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提督はBarにいる。

作者:ごません
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マメに食べよう!豆料理特集・4

「さて、蚕豆の料理はこんなもんでいいだろ。お次はやっぱりこの時期だからな……枝豆を使って料理するか」

 夏が旬の豆と言えば、枝豆。未成熟な大豆の実だが、アルコールの分解を助けてくれる酵素が含まれている。それに、大豆にはあまり含まれていないビタミンCや葉酸も含んでおり、枝豆として食べるのも栄養学的には十分有意義な物だ。

「まずは枝豆を使ったディップソースだな」

 簡単に摘まめるツマミの中でも、クラッカーやカナッペ、焼いたバゲットなんかの出る量は多いんでな。塗ったり載せたりするだけで手軽に1品増やせるディップソースは幾つあっても助かるモンさ。

《朝のトーストにもオススメ!枝豆ディップ》

・枝豆(茹でて皮を剥いた物):100g

・粉チーズ:大さじ1

・レモン汁:大さじ1

・豆乳(牛乳でも可):50cc

・塩、胡椒:適量

・オリーブオイル:小さじ2



 さて、作ろうか。……つっても作り方は超簡単。茹でて皮を剥いた枝豆、粉チーズ、レモン汁、豆乳、オリーブオイルをフードプロセッサーかミキサーに入れて撹拌。ペースト状になったら味見をして、塩、胡椒で味を整えれば完成だ。枝豆を茹でるのが手間なら、冷凍の剥き枝豆を使うと手軽に出来るぞ。

「よし、僕達はそろそろお暇するよ」

 枝豆ディップを塗ったバゲットの試食を終えた水無月が立ち上がる。

「そうか?もう少し居てもいいぞ。邪魔しないならだが」

「いやいや、もうすぐオヤツの時間だからね。さっちん達と間宮であんみつ食べる約束してるんだ」

 あんだけ食べてまだ食うのか?細い割に意外と食うなぁ、水無月。

「あんまり食うと肥るぞ?気を付けろよ」

「あはは!容赦ないなぁ、流石お父さん」

「誰がオトンだ、誰が!」

「じゃ、じゃあ私も失礼しますね!」

 ワタワタと立ち上がる五月雨。落ち着いて行動しろよ?お前何も無い所でズッコケる変な癖があんだからよ。

「……で?春雨は残るのか」

「は、はいっ!もう少しお手伝いを……。あの、お邪魔でしょうか……?」

 止めろ、そんな悲しげな潤んだ瞳で見上げるな。俺ぁ女の涙にゃ弱いんだ。

「春雨は料理上手だからな、手伝ってくれるならありがてぇよ」

 そう言って頭をグシャグシャと撫でてやる。

「……はいっ!」

 やっぱり女は笑顔が一番さ。





「それで司令官、次は何を作るんです?」

「豆ばっかりってのもアレだからな。さっき冷凍庫漁ったら鶏の挽き肉が出てきたから、コイツを使って枝豆入りのつくねでも作るかな」

《枝豆のグリーンが鮮やか!枝豆入りつくね》※分量4人前

・剥き枝豆:200g

・鶏挽き肉:350g

・酒:大さじ1

・みりん:小さじ2

・醤油:小さじ2

・ゆず胡椒:小さじ1/2

・焼き海苔:1枚

・塩コショウ:少々

・片栗粉:大さじ2~3

・サラダ油:適量

・大根おろし:適量

・生姜(すりおろし):適量

・貝割れ菜(あれば):適量

・ポン酢:お好みで


「さてと、まずはつくねのタネからだな。春雨、ボウルに挽き肉と枝豆、それと酒、みりん、醤油とゆず胡椒、塩コショウを入れたら焼き海苔も千切って入れて練ってくれ」

「は、はいっ!えぇと、お肉に、枝豆、焼き海苔に……」

「焦らんでいい。確実に、分量を間違えないようにな」

 俺はその間に大根おろしを作り、ザルに空けて余分な水気を切っておく。多分だが、このつくねは照り焼きみたいな甘辛な味付けよりもおろしポン酢みたいなサッパリした味付けが合うと思う。……個人的には、だけどな?

「司令官、練り終わりました!」

「んじゃ、それを小判型に成形しよう。今のボウルの中身の分量だと、8~12個位だな」

「了解です!」

 暫くの間、黙々と肉ダネを手に取り、丸めて、軽く潰して形を整える作業が続く。2人並んで作業してると、まるで夫婦のような気さえしてくる。……いや、見た目と身長差を考えると、親娘、か?

