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ロボスの娘で行ってみよう!

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第38話 フォークの異変 


作中ににしなさとる様よりいただいた、文章を使わせて頂きました。ありがとうございます。
にしなさとる様よりの増補をいただきましたので、使わせて頂きました。ありがとうございます。

相変わらず神経痛、ボチボチ書いていきます。
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第38話 フォークの異変 

宇宙暦792年7月11日

■自由惑星同盟 首都星ハイネセン ハイネセンポリス 

最高評議会で第6次イゼルローン攻略作戦がクソメソに潰され、捕虜交換を帝国に働きかけると議決された翌日、アンドリュー・フォーク中尉はサンフォード副議長を訪ね最高評議会ビルへやって来た、受付で何時ものようにロイヤル・サンフォード副議長の秘書に面会の約束があると受付に伝えたが、その様な人物は取り次げないとけんもほろろに拒絶された。フォークはしつこく食い下がったが、ガードマンにより外へ排除された。

フォークは電話連絡も試みたが、着信拒否で繋がらず、公衆電話からもかけるもフォークと判るとおぎできないと拒否されたのである。その様な状態で苛つきながら居ると、統合作戦本部から速出頭せよとの命令を受けたため、いよいよ自分の作戦が認められたと、サンフォードの事を後回しにして、統合作戦本部へ勢い勇んで行くと、そのまま統合作戦本部長室へ通された。

フォークはいよいよ自分が統合作戦本部に配属になると喜んで入っていった。部屋にはシトレ統合作戦本部長とニシナ後方勤務本部長とロボス宇宙艦隊司令長官が待っていた。
喜色に顔を染めるフォークは、いてもたってもいられ無い状態である。

「フォーク中尉、今日呼んだのは他でもない、貴官の職責についてだ」
シトレ大将が非常に重苦しい声で話しかける。
「小官の職責で有りますか?」

「フォーク中尉の仕事は後方勤務本部での補給担当のはずだ」
「確かにそうですが」
「それにも係わらず、貴官は仕事をせずに、作戦私案ばかりを作り彼方此方へ持ち歩き宣伝しているようだな」

シトレの言葉にフォークが反論する。
「お言葉ですが、本部長閣下。優れていない作戦参謀の作戦を小官の様に優れた作戦を建てられる者が改正するのは決して悪いことでは無いと存じますが」

「貴官は、統合作戦本部や宇宙艦隊総司令部の参謀より自分が優れていると言いたいのかね?」
今度はロボスの言葉にフォークが反論する。
「司令長官閣下そうは申しておりません。少々作戦立案の不得意な参謀よりは、小官の方がマシと申しているまでです」

フォークの大言壮語に3人の顔が厳しさを増す。
「フォーク中尉、私は常日頃から、貴官の事務能力の優秀さは認めているつもりだ。しかし職務を放棄しての私事の作戦案作成はいただけない事だと思う」

ニシナの言葉にもフォークは反論する。
「本部長閣下、小官に後方で事務職を行わせるなど、同盟軍に対し、いえ自由惑星同盟に対しての、冒涜でしか有りません。小官を参謀職に着けないなど、利敵行為でしかないのです!」

フォークは既にトリップして自己陶酔して居るのか、青白い顔で薄ら笑い状態で自説を強調する。
「フォーク中尉。貴官は他者を落とし入れ自己陶酔する事しか出来ないのかね」
「本部長閣下のお言葉とは思えませんな、本部長閣下もヤン中佐の様な他人の策を論い、他者を落とし入れる様な者を幕僚に加えて居るではないですか!」

「フォーク中尉。ヤン中佐はエル・ファシル以来、今回の作戦の不備まで確りと指摘しているのだ。貴官の言うような、揚げ足取りではなく、貴官より遙かに優秀であるから参謀職に有るのだよ」
「本部長閣下は、お分かりではない士官学校18番の小官と高々1000番程度のヤン中佐を比べれば、小官の方が遙かに優れている、いや絶望的な差が有るとお気づきになりませんか?」

ロボスが内心の怒りを隠し、こめかみに青筋を立てながら話す。
「フォーク中尉! 貴官の作戦案をハイネセン在住中の全艦隊司令官、全参謀に確認させたが、誰1人として貴官の作戦を支持しないし、自分にこの作戦が命じられたら、部下に無駄死をさせないためにも抗命してでもやらないと言っている」

「なんですって! そんな馬鹿な!」

「事実だ」

「嘘です! 嘘に決まっています! そんなことは有り得ません! 有り得るはずがありません!」

「嘘だと思うのなら、本人たちに訊いてみたまえ。全員が口を揃えて、貴官の作戦は使い物にならないと言うはずだ」

「嘘です! 小官の作戦が使い物にならないなどという、そんなことは有り得ません!」

「なぜ有り得ないのかな?」

「小官は天才だからです! 天才の作戦が使い物にならないなどという、そんなことは有り得ないからです!」

「もう一度言うが、誰に訊いても、貴官の作戦は使い物にならないと言ったぞ?」

「たとえ全員がそう言ったとしても、それは、天才である小官への嫉妬からそう言っているのです!」

「では訊くが、参謀ならともかく、艦隊司令官がそうする理由がどこに有る?」

「…え……」

「参謀ならともかく、艦隊司令官が嫉妬からそんなことをしても、何の得にもならない。むしろ当人の、損にしかならないではないか。武訓を立てる機会を、自分で潰してしまうわけだからな」

