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真田十勇士

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巻ノ百三十七 若武者の生き様その五

「あえてです」
「長門守がだな」
「見事武勲を挙げて戻られ」
「その時にどう祝い褒美をやるのかをじゃな」
「言われるべきです」
「そうであるな、あの者には名刀をやるか」
 秀頼は気を取り直しこう言った。
「そして領土はな」
「大和一国でどうでしょうか」
「うむ、あの者はそれに相応しい功を挙げてくれる」
「ですから」
「あの者には大和じゃ」
 百万石のこの国をというのだ。
「そうしよう、そして又兵衛にはな」
「あの御仁もですな」
「必ず見事な武勲を挙げてくれるしこれまでも色々教えられておる」
「では」
「播磨じゃ」
 この国をというのだ。
「あの国をやろう」
「一国をですな」
「そうじゃ、あの国一国をじゃ」
 秀頼は大野に笑って述べた。
「やろうぞ」
「さすれば」
「そして原二郎にはな」
 幸村にはというと。
「あの者は信濃の生まれであるからな」
「信濃一国をですな」
「任せるとしよう」
「それがよいかと。そして豊臣家ですが」
「かつての様にじゃな」
「二百万石、いえ四百万石はです」
 幕府を意識してだ、大野は秀頼に話した。
「必要です」
「それだけはか」
「これからは」
「そうか、それだけの石がか」
「必要なので」
「わかった」
 秀頼は大野に答えた。
「ではな」
「戦に勝った暁には」
「この大坂とな」
「江戸もですな」
「領土にしてじゃ」
「そうしてそのうえで」
「天下を治めるのじゃな」
「そうされて下さるとよいかと」
「ではな、しかしな」
「しかし?」
「それは余が器ならばな」
 こうも言った秀頼だった。
「そうしようぞ」
「器ならですか」
「そうじゃ」
 まさにとだ、秀頼は大野に答えた。
「そう思っておる」
「上様はです」
「その器があるか」
「はい、ご安心下さい」
「ならよいがな」
 秀頼は今はこう言っただけだった、そのうえでだった。
 城の本丸にある本陣に戻った、そしてだった。
 木村のことを思うが今は言わなかった、一人になると。
 木村は長曾我部と共に夜に兵を進めてだった。長瀬川の西にまで至った長曾我部の軍とは別に楠瀬川を渡った。そこで家臣達に言われた。
「いよいよですな」
「日が昇りますな」
「そして玉串川からですな」
「幕府の軍勢が来ますな」
「どうやら」
「先に出した斥候からの話では」
「うむ、何でも闇夜の中に赤備えが見えたという」
 木村は家臣達にその幕府の軍勢のことを話した。 
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