「司令官、何か失礼な事を考えてませんか?」

 唐突に春雨に話しかけられた。そっちに顔を向けると、む~っとむくれた顔の春雨が待ち構えていた。

「いや、別に、何も?」

「嘘ですね」

 断定された。解せぬ。

「……解ったよ、白状する。こうして春雨と並んで作業してると、父子家庭の夕飯前の一幕みたいだなぁと」

「へぇ~?そんな事考えてたんですか、『お父さん』?」

「ぶっ!?」

 思わぬリアクションに噎せてしまった。

「あら、もしかして『パパ』の方が良かったですか?」

「止めい、お前とか村雨位の娘が言うと本物の娘が言ってるというより水商売のオネーチャンが言ってるみたいに聞こえる」

 キャバ嬢とかが太い客のオッサンなんかを『パパ』と呼んだりするが、そんな風に聞こえちまう。山風とかあのくらいに幼く見えればパパ呼ばわりされても何て事は無いんだが……なまじっか年頃の娘に見えるからタチが悪い。しかもそれを本人が解ってやってるから余計にタチが悪い。

「じゃあ私、完全に恋愛対象外では無いんですね」

 春雨はホッとしたような、少し悲しそうな顔になる。

「どうした春雨、何かおかしいぞお前」

「………………」

 俺が尋ねると、春雨は俯いて黙り込んでしまった。肉ダネの成形も終わったので、フライパンを熱して油を引き、形を整えたばかりのつくねを焼いていく。ジュウジュウと肉が焼ける音と共に、香ばしい香りが立ち込める。

「……私、提督の事が好きです」

 唐突な告白。いや、春雨の気持ち自体は察していたから今更感はあるが、はっきりと明確に伝えられたのは今回が初めてのハズだ。

「知ってる。でもな、春雨も知ってるとは思うがーー」

「解ってます!解ってますけど……この間、夕立姉さんと時雨姉さんがケッコンしたのを報告されて、姉妹として祝福したい気持ちよりも羨ましい、妬ましいという気持ちの方が勝ってしまったんです」

 あぁ、そういう事か。春雨の最近の妙な態度は、姉達への嫉妬に狂っていたんだ。でも、根は優しくて真面目な娘だからな。嫉妬と姉達を祝福したいという気持ちとで板挟みになってしまってたのか。

「春雨。俺ぁ戸籍上は結婚してるし、艦娘とのケッコンだって80人を超える立派なジュウコン提督だ。それでも、俺が良いのか?」

「…………はい、提督でなくてはダメです。かけがえのない人です」

「そうか。なら、ウチの鎮守府のルールに則って俺にキュウコンしろ」

「えっ?」

「30近い歳の差の見た目も、手強い嫁艦共も、姉ちゃん達も、全て薙ぎ倒す位のつもりで艦娘としての力を付けろ。女を磨け。ウチは競争厳しいからな」

 かけがえのない男を手にしたいのなら、それくらいの覚悟を持って挑むべきだ。

「俺は何人でも受け入れるし、嫌気が差して俺の下を去る者は追わない。ただし、努力もしねぇ奴は嫌いでね」

 努力もせずに愛して貰おうなんてのはお門違いも甚だしい。正妻となっている金剛だって、未だに他の嫁艦に俺の隣というポジションを奪われやしないかと油断をしていない。常に自分を磨く事を忘れない。そして俺に対しても、魅力的な男であり続ける事を要求してくる。言葉ではなく、態度で理解出来る。飽きられれば俺の下を去ってしまうんじゃないか、と今でもたまに恐ろしくなる時がある。だからこそ俺も努力を惜しまない。

「まだケッコンまでには余裕があるだろ?春雨。ケッコンが出来る錬度までの間に、俺よりも魅力的な男に出会うかもしれん。まだ可能性を狭めるな、ケッコン出来る錬度になってから……それから考える位でいいんだ」

 そう言って春雨の頭をポンポンしてやる。

「さて、と。今日は早霜の奴が遠征で居なくてな。正直言って店の人手が足りん。手伝ってくれると有り難いんだが?」

「……はいっ!私、頑張りますからっ!」

 そう言って春雨は満面の笑みを浮かべた。その目尻にはうっすらと光る物が見えた。その日以降、『Bar Admiral』に時々メイド服の店員がお目見えするようになったのは、また別のお話。 
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