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ロボスの娘で行ってみよう!

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第43話 捕虜帰還とリーファ出撃


捕虜交換です。

次話との兼ね合いで、クブルスリーの許可の場面は修正しました。
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第43話 捕虜帰還とリーファ出撃

宇宙暦792年10月後半

シトレ統合作戦本部長、ロボス宇宙艦隊司令長官、ヤン大佐がテロにより重傷を負った報道を聞き同盟市民は、犯人アンドリュー・フォーク中尉の厳罰を求める運動が始まっていた。一部見識者がフォーク中尉が心神喪失症により責任能力の欠如であり、罪に問われないという論評をした為であった。

エル・ファシルの英雄であるシトレとヤンを自らの私怨により暗殺を計り、ましてや職責を逸脱した行為を咎められた故の逆恨みと聞けば、同盟市民の運動も判るというものであった。職責逸脱や逆恨みはさる同盟軍士官からのリークで有ったが、それが誰であるかは判らず仕舞いであった。

フォーク裁判は同盟市民の関心の的になっていたが、フォーク自身の精神錯乱が酷く、暫く中断の様相を見せていた。しかし、その間に捕虜交換のニュースが流れ始めたために次第にフォークに対する関心は薄れていった。

しかし、シトレとヤンに対するお見舞いの数はロボスの数千倍に達していて、被害者に対しての同情とお見舞いの心は廃れて居なかった。ヤンに対してはラブレターが毎日多数送られて来て、見舞いに来たアッテンボローやリーファにからかわれ、フレデリカは、ヤンに返事をどうしたらいいかなと、聞かれたので、多少ふくれっ面をしたりしていた。



宇宙暦792年 帝国暦483年11月25日

■フェザーン回廊 ポイントK 同盟軍 帝国軍 捕虜交換宙域

フォークによる襲撃事件の余波は有ったが、帝国と同盟の捕虜交換に影響は殆ど無く進められていた。しかし、シトレ統合作戦本部長、ロボス宇宙艦隊司令長官の負傷による上級者の欠落により、軍部の代表者が中々決まらなかった。

本来であれば、グリーンヒル中将が代表者としても相応しかったが、現在は無理であるので、緊急に元統合作戦本部長エーデルガルト元帥が緊急に代表者として参加する事に成った。又、ウルヴァーシー基地設営を一手に引き受けていた、シンクレア・セレブレッゼ中将がグリーンヒル中将の代わりに事務処理を一手に引き受けるために参加する事が決まった。

政府代表者は前回の失態を回復する気満々のカスター国防委員長と今回はレベロに代わりホアン人的資源委員長が参加した。当初は副委員長クラスで良いのではとの話が出たが、テロ事件の余波を帝国に突かれぬ様にする事と、トリューニヒト派に対する対抗心から委員長自らが参加する事になったのである。

フェザーンで事前協議参加者に混じり情報部の凄腕数人が潜入し、フェザーン弁務官事務所以外で活動を開始した。情報部としても、シトレ、ロボス暗殺未遂事件の黒幕を探っており、リーファの指摘もあり軍強行派、トリューニヒト派、フェザーンを探る事にしたのである。

帝国軍側は、今回も国務省次官ゲルラッハ子爵と軍務省次官ルーデンドルフ大将とレムシャイド伯が代表者であり、全体的に同盟より格下の人物で有るのは帝国の矜持の表れと言えるのである。

11月25日正午に交換地点で、両政府代表者が捕虜交換文書に調印し、あくまで帝国側は格別な慈悲であると明記し、マスコミの参加も拒否されたために記者会見もなく、握手も無い状態で両者とも別れた。その後両軍がチャーターし、捕虜を満載したフェザーンの貨客船をそれぞれ交換し、同日17.00時にはそれぞれの支配宙域に向けて移動を開始した。

同盟側の将兵、民間人合わせて310万327名が帰国の途についた。将兵は皆やつれており、悪名高き矯正区での生活がどれ程凄まじいかを暗示させる程であった。民間人は以前拉致され農奴としてこき使われてきた為に、皆虚ろな表情で病人や怪我人や老人ばかりで、若年者や働き盛りは殆ど居なかった。

帝国政府が、農奴を解放する際に、農奴の所有者たる門閥貴族が使い物に成らない人材を送ってきたもので、人材の質自体は考慮されていなかった。その為に未だ帝国に居る農奴を解放するために帝国領への侵攻拠点を得ると言う口実に、再度イゼルローン要塞攻略の声が上がるようになって行くのである。

