は首を捻った。
 街頭で配っているポケットティッシュは普通、企業の広告用だ。なのにこのティッシュのパッケージには、手を繋いだ男女のイラストと、『幸せなら手を繋ごう』というフレーズしか 書かれていなかったのだ。何かの宗教団体だろうか?

士道が不思議に思っていると、今度は右手にある電話店から、どこかで聞いたような声が聞こえてくる。店頭に並べられたいくつものテレビに、奇妙な番組が映し出されていた。
 
「な・・・ッ!?」
 
 士道は眉根を寄せて声を上げた。昼間にやっている情報番組のようなセットに、何人かコメンテーターのような人物が確認出来るのだが、それらが全て<フラクシナス>で見た顔だったのだ。
 
『やっぱり初デートで手を握ってくれないような人は嫌ですよぉー』
 
『そうですよねえ。男ならガッといかないとねえ』
 
「・・・」
 
 士道が黙っていると、不自然なほど周囲にカップルが増え始めた。しかも皆仲睦まじく手を繋いで、時折「手を繋ぐのっていいよね!」やら、「心が通じ合う感じがするね!」やらと、わざとらしく言ってくる。

士道は軽い目眩のようなものを感じて額に手を当てた。―――これは、やっぱり、そういうことだろうか。
 大きく息を吐いて、暫しの後。士道はティッシュをポケットに仕舞うと、動悸を抑えながら十香に目を向けた。
 
「な、なあ、十香………」
 
「ん、何だ?」
 
 十香が不思議そうに首を傾げる。士道はごくりと唾液を飲み込んでから手を前に出した。
 
「その、手・・・繋がないか?」
 
「手を?何故だ?」
 
 まるで悪気なく、純粋な疑問符を浮かべながら十香が問うてくる。何かもう、ただ拒絶されるより恥ずかしかった。
 
「・・・そうだな。何でだろうな」
 
 実際、説明出来るようなものでもない。士道は目を泳がせながら手を引っ込め―――
 
「ん」
 
 ―――ようとしたところで、十香が、士道の手を取った。
 
「・・・っ」
 
「ぬ?何だその顔は。シドーが繋ごうと言ったのだろう」
 
「あ、ああ」
 
 士道は軽く頭を振ってから、道を歩き出す。
 
「ん、悪くないな、これも」
 
 そう言って十香が笑い、きゅっと手を握る力を少しだけ強くした。
 
「・・・っ、そ、そうだな」
 
 何かもう、小さくて柔らかくて少し士道よりも体温の低い、ひんやりとした手を触っていると、自然と顔が赤くなるのが自覚出来た。出来るだけ感触に気がいかないよう、別のことを考えながら歩いていく。

どれくらい進んだ頃だろうか、進行方向上に、工事中を示す黄色と黒の立て看板が見えた。ヘルメットを被った男達が、齷齪(あくせく)と働いている。
 
「っと・・・ここ通れないのか。じゃ仕方ない、こっちに・・・」
 
 士道が足の向きを変え、右側に向くと、今度はその通路に立ち入り禁止の看板が置かれた。
 
「あ?」
 
 不審に思いながらも、仕方なく元来た道を戻ろうとする。だが今度は、今まで士道達が歩いてきた道が、看板で塞がれた。
 
「・・・・」
 
 幾らなんでも不自然に過ぎる。士道は目を凝らして作業員の顔を睨めてみた。案の定、その内数名の顔に見覚えがあった。

<フラクシナス>クルーだ。
 
士道は無言のまま、高台の方に向かう、左手に延びた通路に目をやった。通れる道はそこしかなかったのだ。

「・・・こっちに行けってことかね」
 
「ぬ?どうしたシドー」
 
「や、何でも。・・・取り敢えず、こっち行ってみるか?」
 
「ん、いいぞ」
 
 十香は、もう歩いているだけで楽しいというような顔を作りながら首肯してきた。
 
「さて、では行くかシドー」
 
「お、おう・・・」
 
 士道は、ぎこちない様子で、左手の道を歩いていった。



大通りを抜けた先にあるショッピングモール内のランジェリーショップ。 女性ばかりがたむろする中で暁夜は一人、試着室の前にある椅子に座り居心地悪そうに視線を床に向けていた。といのも、ランジェリーショップというのは女性の下着類が売られている。 男にとっては縁のない場所だ。恐らく、カップルだとしても、恥ずかしくて入りずらいのが当然の気持ちだ。勿論、暁夜だって同じだ。カップルではないが、傍から見ればカップルに見られるかもしれないが、それでも入るのは躊躇う。しかし、デート相手が折紙だったのが運の尽きだろう。

