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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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黒魔術-Dark Majic- Part1/舞踏会とミスコン

これまで度重なる怪獣と宇宙人、そして闇の巨人の被害が強かったトリステイン。特に影響が強かったのは首都トリスタニア、そしてトリステイン魔法学院。特に学院の方はかなり重大な問題を抱えることとなった。
それは、また怪獣たちに襲われるのを恐れた、一部の学院の生徒たちが学院に戻ってこなくなり、ひたすら実家の方に引きこもってしまうという問題だった。その影響で現在の魔法学院に通う生徒たち、および勤務している教師や平民たちが不足しつつあった。ルイズたちのクラスもガランとし始めていた。
この問題に大いに悩んでいたのは、オスマン学院長、そしてジャン・コルベールの二人をはじめとした、今もこの学院に残って勤務している教師たちだった。
生徒たちの半数以上、そして怪獣の脅威に恐れをなした教師、学院勤務の平民たちが学院にまだ戻ってきていない。
元々学院にまだ馴染め切れていないクリスのためにと提案されたサイトたちによる学校行事は、加えてこの魔法学院に多くの人たちを呼び戻すための行事へと昇華する。
この提案を流石に自分たちの独断で行うわけに行かず、何を行うか決めたその次の日、サイトたちはオスマンのいる学院長室へ向かう、彼に直接直談判することにした。
「平民に向けた舞踏会…思い切ったことを思いつくのう」
「ええ、提案されたこと自体、前代未聞ですね」
学院長室でサイトとルイズから話を聞いたオスマンとコルベールは戸惑いを見せていた。長らくこの学院にいた二人にとっても、
「なんとか、できませんか?これがうまくいけば、貴族と平民という異なる身分同士の連携が強まり、この学院にも生徒をはじめとした多くの人たちが戻ってくると思うんです」
「ふむ…平民の立場を知り、それを自らの生活に生かそうとする試み、大変立派じゃとは思う。
じゃが、これはあくまでわし個人の意見。学院の総意ではない。ここは魔法をはじめとして、貴族に必要なさまざまな教育を行う施設。それが平民をもてなす行事を行うとしたら、ほかの貴族たちから非難を浴びることは間違いないじゃろう…」
オスマンとしては悪くないと思えるものだが、貴族の子息の教育者を束ねる立場としては、決定権行使なんてできないのだ。
「それじゃ…やはり許可をおろせない、ということですか?」
貴族というものは平民の上に立たないと気が済まない。特にトリステインのように古き伝統を重んじるが故の国では、学院が立ち行かなくなる可能性が高いのだろう。
だがその古い差別意識の根付いた状況が続けば、平民と貴族の間に溝が治らず、また怪獣や宇宙人の襲撃の際やその後で力を合わせることができないままだ。
「あわてなさんなサイト君。主催が学院ではなく、生徒が自主的に運営するものとすれば、こちらとしても譲歩できる」
「じ、じゃあそれでお願いします!行うことができる、というのならそれで構いません」
「ちょっとサイト。あんたばっかりが決めるんじゃないの。全くもう…」
もともと自分たちで決めて準備を行うつもりだったのだ。自主的なものであっても、開催してもよいというのならそれで十分だ。
「じゃが、何か生徒たちで問題が起こった場合、いかなる理由があっても中止せざるを得んとがある。くれぐれも気をつけるんじゃぞ」
「学院長のお心遣いに報いるよう、精一杯努めます!」
条件付きだが開催してもよいと言う話を受け、二人は早速仲間たちにこの事を知らせに行った。二人が去った後、オスマンとコルベールは互いに顔を見合わせた。
「生徒たちからこんな提案がされるとは思いませんでしたよ」
「確かに数ヶ月前なら、わしらは今以上に驚いたことじゃろう」
「サイト君が来てから、ですね。この学院が…生徒が変わり始めているのは」
「うむ、彼の周りではさまざまな変化が訪れつつある。これが今、これまでの災害の影響さえも覆す効果をもたらすことを祈ろうではないか」
これまで幾度も災いが降りかかった魔法学院だが、同時に新たな風も吹いている。オスマンたちはサイトたちの行動に期待を寄せた。



