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ロボスの娘で行ってみよう!

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第63話 混沌の終演


ロボスとグリーンヒルの子供談義があります。
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第63話 混沌の終演

宇宙暦794年8月4日

■自由惑星同盟 首都星ハイネセイン 統合作戦本部

最高評議会における第6次イゼルローン攻略作戦可決後、8月に入ると統合作戦本部と宇宙艦隊の協議が行われた。作戦案は宇宙艦隊参謀ホーランド大佐の作成した作戦案を原型として宇宙艦隊司令長官代行コーネフ大将の強い主張により、作戦案がごり押しされていく。

コーネフ大将の強い意向で投入される艦隊3個艦隊、ホーウッド中将の第7艦隊、アップルトン中将の第8艦隊、アル・サレム中将の第9艦隊が投入される事と成った。その時にはヴァンフリート星域会戦で戦ったばかりの艦隊を出す事に他の艦隊司令官などから疑問が上がった。

「小官の第7艦隊は判りますが。ヴァンフリートで損害を受けた第8艦隊とイゼルローン回廊で損害を受けた第9艦隊を使うのはどうなのですか?ヴァンフリートで戦闘した第2艦隊、第5艦隊、第8艦隊、第9艦隊、第10艦隊、第12艦隊以外の、第3艦隊、第4艦隊、第6艦隊、第11艦隊を動員すれば良いのでは?」

ホーウッド中将の質問にコーネフ大将のオブザーバーとして参加しているホーランド大佐が説明を行う。

「敵に我が軍の意図を隠すためです。まさか損害を受けた艦隊を直ぐにイゼルローン攻略戦に向かわせるとは思わないはずです。第8艦隊、第9艦隊は訓練と称してエルゴン泊地まで向かい、現地で後続する閣下の第7艦隊と合流しイゼルローン回廊出口を確保します」

「じゃが、第8艦隊は3000隻近い損失と、3000隻近い損傷艦が抜けておる、実質9000隻程度ではないか?第9艦隊も3000隻の損傷艦が抜けて、1万2000隻じゃ、第7艦隊を入れても参加兵力は3万9000隻程度じゃが、足りるのかね?」

「ビュコック提督のご心配も尤もですが、過去の実績に伴うご心配は心配無用です」
ホーランド大佐の余りの不遜な態度に多くの提督の顔が歪む。

今回は珍しくもシトレ元帥がコーネフ大将の意向を汲んだ結果であるが、内心は最低限度の損害で作戦が終了するようにと裏側からのフォローをする気であるが。

結局会議は非常に空気が悪い状態で終了したのであった。


宇宙暦794年8月5日

■自由惑星同盟 首都星ハイネセイン 統合作戦本部

第6次イゼルローン攻略作戦を最低限の被害で済ませるために、緊急で軍大学の授業を中断した、リーファ達はホーランドが取る作戦の照査に入った。しかし幾ら此方が作戦修正案を出したとしても言う事を聞かない事は明白だったので、戦術コンピューターで帝国軍が原作の第6次イゼルローン攻略戦のパターンを作り出して、それから対応策を出す方式を行っていた。

つまりは、ラインハルトによる狩りを不可能にするか、被害を最小限度まで落とす作戦を考えてるのである。数日前情報部からの報告でラインハルトが少将に昇進したと判ってからは、確実にラインハルトの戦法をトレースしながら、対応策を入力している。

20パターン以上にも及ぶ作戦をラインハルトが試す事がほぼ確定なので、そのパターンを原作で見事に推測し後一歩までラインハルトを追い詰めたヤンに対応策を立てさせる事をリーファは考えて、シトレ元帥に頼んでヤンの尻を叩いて貰ったのである。更に、撤退時の作戦なども研究させる予定であった。

「ヤン准将、この資料を照査し確実に敵艦隊を屠れるように研究したまえ」
「此を1人で全てですか?」
「そうだ、数が多くて大変だろうから、今回特別に副官も付けるので頑張ってくれたまえ」

そう言いながら、含み笑いのシトレがインターホンで呼び出したのはヤンも良く知る女性であった。
「グリーンヒル少尉入ります」
「入りたまえ」

入ってきたのは、この年の6月に任官したばかりのグリーンヒル総参謀長令嬢であった。
「フレデリカ・グリーンヒル少尉です。よろしくお願いします」
フレデリカの登場にヤンは驚きを隠せない。

このサプライズはリーファがシトレに頼んでヤンのお目付役としての働きを期待したのである。
「グリーンヒル少尉、御苦労」
「ああ、宜しく頼むよ。グリーンヒル少尉」
ヤンはしどろもどろで挨拶する。

「さて、ヤン准将、グリーンヒル少尉、確り頼むぞ」
「はぁ」
「はっ」

「グリーンヒル少尉、ヤン准将は怠け者だから、確り尻を叩いて、仕事をさせてくれ」
「はっ」
「本部長、酷いですよ」

あくまで真面目に受け取るフレデリカ。
それをニヤニヤしながらシトレがヤンに話をしたのである。
「尻を叩かれん様に頑張るんだな」

この日から、二週間ヤンとフレデリカの不器用な上官副官関係が続いたのであった。


宇宙暦794年8月11日

■自由惑星同盟 首都星ハイネセイン ハイネセン軍病院 特別室

ヴァンフリート星域会戦で重傷を負った宇宙艦隊司令長官ロボス元帥と宇宙艦隊総参謀長グリーンヒル大将は当初は1人部屋であったが、妻やカリン達が毎日お見舞いに来るロボス元帥に比べて、統合作戦本部に居る娘すらヤンの元に四六時中一緒に居るために、月一程度しかお見舞いに来なかったのである。

