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異世界にやってきた俺は、チート能力を駆使して全力でスローライフを楽しむ!

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事情説明は後で

 不用意に一歩前に出た彼女のおかげで罠が発動した。
 拘束系の光の糸が縦横無尽に周囲に走っていく。
 同時に甲高い音が周囲に響き渡る。

 罠が発動したのを知らせる音だったのだろう。
 いろいろと俺は言いたいことがあったが、とりあえずはここから少しでも離れるのが先決だった。
 罠が発動すると同時に拘束系の魔法が浮かび上がるのを感じる。

 即座に俺は防御系の魔法を使って、その場を走り出した。
 拘束系の糸を断ち切るような風系の魔法である。
 そのまま罠の発動と同時に目の前の少女も防御系の結界を張ったらしく拘束されてはいないが……同じ場所にずっと立っているのは、いずれ結界が解けた時にその意図に捕らえられる可能性もあるし、立ち止まること自体が、止まった“的”のようなものだ。

 ちょうどそんな彼女に向かって炎の塊が一つ飛んできている。
 防御の結界があるから大丈夫ともいえるが、その当たった場所は結界が薄くなるためそこに拘束の糸が入り込むと、巻きつくときに抵抗すれば服が破けて、さらに彼女はあられもない姿になってしまうだろう。
 俺も余分にローブは持っていないので、さすがに入浴シーンでもないのに一糸まとわぬ姿にさせてしまうのは良心が痛む。

 それに新たな人質になられてしまっても面倒だ。
 だから回収する、そう思って地面をけり、彼女の結界を破るようにして腰のあたりを掴み、

「ど、どこを触っているのよ!」
「非常事態なのでそのあたりは大目に見てください」

 そう返してさらにその場所から離れる。
 俺が移動していくのをまるで追いかけるように、炎の塊がいくつも撃ち込まれて爆音を立てている。
 明らかに俺達を狙って……“殺そう”とするかのような光景だ。

 物騒だなと軽く振り返り、俺は思いながら攻撃してきた方向をうかがう。
 黒い三角形のフードをかぶり黒ずくめの人物たち。
 目の部分が二か所空いているその恰好。

 そして黒い布時には、四つの目が金色の模様で描かれている。
 他にも特徴があるといえばあるのだが、それらに俺は見覚えがあった。
 だが……それらは前の世界で見かけたものだ。

 とりあえずはこの二人を安全な場所、とは言えないが湖の反対側の茂みにまで送り届けてから、防御結界を張って保護を行ってあの黒ずくめの人物たちを追いかけよう、そう俺は決めてさらに走って跳ぶ。
 そのまま茂みの中に飛び込んでから、草地に彼女たちを下ろして、

「ここで待っていてくれ。今攻撃した奴らを二人ほど捕まえてくる」
「! それって“闇ギルド”の連中! それなら私も行くわ」
「いや……その恰好で戦闘に行くのはちょっと」

 そう俺が、先ほど現れた少女に向かって言うと、彼女はそこで自分の三いょうに気づいたらしく、顔を赤くさせて、

「だ、誰のせいでこうなったと思っているの!」
「いや、こんなになるまで必死に逃げ出そうとするとは思わなかったんだ。足止めのつもりだったし。というか詳しい話はあとだ。ちょっと行って、あそこにいる……今逃げようとしている二人を捕まえてくるから、それが終わったら苦情も含めて話を聞くよ」
「ちょ、待ちなさい!」

 そんな声が聞こえたが、俺は無視をしてその場から……湖を飛び越えるように、跳躍したのだった。 
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