怪獣や宇宙人の襲撃で学院に通わなくなった生徒、学院から離れていった平民たち。彼らを呼び戻すため、
平民と貴族の間で有事の連携を行えるようにするため、そしてクリスが学院に馴染めるように、
歩み寄り始めているが、シュウとテファの間にできた微妙な距離感を。
気づけばこの一つの行事のために、たくさんの目的が揃っていた。
これらの目的を達成するため、自分達の力のみで平民に向けた舞踏会を開く。
まずは現在も通っている生徒や勤務中の平民たちに話すことで根回しする役目をクリスが受けようとしたが、彼女のほかにもギーシュやモンモランシーが引き受けた。皇女とはいえ、よその国からの留学生…つまり余所者である彼女より、在学生である二人の顔を利かせたほうがよいと二人が自ら名乗り出た。一応顔は広く知れている(ギーシュの浮気という不毛なきっかけによるものだが)二人なので任せた。
舞踏会に利用する道具についてだが、これにはもうひとつ気になることがあったのでシュウ、コルベール、キュルケ、タバサ、そして気になって同行してきたテファと、ここに直接封じられていたリシュが訪れた。
気になることというのは、リシュ。彼女がなぜこの学院の地下室で眠っていたか…ダークメフィストとの戦いが直後におき、アルビオンへの偵察任務を受けていたので調べる時間がなかったが、前述の任務が失敗しアルビオンへ行くことができなくなったため逆に時間的余裕ができ、改めて彼らはリシュの封印された理由を知るためにも地下室を訪れたのだ。
「リシュ、ここが、あなたが眠っていた場所?」
「うん…」
シュウとコルベールが、共にリシュが封じられていた箱を探し回っているのを見ていたテファからの問いに、憂い顔でリシュは頷いた。この薄暗く、まともな明かりがほとんどな場所でリシュが封印されていたと聞いたときは、何かの冗談かと、ずっと森の中で生きてきたテファにとっても耳を疑いたくなることだった。いったい誰が何のために、こんなところに幼い少女を封じ込めていたのか。
「それにしても、相変わらず埃っぽいところね」
歩く度に舞い上がる埃を手で払い避けながらキュルケはぼやいた。
「掃除さえすれば天国」
だがタバサはこの地下室に一つの価値を見いだしていた。どうやら誇りだらけなのを除けば、この静かな環境が好ましいようだ。
「おかしい…」
広い地下室を回りながら、シュウは眉間にしわを寄せながら戻ってきた。
「どうしたの?」
「リシュが眠っているあの箱がないんだ」
彼の口から漏れた言葉にテファはきょとんとする。
「嘘でしょ?確かにここにあったわよね?」
キュルケがタバサに視線を寄せると、彼女も静かに頷く。二人も探し回ったところ、見つからなかった。
「私もこっちを見て回ったが、それらしいものがなかったよ。何か特別な仕掛けがしてある雰囲気もないのだが…」
コルベールにも箱の特徴は、探す前に伝えてある。子供とはいえ、人が一人分は入れるほどのサイズなのだ。置いてあるだけで十分に目立つ。それなのに、あの棺のような箱が跡形もなく消えていたのだ。
どういうことだ…?リシュの目覚めに立ち会ったシュウ、キュルケ、タバサは疑問を抱かずにいられなかった。
「もしかして、犯人がやってきてその箱を運び出したのかしら?」
テファはひとつの仮説を立てる。
「証拠隠滅のために、ということか?」
それはありえない話ではない。TVドラマなどでも、殺人を犯した犯人が、警察に自分が犯人であることを突き止められないようにするために証拠となるものを秘密裏に消し去るという話はよくある。実際の事件でも起こりうることだ。
だが、それでも残る疑問がある。そうまでして犯人がリシュを封じた動機がまったくはっきりしないことだ。わざわざ証拠を隠してまでこちらの捜査を妨害する意味がわからない。
シュウはリシュに視線を向ける。彼女は悪の心がかけらほども見られないような無垢な瞳でこちらを見返しているだけだ。
「…仕方ない。一度道具を整理し、必要な道具をかき集めよう。そうすればそのうちリシュが眠っていた箱が見つかるかもしれない」
これ以上考えてもわからなかった。シュウはひとまずリシュの箱探しを放棄し、舞踏会に必要となりそうな道具をまとめるためにも、片付け作業を提案した。
「えぇ~。これらを片付けるの?」
入り口以外が密閉されている地下室で大掛かりな作業となると、当然埃やごみも立ちやすい。綺麗好きな彼女にとって汚れるのも重いものを運ぶのも渋りたくもなる作業だ。
「魔法で浮かせられるだろう?その分だけあんたらメイジは力仕事の手間がないんだ。文句言うなら手伝わなくてもいいんだぞ」
厳しい言葉を言い、シュウは片付けに入ろうとしたとき、サイトが入り口の方からシュウたちのもとへ降りてきた。
「おーい!シュウ、みんな!」
「平賀か。ちょうどよかった。少しここを片付けるのを…」
「それなんだけどさ、その前にちょっとやばいことがあったんだ。来てくれよ。クリスがさ…」