因みに、当の彼女は、暁夜の前にある試着室で、自分で選んだ下着を試着している。この数分前に、折紙に試着室に引きずり込まれそうになったのはトラウマにしかならなかった。

(・・・早く帰りたい)

未だに周囲から刺さってくる好意的な視線が痛い。 暁夜は好意的な視線があまり好きではない。特に初対面の人だ。仲良くもなく、関わったこともないのに顔だけで人を判断し、好意的な視線を送ってくる。上部だけでしか見ない人は『精霊』の次に嫌っている。ただ、折紙の場合は、自分のことを知り尽くした上で、好意を送ってくるため、不快にならない。それに、暁夜も折紙と関わってから好きになった。 当初は綺麗な女の子だなぁ。としか思っていなかったが、関わり始めてから、色々と折紙のことを知っていき、惚れた。

(あー、早く終わって帰りてぇー!)

と、心の中で叫んだのと同時に、ズボンのポケットに入れていた携帯から、着信がきたことを伝えるメロディが鳴った。 暁夜は携帯を取り出し、画面を見ると、『燎子さん』と映し出されていた。 暁夜は軽く操作して、耳にあてがう。

「暁夜ですけど、なにか分かったんですか? 燎子さん」

『ええ、あなたの言う通り、あの少年の隣にいたのは『精霊』だったわ。 存在一致率98・5パーセント。 流石に、他人の空似や偶然とかで説明できるレベルじゃない』

「って事は、上から討滅許可は?」

『残念だけど出てないわ。お偉方が協議中なんでしょ』

「そう、すか」

落胆する訳でもなく安堵したわけでもなく、呆れた様子で返事を返す。いま現在、暁夜には対精霊武装がなく、ましてや『プリンセス(十香)』の居場所もわからない。多少は精霊の力を使用可能だが、本物の精霊である十香に勝てる程の力はない。もって三分。

「所で観測機の方で精霊の居場所は分かるんですよね?」

『ええ、まあね』

「その場所って教えてもらったりできますか?」

『--駄目よ。たとえ、成果を上げているからって、アンタは私の大切な部下よ。危険な目に遭わせる訳にはいかないわ』

その言葉には有無を言わせないものがあった。部下のことを大事に思っていることにはとても感謝している。それでも、暁夜にも譲れないものがある。

「--分かりました。 協議が終わったら、結果だけ教えてください」

『ごめんなさいね。 アンタが『精霊』の事を恨んでいるのは知ってるのに。でも、それ以上にアンタには死んで欲しくないの』

「ええ、分かってます。 燎子さんが俺達のことを大切に思っていることは。でも今回は恐らくですが危険な目には遭わないと思いますよ。『プリンセス』の隣には一般人である士道がいるので」

『どういうこと?』

燎子が疑問を浮かべる。

「そのままの意味です。士道は『プリンセス』の枷みたいなもの。もう少しわかりやすくいえば、精霊を制御できるというわけです」

『『精霊』を制御出来る?でもおかしいわよ。 今までにそんな情報はなかったわ』

「そりゃそうですよ。 俺も昨日知りましたからね。ですんで、場所だけ教えてください。 討滅はしません。どうやら今は何もしないみたいなので監視だけでも」

『はぁ、分かったわ。一応、武装だけ送ってあげるから、今から高台に来なさい。 そこで合流とするわ』

「ええ、迷惑かけます」

暁夜は最後に謝罪の言葉を残して、通話を切る。そして、携帯をしまった後、試着室の中にいる折紙に声をかける。

「おーい、そろそろ決まったか〜?」

「--ちょっと来て」

「・・・どうしたんだ? 折紙」

折紙の声に試着室に近づくと、試着室の中から手が伸び、

「・・・へっ!?」

変な声を上げた瞬間、引きずり込まれた。その勢いそのまま、硬い何かに顔面をぶつけ、顔中に熱を帯びた。暁夜は顔面を押さえながら、立ち上がると共に、背後を振り返ると、

「な、なんて格好してやがんだ・・・っ!? 折紙!」

そこには、上半身は何も身につけず下半身を黒の下着で覆った姿の折紙が立っていた。しかも恥ずかしげもなく、柔らかそうな胸を隠そうとしない。 寧ろ、見てと言わんばかりに折紙が近づいてくる。暁夜は自身の身体が頭が熱くなっていくのを嫌という程に感じた。慌てて逃走を図るが、シュパッ、と風を切るような音と共に、片腕を絡め取られ、床に叩き伏せられる。

「・・・んぎゃっ!?」

「--逃がさない」

後ろから跨り、折紙が耳元でそう囁いた。

「あの・・・その・・・まっ--」

「大丈夫。 すぐ楽になる」

折紙のその声を最後に、暁夜の悲鳴というよりなにかイケないような声がランジェリーショップに響き渡った。
 
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