「…く……」

「改めて言おう、フォーク中尉。貴官の作戦を支持する者は、同盟軍には1人もいない。少なくとも作戦に通じている者では、1人もいなかった。これは疑う余地も無い、厳然たる事実なのだ!」

ロボスの言葉を受け、シトレが諭すように話し出す。
「これで解ったかね? フォーク中尉。貴官の提案した作戦とやらは、どれもこれも、使えない代物ばかりだった。貴官は戦略戦術家として、どうしようもないくらい無能だった。もし、これでもなお、自分が作戦家として有能だと言い張るようなら、貴官は『恥知らずの大嘘つき』以外の、何者でもないが?」

黙っていた、ニシナ後方勤務本部長も同意を示す。
「同感だな。貴官がいかに、『自分は作戦家として有能だ』と言い張っても、もはや誰も信じはしないし、誰も認めはしない。それが解らんとも思えんが?」

「ぐっ……くく」

 歯噛みするフォークに、シトレ統合作戦本部長が、諭すように語りかけた。

「改めて言おう、フォーク中尉。貴官には、戦略戦術の才能は無い。指揮官としての資質も無い。しかしデスクワークには、間違いなく非凡なものを持っている。それに、『士官学校を18位の成績で卒業し、その後すぐに後方勤務本部に配属』となれば、一般世間から見れば、充分過ぎるほど『エリート軍人』なのだ。それで充分だと思わないか?」

「小官は、デスクワークの才能など欲しくはありません!」

「フォーク中尉、軍隊は命令で動くモノだ。その命令が聞けないと言うなら、それは単なる組織の破壊者でしかない。その様な人物は人事権を預かる者としては看過できない、嫌ならば軍を辞めることだ!」

フォークの表情が引き攣った。顔面は蒼白になっている。そして喚くように早口で喋りだした。

「軍を辞めろ!軍を辞めろですと!!小官は天才なのです。エル・ファシルの英雄と浮かれている本部長閣下とは違うのです!!天才を知るのは天才のみなのです!!それを軍を辞めろだなんて、利敵行為も甚だしい!!」

その言葉に3人のこめかみは青筋が凄い状態で出来た。既に脳溢血が心配な状態である。
「フォーク中尉、貴官は少し養生した方が良いようだな」
比較的冷静なニシナ後方勤務本部長が諭すように言うが、フォークは喋りまくる。

「小官こそ統合作戦本部長や宇宙艦隊司令長官になるべき人材なのです。
それをヤン如きの為に潰されて良い訳が無いではないですか!!」

「貴官が統合作戦本部長や宇宙艦隊司令長官では勝てる戦いも勝てん!!
将兵を自分の出世の駒としか見えない貴官には一生かかっても成ることなどできん!!
この出来損ないの馬鹿者が、恥を知れ!!」

ロボスが切れて盛大な口撃を行った。
すると突然、フォークが悲鳴を上げ蹲った。
シトレ、ロボス、ニシナは顔を見合わせながら驚く。

「フォーク中尉、どうした」
ニシナの声にもフォークは答えない。ただ“ヒーッ”という悲鳴が聞こえるだけだ。

フォークの異変にニシナ後方勤務本部長が軍医を呼ぶように外で待っている副官に命じた。
暫くして軍医がやってきた。

「軍医のヤマモトです。患者は何処ですか?」
「此処で倒れている」
軍医が“目が見えない”あががが”ヒーッ”など叫ぶフォーク中尉をストレッチャーに乗せて医務室へ連れて行った。

いったい何が起こったのか3人が話しながら待っていると、話を聞きつけたグリーンヒル、リーファ、ヤン、ワイドボーン達がやって来たために経緯を話している間に軍医がやって来て、フォークの異変の状態を報告してきた。

「軍医、フォーク中尉の様態は?」
「はい、現在鎮静剤で寝かしておりますが、病状的に言いますと、転換性ヒステリーによる神経性盲目と思われます」

「何だねそれは?」
「我儘一杯に育った幼児に時としてみられる症状で、転換性ヒステリーで目が見えない状態になります」
「「「「「はぁ?」」」」」

思わずリーファ達が疑問に声を上げてしまったが、シトレは落ち着いて話を聞く。
「治療法はあるのかね?」
「有ること有るのですが、彼に逆らわないこと、我が儘一杯に言う事を聞くしか有りません」

リーファが此処一番の台詞を述べる。
「本部長閣下、敵にフォーク中尉の病気を治したいから態と負けたふりをして下さいと連絡でもしますかね」
その言葉に全員が苦笑いする。