「おぉ、二人ともようやく来てくれたか。…おや、ティファニアはいないのかい?」
空いた教室にて、待ち望んでいたようにギーシュがサイトとシュウの二人を見て言った。
この場にコルベールはいない。教師なので生徒が自主的に行っている活動に参加できないため、地下室で引き続きリシュを封じていた箱を探している。
「あいつなら、リシュが部屋に戻りたいとぐずりだしたから、面倒見させるために先に帰した。
それより、なにがあった?オクセンシェルナが落ち込んでいる…と平賀から聞いているが」
「それについてなんだが、例の舞踏会の件…どうも説得に失敗してしまったんだ」
「説得に失敗した?」
「それでクリスが落ち込んでしまっている。僕の囁きでもクリスの宝石のような瞳に立ち込める暗雲を払えないんだよ」
お前の歯の浮く台詞に乗っかるほど軽くないってことだろ、とサイトは心の中で突っ込む。前にクリスから露骨に拒否られたというのに懲りないものだ。
クリスが見るからに落ち込んだ様子で言った。
「確かに平民に向けた舞踏会なんて、反対意見は多く出ることは覚悟していた。だが、我々以外に賛同者がいない…というのは、さすがに堪えたな。開催理由に理解を示す者はいたが、平民を招待するとなると貴族の面子が立たない…反対理由の多くがそれだ。
異国の者、新参者には貴族の矜持がないのか、とも言われたよ」
「酷い…」
ハルナが、反対意見者の彼女への反対の言葉を知って心を痛める。
「やっぱり、こうなっちゃったのね…クリスには悪いけど、こうなるかもって思ってたわ。この国の貴族の考えていることはわかる方だから…」
一方で、ルイズも同じように考えつつも、このような事態になることはあらかじめ予測していた。公爵家の三女という立場を抜きにしても、これまでリッシュモンやモット伯爵、そしてワルドの例もある。嫌でもこの国の貴族の悪い部分も知っている。ルイズの言い分に、同じトリステイン貴族であるギーシュとモンモランシーを苦い顔を浮かべている。
「こうなったら私たちだけでも行って見せましょう!そうしないと、この舞踏会は開けないわ」
「ルイズ…そうしたくなる気持ちはわかるが、それではだめだ」
クリスは、ルイズの意見に対して首を横に振った。
「な、なんでよ?」
「サイトが言っただろう?皆でやるからこそ、意味があるのだと。
確かに私たちだけで行うのなら、開催そのものはできるかもしれない。だが、この舞踏会の目的は私たちだけで行うとなれば、当初の目的の達成とは程遠い。この行事は平民と貴族の垣根を超えた、有事の連携を育むためのものだ。それを無視して、私たちだけで、新参の私の提案を押し付けてもそぞろ問題が出るだろう」
「でも、納得してもらうにはさすがに可能性が低すぎませんか?」
ハルナの言葉に、クリスは頷く。
「あぁ、それが一番の悩みどころだ。それに、私がこの学院にいられる時間も長くない。なんとかよい案を練りたいのだが…」
「少し皆で頭をひねろう。それでもでないなら、それ以外でできることをやりつつ、後日改めて考えるしかない」
「できることといえば、招待状書きと、引き続きの説得…か」
腕を組んで思い悩むサイト。結局これ以外にできることが見つからなかったため、それらをやりつつ後日新たな対策を練り直すこととなった。
(憐や愛梨なら、簡単に頭に浮かべられただろうな。この手の話は得意な奴らだったから)
舞踏会の相談会議の後、シュウはそんな風に思っていた。