チャーター貨客船であるために速度が遅く帰還艦隊は11月30日にウルヴァーシー基地へ到着し、捕虜達は久々に自由の地へ降り立った。それからが一苦労であった、セレブレッゼ中将の指揮の下、憲兵隊、情報部が帰還捕虜の調査を始め、更に医療班がメディカルチェックを行った。

その地には国防委員会や族議員が集まり、自分の名前を売ろうと国費で作った自分の名前入りのタオルや万年筆などを配りまくり、少しでも票を得ようと見苦しい姿を見せていた。またマスゴミも多数参加して殊更に、過激な論法を流しまくるのである。

帰還兵に対しては、統合作戦本部での話し合いで、一階級昇進の上、捕虜中の俸給支給と外地手当加俸及び退役後の年金支給を決定していたために、比較的穏やかに居られた。一階級昇進の上、捕虜中の俸給支給と外地手当加俸については、カスター国防委員長も自らの選挙票のためとはいえ賛成し、議長も賛成し、レベロ財政委員長の支持を受けて居たのですんなりと決まっていた。

レベロとホアンは本気で帰還兵の事を考えていたのに対して、他の委員は支持率上昇と、来年の選挙の票集めだけを目的にしていたのが浅ましいが、統合作戦本部《リーファ》にしてみれば、帰還兵への厚い保護は後々まで良い影響を与えるので、その浅ましさを利用しまくる事にしていた。

ウルヴァーシー基地で帰還捕虜と民間人が抑留状態であるのを人権政治家を急遽自称した、コーネリア・ウィンザー議員とそれに乗っかるマスゴミが声高に現政権を批判したが、統合作戦本部《リーファ》は既に答えを用意して、レベロ経由でアンダーソン最高評議会議長へ提出していたために、見事な論法で撃破した。

曰く、『帰還兵、民間人は、長い間の抑留で体が弱り胃腸も弱っている、この状態で通常の食事を行えば急病に陥る可能性が高い、その様な事をするのは市民の安全と健康を守るために認められない。彼等は艱難辛苦の生活を遂げてきたのだ。体を治して家族の元へ送り返すのが、彼等を戦場へ送った者の責任である』

アンダーソン最高評議会議長の自ら行った宣言に同盟市民はウィンザー議員の見識の無さとそれに乗って事件を騒ぎ立てたマスゴミに対しての批判が高まり、ウィンザー議員の支持率はみるみる落ちていったのである。ウィンザー議員は誰かに示唆されたと騒いだが、誰も信じずに翌年の選挙で落選したのであった。

実際、ウィンザーの追い落としを行ったのは、バクダッシュ達情報部であったが、そんな事は歴史に残らないのである。ましてやリーファが原作知識で危険人物ウィンザー議員を合法的に抹殺させた事などは、誰も知らない、知られちゃいけないことなのだ。

その後、二週間のウルヴァーシー基地養生を終え、帰還兵と民間人が同盟政府の用意した高速客船でハイネセンへ到着したのが、まさに12月24日のクリスマスイブであった。狙ったように同盟市民へのクリスマスプレゼントとなったのであった。

無論、スパイの恐れのある人物は未だ抑留中であるが、恐れのない人物は皆自宅へと帰還し、その日は300万軒を超える同盟市民宅では喜びに包まれたのである。遠い星出身者に対しては、軍が特別便を出して家族をハイネセンへ呼び寄せ感動の再会も行われた。

此により、アンダーソン最高評議会議長、レベロ財務委員長、ホアン人的資源委員長、カスター国防委員長達現行の評議会委員は支持率を大幅UPを果たし、翌年の選挙で大勝を得ることになる。又、シトレ、ロボスの軍首脳もお膳立てをした事は市民に知られており、更にテロに倒れた事もマイナスイメージにならずに、賞賛の声が上がり。軍内部でも殷々たる勢力を得ることになった。


宇宙暦792年12月16日

■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 統合作戦本部

捕虜達がウルヴァーシー基地から帰還中の12月16日、フェザーンから入った一報がリーファの更なる悪巧みに栄養を与えたのである。

【帝国伯爵ヘルムート・フォン・ヘルクスハイマーと一族、同盟への亡命を求めてフェザーンへ入国。伯爵は帝国軍の試作新兵器を持参している模様。ただし帝国からの妨害で出国許可が中々下りず。以後の指示を求める】

