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ONE PIECEを知らないエヴァンジェリン中将が原作を破壊するようです

作者:羽田京
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第1章 ネオオハラ・イン・ブリザード
  第4話 バスターコール

 
前書き
VS修正力さん
果たしてオハラはこの先生きのこれるのか?
 

 
 
 ジリジリと太陽の光が照りつく。吸血鬼になったからなのか、太陽はあまり好きではない。
 部下をみると、動揺こそしていないものの、やはり任務に思うところがあるようだ。
 副官を筆頭に古参の部下はまだいいが、新兵どもは酷く緊張している。
 まあ、これだけの戦力なのだから、命の危険はあるまい。心理面では大きな負担になるだろうが。

「交渉がうまくいくといいのだが……」

 海軍本部(マリンフォード)を出港してからの数日を思い出す。


 私は月明りの中、穏やかな風に当たる方が好きだった。
 けれど、それがかなう事はまず無い。暖かな風どころか、この海域に入ってからは一度の風も吹いていないのだからな。
 本来、風に煽られるはずの帆は今は畳まれている。海軍のカモメのマークを見る事はできない。
 夜風にあたりながら、あのマークがはためくのを見るのが気に入っている私としては、楽しみが半減してしまい残念に思う。


 今、私の船が居るのは偉大なる航路(グランドライン)の両脇に沿って存在している無風海域――凪の帯(カームベルト)
 この海域ではその名の通り風が吹く事が無いうえ、大型の海王類の巣となっているため通常の船での航行は不可能である。
 海軍の船の底には海楼石という、海と同じエネルギーを発する石が敷き詰められている。
 これのおかげで海と同化し海王類に発見されない。この画期的案技術の開発には、私も関わっている。
 ただ確実に見つからないと言う訳でなく、この海域に入ってから何度か見つかってしまっている。
 その度に私が氷漬けにしてやっているが。


 何故、私の船がそんな所にいるかと言うと、今回の任務(バスターコール)で偉大なる航路から出て、西の海(ウエストブルー)に行かなければいけないからだ。


 この世界の海は五つに分類される。
 まずは私が居た偉大なる航路(グランドライン)
 これが世界を横断するかの様に走っており、その両脇に沿って凪の帯が存在している。
 そして偉大なる航路に対し直角にこの世界を一周する巨大な大陸、赤い土の大陸(レッドライン)


 そして偉大なる航路と赤い土の大陸によって四つに分かれている海をそれぞれ、東の海|《イーストブルー》、西の海(ウエストブルー)南の海(サウスブルー)北の海(ノースブルー)と呼ぶ。


 偉大なる航路から他の海に出るには、この凪の帯を通るしか無い。
 海軍驚異の技術力により帆をはらずに進むことができるものの、当然その速度は遅い。
 集合予定に遅れることはないだろうが、さっさと行って、さっさと帰ってきたいというのが正直な心境だ。

「中将殿、あと数日でオハラに到着する予定です」
「そうか。給料分の働きをして、さっさと終わらせるとしよう」

 冗談めかして言うと、緊張がほぐれたのか、笑い声が聞こえた。
 ――そして、数日後、オハラ領海に到着したのだった。




『CP9のスパンダインが決定的な証拠を掴んだ。そして聞いて驚け、最初で最後の公表相手は五老星だったそうだぞ』
 
 五老星がオハラ側と交渉している間、洋上で待機していると、無情な連絡が届いた。
 クローバーというオハラの考古学者の長老は真実へとたどり着き、口に出そうとしたため、その場で銃撃された。
 たとえ最期の意地であろうと、歴史の真実を公表しようとするほど愚かとは、誰しも思わなかった。
 沈痛な面持ちのセンゴク大将の言葉が電伝虫から聞こえてくる。

『その結果がバスターコールの発動だ』
「考えられる限り最悪の結末だな」

 エヴァンジェリンが憤るのも無理はない。本来死罪となるのは考古学者だけだった。
 こうして艦隊を向かわせているが、これは見せ札でもある。砲艦外交は、昔から行われる常套手段だ。
 念のため一般市民を退避させているが、これもまた相手の心理を揺さぶるための方便なのだ。

「……中将殿」

 気を遣うようにこちらをみやる副官の目がつらい。うまく交渉すればバスターコールを避けられる余地はあったのだ。
 だが、もう無理だ。すべが手遅れだ。


 考古学者としての誇りは守られたのかもしれない。だが、残念なことに人命は守られなかった。
 そして、このままでは犠牲の中に女子供が含まれることは間違いない。情報拡散は絶対に防がなければならないからだ。

「オハラは犠牲になったのだ……。犠牲の犠牲、その犠牲にな」




「……心配かけたな」
「いえ、お気持ちはよくわかります」

 あーイライラする。オハラの連中、何考えてやがる。
 いかん、 指揮官が不安そうにしてはいけない。
 心配そうにこちらを伺う部下をみて、大丈夫だと苦笑してみせる。


 歴史の本文(ポーネグリフ)とは世界政府成立前の空白の100年に何があったのかを記した碑文だ。
 古代文字で書かれてあり解読するだけでも罪となる。それをあろうことか世界政府の親玉に公表する? 
 自殺願望でもあるのか? わざわざ五老星が交渉したのは、犠牲を最小限にするためだというのに……。
 学者だから政治に疎かったのだろうか。だがこの結末は……惨い。