その夜、キュルケは学院のバルコニーに上っていた。
既に人気を感じないほどの真夜中だというのに、この前ここを登った時に人がいたからだ。
それもただの人ではない。黒い角と翼を持つ、男子からモテない日はないほどの美貌を持つ自分でも、美しいと思える少女だ。おそらく、エルフやどこかの森で生きている翼人等とは別種族の亜人なのだろう。
そんな彼女だが、初めて遭遇したときからずっとため息を漏らしていた。恋愛経験豊富なキュルケにはそのため息が、恋の溜息であることはすぐに察した。彼女はずっと、あのバルコニーから一直線にある人物の部屋の窓を見つめていた。恋とあれば見逃さない、たとえ人間でなくとも。
予想通り、この日も彼女はバルコニーにいた。
「今日も、彼の部屋を眺めているだけかしら?」
「……そうね」
亜人の少女はただ一言そう返した。話が途切れてしまった。これだと妙に話を続けにくい。せめて彼女を少しでも知ろうと、キュルケは亜人の少女をじっと見る。
「どうしたの?あたしの顔に何かあるの?」
視線に気づいた亜人の少女がキュルケを見つめ返す。
「そうね、あなたの目が綺麗だなって思って」
「え……そんなこと言われても…」
キュルケからの思わぬ褒め言葉に少女は戸惑いを見せた。
「本当よ。恋する女の子の目ってね、どんな宝石よりも美しいの」
「そうかな…いちゃ、でも…あたし…」
「ふふ、もじもじしちゃってかーわいい!」
キュルケは少女の反応に意外な魅力を見つけ、満足感を覚えた。
「今の反応すごく素敵よ。あなた、今みたいに話す時はもう少し柔らかい感じにした方がいいわよ。淑女たるもの、殿方の耳に心地よく響くように話さないとね。
その点あのヴァリエールはだめね。最も足りないのは、あっち(胸)の方だけど」
「あっち?」
「あなたは心配いらないわ。寧ろ十分すぎるくらいよ。あなたほどのスタイルのいい美人なら、男なんてより取り見取りじゃなくて?」
寧ろこれで同じ恋の相手を狙っていたのならなかなかの強敵である。ただ、積極的に恋のアプローチを続けてきたキュルケには、この亜人の少女のように恋の対象をただ見つめているだけのパターンは新鮮だった。
「…私がほしい人は一人だけ。他はどうでもいいわ」
「それは、もしかして…