ワイドボーンが良い台詞を見事にゲットした。
「おもちゃが欲しいとおもちゃ屋の前で泣き叫ぶ幼児ぐらいのメンタルの男が作戦参謀を気取って作戦私案を最高評議会に提出するとは、世も末ですね」

その言葉にはみんなが頷いている。
シトレが決意を新たに話し始める。
「今後フォーク中尉の様な事が起こらないように全軍が纏まって隙を見せないようにしなければな」

その後フォーク中尉は持病の結果、長期養生を命じられ軍務の第一線から消えることになった。

本来であれば予備役編入が妥当であったが、他の養生者達に迷惑かかる可能性が有るため、これが精一杯の処置であった。

後にこの処置が仇となって帰ってくるのであったが、この時その危険性を考えていたのはリーファだけであったために、強く主張することは出来なかった。
後にリーファは、この時フォークを完全に潰さなかった事を後悔する事に成る。


帝国暦483年8月5日

■フェザーン自治領 自治領主オフィス  アドリアン・ルビンスキー

フェザーンでは、アドリアン・ルビンスキーが補佐官ニコラス・ボルテックの報告を受けながら今後のことを考えていた。

「同盟からの捕虜交換の申し出を帝国は受諾するそうです」
「そうか、やはり帝国の損害は予想通りだと言う訳か」
「この所、イゼルローン方面へ向かう貨物が増えていますので」

「遠征でもないのにかなりの艦隊がイゼルローンヘ移動もしてるからな」
「はい」
「幾ら秘匿の為に我らフェザーン関係の業者を除こうと、
物資や貨物の動きで大概のことは予想できるモノだ」

僅か数か月前は蒼くなってルビンスキーであるが、喉元過ぎれば熱さを忘れる状態でまたもや陰謀を考えているのである。

「帝国もイゼルローンでの敗戦のショックが大きいようです。手に入れました同盟の戦闘報告書によれば、イゼルローンの損害は相当酷い模様です」
「そうなると、建材等が値上がるな、早急に此方からの供給のコントロールを行え」
「はい」

「所で、あの参謀気取りがサンフォードへ提示した第6次イゼルローン攻略戦が潰されたのは僥倖だったな、あのままいけばバランスが崩れ大いに問題が生じる所だった」
「財政委員長ジョアン・レベロと人的資源委員長ホアン・ルイが主に反対したようです」

「確かにあの二人であれば、反対するだろうが、あの2人が軍部をどう抑えたかだ」
「その点を調べましたが、統合作戦本部長シドニー・シトレ大将がレベロ委員長と同郷で親しいとの事ですので、その線から説得したのでは?」

ボルテックよそれだけでは無いぞ、軍人は戦果を求めるモノだ、それに宇宙艦隊司令長官は代わったばかりのロボスだ、シトレの成功を見て自分もと思う可能性もあったのだ。それを諦めさせた人物が居るはずだ。いったい誰だ、考えられるのは、シトレにもロボスにも影響力の有る人間で、実力のある人間だ、此処はボルテックを試してみるか。

「ボルテック、最近の同盟で作戦を主に立て、シトレ、ロボスに影響力の有る人物は判るか?」
ボルテックよそれぐらいは直ぐに思いつけ、だからお前は補佐官止まりなのだ。
「そうなりますと、参謀長グリーンヒル中将辺りでしょうか」

そうではあるまい、グリーンヒルでは押しが弱い、或いはエル・ファシルの英雄か?あの男の情報は意外に役に立たん、さらに参謀気取りは自分の憶測でものを言うようではな、しかもサンフォードにも見捨てられ、激高した挙げ句にヒステリーで入院とはな、早速捨て時か。いや未だ利用価値はあるな。

「そうではあるまい、エル・ファシルの英雄という可能性もある」
「しかし、シトレ元帥自ら行うというのも」
「違う、シトレではなく、その他の事だ」

「リンチ中将では、無理ではないでしょうか?」
ボルテックよ、俺を失望させるな、何も将官だけとは限らん。
「ヤン・ウェンリーという可能性は無いのか?」

「ヤン・ウェンリーですか、アレは偶然ではないかと報告にもありますし、フォーク中尉の話でもヤン・ウェンリーとマルコム・ワイドボーンは独創性が無く、他人の作戦の粗ばかり探して、論うと聞いておりますが」

ボルテックよ、参謀気取りごときの戯言を真に受けては策を誤るぞ。
「可能性があるとすれば、その二人だろう、最近シトレとの会合が何回か行われたようだからな」
「そうなりますと、この所のロボスとシトレの対立が無くなった事も関係しているのでしょうか?」

「可能性は高いな、早急にヤン・ウェンリーとマルコム・ワイドボーンが何処までシトレとロボスに影響力が有るかを探るのだ」
「判りました」

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フォークのよる暗殺事件フラグが立ちましたね。
後は標的が誰で、何時になるかですね。
 
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