 
 オハラで表向きは世界を滅ぼす研究をしているということになってはいるが。なんでも超強い古代兵器があるらしい。
 核兵器みたいなものだろうか。でも、古代兵器って何なんだろうな?
 私が修行していた無人島にも、自称古代兵器(笑)(プルタン?)なしょっぱい中二病の玩具があったけれど。


 果たしてどれだけの一般市民が救えるだろうか。サカズキがいることも考えれば、このままだと全滅も覚悟した方がいいかもな。
 奴の ”徹底的な正義” とやらはマジで容赦がないからな。いつも激おこぷんぷん丸な強面だが、根はいいやつなんだよね。
 紆余曲折あって、今では茶飲み友達である。


 コングには、やつの面子も立てて犠牲もやむを得ないとはいったが、やはり女子供は助けたい。
 あれから冷静になって考えたが、なにせ俺は、私は、エヴァンジェリンなのだから。
 長い付き合いだ。少しくらいの独断専行は目こぼししてくれるだろう。
 

 ん? いやだが同時に、禍根は絶つべきだ。アニメの世界みたいに、みんな助けてみんなハッピーとはいかない。
 ならばやはり、殲滅もやむなしか? いかん、考えがまとまらない。うん、世界の敵だし、犠牲になってもらおう。

「知的探究心は認めてやらんでもないが、今の秩序を乱されるわけにはいかん。世界は薄氷の上に成り立っているのだ。守らなくてはならない。こんなクソッタレな世界であってもな」
「ソンナニ大事ナノカ、ゴ主人」
「ああ、私もすべてを知るわけではないが……これもまた必要悪というやつなのさ」
「『誇リアル悪』ジャネエノカヨ」
「……」

 ん? どう……なんだろうな。いや、私はエヴァンジェリン、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)なんだ。
 うーん。やっぱり、必要悪だなんていかにも正義の魔法使い(マギステル・マギ)な行動は控えるべきか。
 どうも思考がどっちつかずで不安定だ。たまにこうなるんだよね。せめてエヴァンジェリンらしくしよう。


「バスターコールの発令準備を確認!」
「砲撃戦用意! 旗艦の砲撃を待って一斉砲撃開始!」
「了解しました!」

 甲板はにわかに慌ただしくなる。思考を中断して、戦闘モードへと切り替える。
 さて、おわるせかいを見るとしようか。介入するけどな!

『“バスターコール”を発動する!! 一斉砲撃開始────考古学の島“オハラ”その全てを標的とする!!!』

 シルバー電伝虫からの通達がきたことで、戦闘が開始された。

「ってぇええええええええ――――!!」

 号令が響くと無数の砲弾が空を飛んでいき、着弾する。

『オハラに住む悪魔たちを抹殺せよ!!! 絶対正義の名のもとに!!!』

 負けじとこちらも叫ぶ。

「主砲、斉射三連、ファイヤー!」

 グレートエヴァ様号からの砲撃が、誰もいない森に向かって放たれた。


◆◇◆

・CP9
サイファーポール(CP)とは世界政府の諜報機関である。
とくにCP9は「闇の正義」の名の下に、世界政府から非協力的な市民の「殺し」を許可されている。
殺しのライセンスをもつ007みたいな存在。

・スパンダイン
CP9長官。己の出世のためには手段を択ばない冷酷非道な俗物。原作屈指の嫌われキャラ。
無能として描かれているが、自己保身と政治力にかけては作中最高峰と思われる。

・クローバー博士
立派な人格者で考古学者としても超一流だったが、政治家としては三流だった。
それもこれも修正力さんとかいうヤツのせいなのだ。

古代兵器(プルトン)
果たして主人公が気づく日はくるのだろうか。

・徹底的な正義
海軍本部中将サカズキが掲げる正義。海賊という "悪" を許すな!である。民間人であろうと味方の海兵であろうと正義の下に躊躇いもなく粛清する。かつて誇りある悪という悪を許すな!といって主人公に挑んでは返り討ちに合っていた。
今では茶飲み友達。ちなみに、茶々丸を妹や娘のようにかわいがっている。

・茶々丸
ネギま!のエヴァンジェリン一党。マリンフォードで帰りを待っている。

・誇りある悪
必要悪にも絶対悪にも揺れ動くロールパンナちゃんみたいな存在。原作エヴァンジェリン曰く女子供は殺さないはずだが……。
主人公曰く「俺がエヴァンジェリンだ」らしい。実は、主人公は頻繁に修正力さんの毒電波に攻撃されている。

・ロールパンナちゃん
愛と勇気だけしか友達がいないアンパンマンを超える孤高の存在。

・オハラに住む悪魔たちを抹殺せよ!!! 絶対正義の名のもとに!!!
原作における海軍の行き過ぎた正義の象徴として描かれている。
誰が "悪魔" なのかは現場指揮官の胸先三寸で決まる。海軍って結構フリーダムな組織だよね。

・主砲、斉射三連、ファイヤー!
無理です。

・グレートパル様号
ネギま!原作で登場した飛行船。素晴らしいネーミングセンスだと主人公は自画自賛している。 
 

 
後書き
また近く更新します。 
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