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海坊主

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第四章

 二人はその海の方に来た、そこに来ると海は真っ暗で波の音が聞こえるだけだ。周りに灯りやそれに照らされている建物それに大阪の街並みが見えるが人気もなく至って静かだ。
 その場所に来てだ、エミリーはまずはこう言った。
「悪いことをするには確かにです」
「はい、向いている場所ですね」
 ダイアナも同意して頷いた。
「ここは」
「そうですね」
「人気もないので」
「では本当に南港に行けば」
「危ないですね」
「最初から危ないところには近付かないことですね」
 エミリーはダイアナに腕を組み確かな顔になって話した。
「本当に」
「それが賢いやり方ですね」
「日本でもそうです」
「そうすれば長生き出来ますね」
「そういうことです」
 こうした話をしながらだ、二人は妖怪が出るという海の方を見た。するとその真っ暗闇の海からだ。
 何か闇が大きな水面に中から出て来る音が聞こえてきた。そして二人の目の前に巨大なものが出て来た。
 それが何か、暗い中で出て来たしそれの姿も漆黒なのでよく見えない。だがそれを見てダイアナは言った。
「よくわからないですね」
「はい、多分これはです」
「これは?」
「大阪に出るとは思わなかったので考えていませんでしたが」
 出るとはと言うエミリーだった。
「これは海坊主ですね」
「海坊主?シービショップですか」 
 ダイアナは海坊主と聞いて欧州の海の妖怪を連想した。
「あれですか」
「また違います。日本の海に出て来る妖怪で」
 その頭みたいなものだけが出ているのを見ながら言うのだった。
「真っ黒で姿はよくわからなくて」
「こうして出て来るのですか」
「船を沈めるといいます」
「船を。では悪い妖怪ですね」
「その様です」
「わしはそんなことはせんぞ」
 その黒い頭だけが出ているものから声がした。ここで目が開いて大きなそれが二人からもよく見えた。
「決してな」
「あっ、喋りましたね」
「そうですね」
「喋れるし悪いこともせんわ」
 妖怪の方から言って来た。
「そんな海坊主もいるがわしは違う」
「そうですか」
「悪事をしない海坊主ですか」
「そうじゃ。しかし御前さん達何故ここに来た」
 海坊主は海岸の方にいる二人に問うた。
「一体」
「実は納戸婆さんに紹介されてお姿を見に来ました」
 エミリーは海坊主に正直に答えた。
「それで来ました」
「ああ、あの婆さんにか」
「はい、そうです」
「あの婆さん納戸の中から大阪のあちこちを出歩いておるが」
 海坊主はエミリー達に何故自分達が友人関係となるきっかけである出会いがどうしてあったのかも話した。
「わしを紹介したのか」
「駄目でしたか?」
「別に駄目ではない。しかし夜に奇麗な娘さん達が出歩くことはな」
 それはというのだ。
「あまりよくないぞ」
「だから警棒を持って二人で来ました」
「私もスタンガン持っています」
 ダイアナも言ってきた。
「あと南港という場所には行ってないです」
「行くなとも言われていますし」
「ならいいが今度からは気を付ける様にな」 
 海坊主は二人に怪訝な顔で告げた。
「本当に夜は危ないからな」
「はい、それじゃあですね」
「今度からはですね」
「夜に女の子だけでこうした場所には来ないことじゃ」
 そうすべきだというのだ。 
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