あのクールな黒髪の人かしら」

「!!」
ふと浮かんだ予想を口にしたキュルケに、彼女は確かな動揺を示した。なぜわかったのだ、その顔が既に言葉そのものだった。
「あら、図星だったみたいね」
「…カマをかけたの?」
「あなたの視線が、彼のいる部屋に向いていたのと…女の勘って奴かしら」
ふふん、とキュルケは少し勝ち誇ったような、からかい気味の口調で言った。しかしこれはこれで面白い話だ。自分の読みでは、シュウに好意を寄せているのはティファニアだと思っていたが、
もう一人いたとは。
そこでさらにもう少しからかってみようと、こんな問いかけをしてみる。
「もし、私が彼にも興味ある、と言ったら?」
昔の話という意味では本当だが、冗談のつもりで言った。そのはずなのに…予想外の反応が返ってきた。
「…そうだったら、私はきっとあなたを許さない」
彼女は、突き刺さるような視線をキュルケに向けていた。これこそ冗談だと思いたいくらいだ。だが、キュルケは嫌でも理解した。
「恋敵は絶対に許さないってこと?」
「ええ、殺してでも」
彼女は、殺意を持っている。恋敵に恨まれることは、キュルケは初めてではない。だが、これほど本気で敵意を持つ、それも殺意を露わにする相手など初めてだった。
「邪魔をする奴は、寄り付く女を全部殺してでも、あたしは彼をものにする」
「…だとしたら、その命を狙われる相手はあの子ってことかしら?」
「あなたは違うの?」
おそらくキュルケが、自分がシュウに好意を抱いているとしたら、という仮定を口にしたためか、思わず彼女も自分と同じく彼に好意を寄せていると勘ぐっていたようだ。
「少し前までは興味はあったけど、どうも彼はあたしみたいな女は嫌いみたい。殿方のお堅いところは嫌いじゃないけど、ちょっと堅物すぎる気がするわ」
「…それなら安心したわ」
殺気が収まった。シュウと自分の間の脅威ではないと見たのか、命を奪う理由が亡くなったということか。
「でも、どういうきっかけで、彼に恋焦がれてるのかしら?よほどの理由があるということ?」
「似ているの、昔大切に思っていた人に」
遠い目をしながら、少女はシュウの留まっている学院の一室をバルコニーから眺めた。
「その点で言えば、サイトもすごく似ていたわ。でも二人のうち彼が……シュウの方が似ていた。一目惚れっていうのかしら、彼が欲しくてたまらないの」
どこまでも、まっすぐで曇りのない視線だ。先ほど殺気を突きつけられたこともあってどことなく危険性を感じさせる。
だが、それ故に、キュルケは彼女を無視できなくなっていた。
「あたし、あなたに興味がわいて来たわ」
亜人の少女は目を見開いた。
「…そんなこと言われたの、彼以外であなたが初めて」
「あら、迷惑かしら?」
「そ、そんなことないわ」
少し照れたような反応に、キュルケはかわいいと思った。初心な感じが、まるで小動物を愛でている時のようなものを感じる。
「ねぇ、見ているだけでいいの?なんなら、彼に会わせましょうか?」
いくら自分が好みにそぐわない女でも、だからといって顔を会わせるたびに露骨な拒否反応を示されるほど嫌われているわけではないし、シュウは会ってくれるだろう。
だが彼女は首を横に振った。
「…もう少し時間がほしいの。今はまだ足りない、あの5日くらい…それだけあれば…」
心の準備が必要ということだろうか。だがキュルケには、恋焦がれている相手を思ってじっと待つのは少々じれったいものだ。ただ、この亜人の少女は初心な方らしいから、時間がいるのだろう。
「でも、ぐずぐずしている間に、あの二人がくっつくかもしれないわよ?少し前に、ちょっと仲直りできたみたいだし」
あの二人、そのうちの一人がシュウなのは確実。もう一人は…あの女だ。それはこの青い髪の亜人の少女も理解していた。
「…構わないわ。何があっても、彼は…シュウはあたしがものにするんだから」
知ったうえで彼女は、断言した。
「大した自信ね。あたしでもあの堅物の人を落とせてないのに」
「…もしあなたが彼に興味を持ったら、殺すしかなくなってくる。だから近づかないように伝えるわ」
亜人の少女は鋭い目つきでキュルケを見ている。万が一キュルケが再び週に、またはその逆パターンがもし起こりえたら、と思うと少女は気が気でないのだろう。
「それは残念ね。あたしは微熱のキュルケ、他人に脅されて言いなりになる女じゃないの。それに、一番それを言うべきはあたしじゃないでしょ?」
「…」
まだ彼女は警戒を解いてこなかった。目つきを剣のように鋭くさせ続けている。これ以上機嫌を損ねると本気で殺しにかかってくるのではないだろうかと思える。
「はーいはいはい。そんなに怖い目をしなくてもいいじゃない。じゃああたし、ここで帰るわね。次もここに来るわ」
「明日もここに来るつもり?」
背を向けてきたとはいえ、脅したはずだというのに怖気づくことのなかったキュルケに、亜人の少女は意外そうな眼差しを向けた。
「それはお互い様よ。あなたも素敵な夢を見れるといいわね。
けど、あなた結局名前は教えてくれないの?あたしこの前教えてあげたのに」
「…秘密」
「じゃ、勝手にこう呼ぶわ。おやすみなさい、夜の妖精さん」
「…ええ、お休み。よい夢を」
亜人の少女は、キュルケが去ってからも、バルコニーからじっと眺め続けていた。
シュウが寝ている借り部屋の窓を。