その為、寂しかろうと、ロボス元帥が自分の特別室へグリーンヒル総参謀長を話し相手として呼び寄せて2人部屋と成っているのである。今日も病室はカリンと妻のお見舞いを受けて居る。

「お父さん、寂しくない?」
「大丈夫だよ、カリンが毎日来てくれるから、寂しくなんか無いよ。それに此処に居るおじさんも話し相手でいるしね」

ロボスの言葉に横にいる、グリーンヒル総参謀長が苦笑いする。
「そうだよ、カリンちゃん。おじさんも、お父さんと話して居るから、寂しくないよ」
「何だ、娘が見舞いに来ないと、寂しがっているじゃないか」

ニヤリとしながらロボスがチャチャを入れる。
「閣下のお嬢さんと違い、家の娘はヤン准将に首ったけでしてね」
「修羅場っていうのかな?」

カリンの言葉にみんなが顔を見合わせる。
「使い方が違うわね、こういう時は、お父さん寂しいかしらね」
ロボス夫人がぼけた答えをして、更に座がしらけた。

「可哀想なおじさま。私で良ければ、おじさまの子供の代わりをしてあげるね」
優しく微笑むカリンを見て、みんなが幸せな感じになった。
「ありがとう。カリンちゃん」

「えへ。どう致しまして」

楽しい時間が過ぎて、カリンたちは帰って行った。
「お父さん、おじさま、まったねー」
「ああカリンも気を付けて帰るんだよ」
「カリンちゃんありがとうね」

夫人やカリンが帰った後でロボスとグリーンヒルが話していた。
「カリンちゃんは良い子ですね」
「だろう、あの子は目に入れても痛くない」

ロボスはグリーンヒルの話しに凄く嬉しそうに受け答えする。
「家の娘は、ハイネセンに居てもちっとも見舞いに来てくれませんから」
「恋は盲目と言うからな、リーファも凄かったが、年頃と言う事も有るのだろうな」

完全に身の上相談になりつつ病室である。
「まあ、今はヤン准将の臨時の副官として一緒ですし」
「ほう、シトレも意外とやるな」

「まあ、酷い話ですよ」
「はは、子供は何れ旅立つモノだからな。それに娘さんは、エル・ファシルでヤン准将に助けられて以来彼のファンなんだろう、士官学校に入ったのもヤン准将に近づきたい為だそうじゃないか」

「そうなんですよ、娘が士官学校へ入校すると聞いた時は私の後を追ってきたと思ったんですがね」
「女の子は彼氏が出来れば、そうなるのだよ。今の内に覚悟しておいた方が良いぞ」
「はぁ。妻が亡くなった後、男手一つで育ててきたんですけどね」

「まあ、ヤン准将も怠け者だが、立派な人物じゃないか、諦める事だ」
「確かに、ヤン准将は有望ですが」
「ははは、時を待つしか無いぞ」

「所で、この前、お嬢《リーファ》さんが、お見舞いに来たときに話していた、元帥が統合作戦本部長にならないのは、カリンちゃんの為だというのは本当なんですか?」
「ああ、本当だとも。儂も以前は統合作戦本部長を目指した事もあったが、シトレを見ていて判ってな。あんなに忙しいのでは、カリンとゆっくり過ごす事を出来ないからな」

「なるほど、確かに本部長は激務ですから、家族サービスなど出来ませんな」
「そう言う事だよ」

「それにしても、儂等が負傷したばかりに、又ぞろイゼルローンに突っかかるとは」
「コーネフ大将の焦りですかね」
「そうかもしれんな、儂が死んでいれば、総参謀長辺りだと考えて居たんだろうな」

「アップルトンもアル・サレムも昇進できませんでしたからね」
「一将功成りて万骨枯る」
ロボスがしみじみと呟く。

「単なる昇進の為だけに、将兵をすり潰す事は出来ませんね」
「そうだな。此からもそうしたいモノだ」
「今回の事は、シトレ元帥やお嬢さんが何とかしてくれますよ」

「そうして貰いたいモノだ。出来る限り犠牲を少なくして欲しい」
「そうですな」


帝国暦485年8月12日

■オーディン 軍務省

宇宙艦隊司令長官後任人事にが暗礁に乗り上げた帝国に、フェザーンからの情報で11月ないし12月に同盟軍が六度目のイゼルローン攻略に乗り出すという情報が入ってきた。

此処に至って、帝国の危機と言う事になり、イゼルローン要塞に増援を送らなければ成らなくなった。その為、緊急に宇宙艦隊司令長官を決めねばならなくなったが、派閥の抗争が未だ収まらないために、皇帝陛下の勅命により急遽シュタイホフ元帥が宇宙艦隊司令長官代行を行い、実戦部隊を率いる宇宙艦隊副司令長官に経験実績が尤も高いウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将を充てる事に成った。

皇帝陛下に拝謁するメルカッツ大将は緊張していた。
「メルカッツ大将、卿には苦労かけるが、頼むぞ」
「御意、陛下のご期待に添える様に致します」
「うむ、期待しておるぞ」

結局、リーファの危惧したように、帝国の混乱は収束に向かい、帝国が滅んでは内輪もめをしている場合ではないと、不平貴族も一時的に大人しくなってしまい、帝国の内乱は今暫く起こらなくなったのである。正しく地球教の思惑通りに成った訳である。


帝国暦485年8月30日

■オーディン 軍事宇宙港

宇宙艦隊副司令長官メルカッツ大将率いる帝国軍イゼルローン要塞増援艦隊は総数1万5000隻がイゼルローン要塞へ向かいオーディンを旅立った。その中に少将に昇進したラインハルト率いる3000隻の分艦隊も含まれていた。

 
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