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から傘

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第二章

「もうね」
「そんな殺され方していて」
「昨日の夜ネットじゃ大騒ぎだったよ」
「それはそうよね。最近神戸とか大阪でね」
「ヤクザ屋さんとかがそんな殺され方してるよね」
 ここでこうも言った勇人だった。
「あいつだってそうだったじゃない」
「そうね。確かに札付きの不良だったけれど」
 結衣も知っている相手だった、とかく札付きの不良だった。
「もうそうした感じで徹底的に苦しめて殺してね」
「晒すっていうね」
「酷い殺され方だったわね」
「警察は神戸や大阪の一連の事件と合わせてね」
「犯人は同じ人って考えてるの」
「うん、けれどね」
 それでもというのだ。
「犯人の手がかりはないんだよね」
「それはだよね」
「一切ね」
 それこそというのだ。
「なくてね」
「捜査も困ってるの」
「全く進んでいないらしいよ」
「あれだけ派手に無茶苦茶に殺してて」
 結衣は今度は首を傾げさせて言った、二人で電車の扉のところに一緒に立って窓の向こうの雨を見つつ言った。
「一切手がかりがないって」
「どの殺人事件もね」
「おかしなことね」
「そうだよね、八条学園の先生や生徒だって殺されてるし」
「不良の人四人と女の子が一人に」
「先生だってね」
「先生首切断されて全身切り刻まれて逆さ吊りで晒されてたのね」
「それで女の子はその先生の妹だったけれど」
 それでもというのだ。
「この人も酷い殺され方で」
「その娘は寸刻みに切られた死体が見つかったっていうけれど」
「無茶苦茶な殺し方ばかりだね、だからね」
 そのあまりにも惨たらしい殺し方故にというのだ。
「犯人はどの事件も同じだろうっていうけれど」
「一体誰かしら」
「何かうちの学校の人じゃないかって話もあったけれど」
「八条学園に殺人鬼がいるの?」
「まさかと思うけれどね」
「うちの学校怪談話は多いけれど」
「その連続殺人事件の時警察も本気で疑ったらしいけれど」
 それで学園の中に入って綿密な捜査も行っていたのだ。
「けれどね」
「証拠はなのね」
「一切ね」
 それこそというのだ。
「見付からなかったっていうよ」
「それで今も犯人は見付かってないのに」
「今回もそうなるかもね」
「嫌な話ね、雨以上に」
「そうだよね」
 二人でこんな話をしながら登校した、二人は交際しているので下校の時も一緒だった。部活は同じ吹奏楽部なので待ち合わせは楽だった。
 それで一緒に帰るがこの時もだった。
 結衣はぼやいてだ、こう言った。
「またね」
「うん、帰りもだね」
 勇人も困った顔で応えた。
「雨だね」
「天気予報外れたわね」
「とにかく降るね」
「明日もこうかしら」
「そうかもね、明日はね」
「晴れ?」
「学校でスマホで天気予報確認したら」
 そうすればというのだ。
「そうだったけれど」
「今朝の私と一緒じゃない」
「それだったら」
「またじゃないの?」
 こう勇人に言うのだった。 
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