この連絡を受けたとき、リーファは静かにガッツポーズらしきものをしたが、誰にも気がつかれなかった。ヘルクスハイマーの亡命を成功させれば、指向性ゼッフル粒子とエリザベート・フォン・ブラウンシュヴァイク、サビーネ・フォン・リッテンハイムの皇位継承に差し障りのある欠陥が判る訳である意味ジョーカーを得ることになるのであるから。

さらに、ヘルクスハイマーを追って、イゼルローン回廊から同盟領へ追撃をしてくる、ラインハルト艦長の巡航艦ヘーシュリッヒ・エンチェンをフェザーン回廊出口付近で待ち伏せして、撃沈または捕獲すれば、ラインハルト、キルヒアイス、ワーレンを一気に消し去る事が出来るのである。

特にラインハルトは捕らえずに、待ち伏せ艦隊にローゼンリッターを配属し斧で真っ二つにすれば後で捕虜交換が有ったとしても、返さずに済むのである。捕虜交換と暗殺未遂事件が起こったために、亡命事件が起こらないかと思ったのであるが、こうして起こってくれたために、早速クブルスリー中将とグリーンヒル中将に説明するべく準備するリーファであった。

アッテンボロー家は夫婦共に完全に忙しく、夫婦生活は全く無し!リーファは統合作戦本部で11月1日に復帰したラップ少佐と共にクブルスリー中将のスタッフとして活躍中、アッテンボローはヤンの負傷のために第四艦隊から宇宙艦隊総司令部参謀に移ってグリーンヒル中将の元で各艦隊がパトロールに出る準備の真っ最中で忙しい。

リーファ自身、今回の同盟領潜入作戦がラインハルト捕殺の最大のチャンスだと踏んで準備出来るようにグリーンヒル中将に働きかけを行い、搦め手から許可を得ることが出来たため、毎日家に帰らずに宇宙艦隊総司令部に泊まり込みで準備をしている。

本来なら、ヤンかワイドボーンに参謀としてヘルクスハイマーを迎えに行き、ラインハルトを迎えて逝かす仕事を頼みたかったが、ヤンは入院、ワイドボーンは統合作戦本部の仕事で動けない状態では、今回は自ら出るしかないと、考えたのである。

諸処の根回しと準備を終えた、ヘルクスハイマー伯爵お迎え艦隊は形式上単なる訓練としてフェザーン回廊逆側の宙域まで数日行った後で戻ってくる航路を選択し、宇宙暦792年12月29日密かにハイネセン第一軍事ステーションから出港した。

ラインハルト捕殺を目標としてはいるが、現在の所イゼルローン回廊外へ出た帝国艦艇が認識できていないために、あくまで用心としての参加として誤魔化しを行っている。

指揮官にはリーファが特に頼んだラルフ・カールセン少将が就任。参謀長には第四艦隊から宇宙艦隊総司令部へ引き抜いたフィシャー大佐が就任。副参謀長にリーファ自らが就任。作戦参謀にラップ少佐とスールズカリッター大尉が就任。航海参謀にドールトン大尉が就任した。

更にリューネブルク准将に頼んでシェーンコップ中佐指揮のローゼンリッター第二連隊からで訓練が済んでいる一個大隊600人をシェーンコップ中佐が引き連れてきた。

艦艇数1000隻の所帯であり、訓練参加と称している為に、実際の行動先がフェザーン回廊であると知るのは、カールセン、フィッシャー、リーファ、ラップ、シェーンコップ、イブリン、スーンと艦長だけである。他の艦隊員は全く知らない状態で旗艦に同調して動いていた。

旗艦は宇宙艦隊副司令長官グリーンヒル中将に頼んで元同盟軍総旗艦ヘクトルを借り受けていた。此はアイアースが旗艦になったために、余っていたのが最大の要因であった。通常型戦艦でも良いのではとの話しも有ったが、伯爵を迎え入れるのに品がないからと、頼んで許可を得たのである。

艦隊の目標は指向性ゼッフル粒子と帝国の秘密を持た亡命者とリーファにとっての最重要危険人物ラインハルト捕殺である。漆黒の闇をヘクトルに率いられた、1000隻の艨艟がフェザーンへと進む。
 
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