再び夜は更け、世界は変わる。




先日の戦いは手を焼かされはしたが、ネクサス=シュウとの共闘姿勢もあって怪獣を打倒し、街に平和を取り戻したサイト。アンリエッタや、一緒に戦ってくれているタバサとクリスからもねぎらいと感謝の言葉を送られ、戦いの疲れに一抹の癒しを得る。が、それで全ての疲労が回復するとまではいえなかった。『父』からも聞かされていた通り、ウルトラマンの姿を維持するには膨大な体力やエネルギーを使う。余裕勝ちをしたとしても、変身を説くと同時に一気に疲労が来る。だから、できれば怪獣を倒した次の日は公欠を取りたい。…が、残念ながらウルトラマンとしての正体を隠したうえでいつも通りの学生生活を送っている身だ。どこぞのハイエナジャーナリストみたく鋭い者から勘づかれやすく、しかもサイト自身、あまり学校の成績がよくなく、いくらウルトラマンだからといって学業をおろそかにしても良いという特別待遇は許されなかったのである。
また、アンリエッタをトップに添えて結成された『ナイトレイダー』によって、ウルトラマンや怪獣たちについての情報は一切世間に公表されていない。人間の恐怖を餌とするビーストの増殖を抑制するためにあらゆる方面から情報操作し、それらの存在をなかったものとしている。
それも一因となって、ウルトラマンとして戦ったから次の日にお休みをいただくという特別待遇はできない。
(ウルトラマンやりながら学校ってのも、ほんと大変だな…それに)
また、サイトは学校生活内でも、ただいま難しい悩みに直面していた。
またしてもルイズとキュルケの二人である。以前ほど大きな喧嘩こそ起こさなくなりはしたのだが、目を合わせる度に険悪な雰囲気を振り撒き、教室の空気を悪くしていた。
「………」
「……」
ギーシュら三バカのお陰で、二人の仲をどうにかするための解決策は見いだせている。以前この学校で行われたミスコンテストを復活させ、正々堂々と対決させるというものだ。
風紀を重視する西条先生らの反対も予想されたが、彼女らもルイズとキュルケの喧嘩に終止符が打たれるならと、今度の学園祭でミスコンを開催することに賛同してくれた。
二人を呼び出し、この事を話すと、二人は予想以上に闘志を燃え上がらせた。
こいつだけには負けられない!その視線で授業中も睨み合っている。
「…あー、ふたりとも、今は僕の授業に集中してくれないかな?」
「大丈夫ですわ、先生」
「しっかり聞いてますので、ご心配なく」
生物の授業担当である春野ムサシに対して、ルイズとキュルケはそれぞれそのように告げて話を終わらせた。
(本当に大丈夫なのかよ…)
ミスコン前に堪忍袋が切れて乱闘騒ぎでも起こさないか、授業中のサイトはちょっと気が気でなかった。



休み時間中、ティファニアも窓の外を見て考え込んでいた。
サイトがそうであるように、彼女もまた先日の巨人と怪物の戦いの光景が、頭の中で何度も記録ビデオのように再生され続けている。
非現実的で恐ろしいひと時であった。自分もそうだが、子供たちが危うくあの怪物たちに殺されるところであった。しかし間一髪、二人の巨人たちのおかげで事なきを得た。これで一安心…のはずだったが、今度は違う意味で胸の奥で何かが…テファの中に奇妙な感覚が残っていた。
それは、ウルトラマンや怪獣、彼らの戦いに対する…既視感であった。
(どうしてかな…前にもあんなこと、経験したことがあったような……それに…あの巨人…)
何の根拠もないのに、なぜかあのウルトラマンが『誰』なのか、誰と重なったのかをテファは理解していた。初めて見るはずなのに、そもそも『彼』と出会ったのも、ごく最近になってからのはずなのに。
しかもその事を考えると、妙に胸がざわついて、不安がドっと押し寄せる。
(…うぅん、そんなはず、ないよね…きっと夢を見てたのかも)
そうだ、そもそも昨日のことは、夢に違いない。だって、あれだけの大事件がニュースにも新聞にも、それどころかSNSにも全く取り沙汰されていないのだから。当然、同居中の姉と慕う女性は、もしあれだけのぶっとんだスケールの事件が現実に起きているとしたら間違いなく話に上げてくるはずなのに、あの出来事を全く話題に上げてこない。同じく、巻き込まれていたはずの子供たちですら、トラウマを発症したりもせず、何事もなくいつも通りだ。実際に戦いの場となったあの公園も、何事もなかったように元通りだ。
夢が妙にリアルで生々しかったせいで、現実と夢の区別が付けづらかったのだろう。
そんな風に折り合いを付けているテファは、知るよしもなかった。
ウルトラマンと怪獣のことなど存在せず、この世界は争いのない平和で満たされている。そんな仮初めの平穏を維持するため、アンリエッタたちナイトレイダーの情報操作の影響下にあったなどと。
気が付くと、授業終了のチャイムが鳴り終わっていた。先生に当てられなかったのは幸運だが、これで学業が厳かになってしまう。
ため息ばかりが出る中、彼女は自分に近づく人の気配を感じる。視線を向けると、数人ほどの男子生徒たちが彼女の前に立っていた。
「あ、あの…何か御用ですか?」
「ティファニアさん、お願いがあります」
「え?あ、あの…なんでしょうか?」
異性に囲まれるのは絶対に慣れない。大人しい彼女の性格がそうさせていた。
すると、男子生徒たちは互いに顔を見合わせ意を決したように頷きあうと、なぜか…

一斉に土下座をしていた。

「ミスコンに参加してください!!」
「…へ?」

テファの口から、あまりに予想外な要求に対する困惑の声が漏れた。
 
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