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とある3年4組の卑怯者

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137 高原

 
前書き
 たかしくんの出番が少しずつ増えているのでたかしくんをより目立たせたエピソードを書きたくなりました。というわけで今回からはたかしくんを主人公、そして他のメインは彼と同じく犬を飼うクラスメイト達としたエピソードです。 

 
 学校でたかしは花輪から声を掛けられた。
「Hey、西村クン」
「花輪クン、何だい?」
「今度の土日に高原にある別荘に行くつもりなんだけど、良かったら君も一緒に行かないかい?僕のビッキーもそこで遊ばせるつもりでね、君もタロをそこで遊ばせてあげたらどうだい?さっき、城ヶ崎クンも誘ったら彼女もベスを連れて行くって言っていたよ」
「いいのかい?うん、是非そうさせてもらうよ!!」
「ああ、出発は土曜の午前だからその時に僕の家に来て・・・」
 その時、みぎわがものすごいスピードで二人のいる場に近寄ってきた。
「まあ、高原の別荘ですって!?ねえ~え~花輪くう~ん、私もアマリリスと一緒に行っていいかしらあ~ん?」
「あ、ああ・・・もちろんさ、baby・・・」
「あらあ~、嬉しいわあ~!!」
 みぎわは非常に喜んだ。とはいえ、彼女は二人の会話を盗み聞きしており、城ヶ崎に花輪を取られまいとする為ではあったが・・・。
(まったく、城ヶ崎さんったら、高原の別荘で花輪クンと仲良くしようだなんて、そうはさせないわよ!!フンッ!!)
 花輪もたかしも殆どのクラスメイトも熟知してはいるが、みぎわの嫉妬深さによる執念は物凄いものである。彼女と同じく花輪に好意を示しているリリィを敵視しており、さらに花輪と仲良く喋っている女子を無理に引き離そうとする程である。
「まあ、とにかく、土曜の午前に僕の家に来てくれたまえ。ヒデじいがmicrobusを出してくれるからさ」
「うん!」
「ええ、花輪クンと一緒に行けるだなんてもうロマンチックだわあ~」
 みぎわは花輪と一夜を過ごす所を映画のワンシーンのように妄想していた。
「あ、でもお母さん許してくれるかな?」
 たかしが不安に思った。
「まあ、まあ、心配ならヒデじいが君の家に電話をかけてあげるよ。Dog foodとかはこちらが用意するし、何かあったら僕のビッキーの診てくれる獣医さんを呼ぶから安心だってね」
「ありがとう、花輪クン!」

 たかしは家に帰った後、母に相談した。
「お母さん、僕、花輪クンの別荘に誘われたんだけど、行ってもいいかな?」
「花輪クンの別荘?ええ、いいわよ、楽しんでらっしゃい」
「うん、それから、タロも連れて行って遊ばせてたいんだ。花輪クンも自分の犬のビッキーを連れて遊びに行くんだって」
「タロも?大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫だよ!ドッグフードも用意しているって花輪クンが言っていたし、タロは花輪クンやみぎわさんの犬も仲良くなっているんだ。タロにとってもきっといい思い出になるよ!」
「そうね、楽しんでいってらっしゃい」
「ありがとう」
 たかしは喜んだ。タロにもその事を伝えた。たかしの母は息子と飼い犬が幸せそうで良かったと思うのであった。


 翌日、たかしはタロを連れて花輪家へと向かった。その正面の庭には既にヒデじいがマイクロバスを準備していた。花輪もミス・ビクトリアを連れてその場にいた。
「Hey、Good morning、西村君」
「やあ、おはよう、花輪クン」
「高原は寒いから君もタロも風邪を引かないように気を付けてくれたまえ」
「うん!」
 少ししてみぎわと城ヶ崎も現れた。
「あら、おはようっ、花輪クンっ、西村君っ!!」
「花輪くう~ん、おはよう・・・」
「わ、わかったから離れてくれたまえ、みぎわクン・・・」
 みぎわは花輪に暑苦しく接近した。
「それでは皆さん、御集りになられたようなのでそろそろご出発致しましょう。どうぞバスにご乗車ください」
 ヒデじいは皆をバスに乗せた。バスの車内は犬達もくつろげるスペースも確保されていた。
「うわあ、凄いね!」
「ああ、seatを折りたたむことで僕らの犬達がくつろげるようにしたり、荷物を置けるように利用しているのさ」
「よかったね、タロ!」
 タロは花輪のミス・ビクトリア、みぎわのアマリリス、城ヶ崎のベスと共に仲良くしているようだった。
 ところが、飼い主の方は座る席について少し揉め事があった。
「花輪クン、一緒に座りましょ~」
「う、四人しかいないから広々と使えるじゃないか・・・」
「そうよっ、花輪クンが困っちゃうじゃないっ!」
「城ヶ崎さん、そう言って花輪クンの隣に座ろうとするつもりでしょ!?そうはさせないわよ!フンッ!!」
「別にそんな事言ってないでしょっ!!」
 みぎわと城ヶ崎は睨みあった。対して男子二名がその場を鎮めようとする。
「もう、一緒に行くんだから仲良くしようよ・・・」
「そうだよ、君達、好きな席に座りたまえ・・・」
「じゃあ、花輪クンと私は隣で決まりね~」
「ぼ、僕は遠慮させてくれ、baby・・・」
「んもう~、恥ずかしがり屋さんなんだからあ~」
 結局、みぎわは花輪の隣に座り(花輪は嫌がっていたにも関わらず)、たかしと城ヶ崎は二人とは反対側の席に座り、前列に城ヶ崎、後列にたかしが座った。こうしてバスは発車した。

 たかしはバスの車窓を眺めていた。その時、城ヶ崎がたかしに話しかけた。
「西村君って前より変わったわよね」
「え?」
「だって前はよく遅刻していじめられてたけど、今はそんな事ないし、何か強くなっているんじゃない?」
「そうかな?」
「そうよ。校内テロの時、あの堀内に二発もかましたって丸尾君が言ってたわ」
「う、うん、そうだね・・・。でもあの時は本当にあいつが許せなかったんだ」
 たかしは堀内の事を思い出すと怒りが少し込み上がった。城ヶ崎は嫌な事思い出させてしまったと思い、慮ろうとした。
「あ、ごめんね、嫌な事思い出させて・・・」
「いや、いいんだ・・・。もうしばらくはあいつとは会う事ないと思うしね・・・」
 あの校内テロの後、堀内と彼に協力した隣町の暴れん坊は少年院に入る結果となった。彼らには悪いがたかしは気が楽になった。
「でも、あいつにタロを殺されそうになったし、せいぜいしたよ」
「そうね、私もあいつ嫌いだし、同じ気持ちよ」
「うん、そうだね」
「もうそんな嫌な事忘れて今日は楽しもうっ!」
「うん!」
 たかしは城ヶ崎にやや赤面した。

 ヒデじいが運転し、四人と四匹を乗せたバスはとある高原へと到着した。その高原では雪が沢山残っていた。花輪家の別荘もその場所に存在していた。
 一行は花輪家の別荘に入る。その時、初老の夫婦が出迎えた。
「この別荘を管理しております髙田さんご夫婦でございます」
 ヒデじいが紹介した。
「よろしくお願いします!!」
 皆は挨拶した。
「どうぞ、よろしく」
 髙田夫妻も挨拶を返した。
「それじゃあeverybody、荷物を置いたら一休憩して、高原で遊ぼうじゃないか」
 花輪が提案した。
「ええ、楽しみだわね~、花輪クンとお散歩だなんてえ~」
 みぎわの非常に暑苦しい恋心に何も言えない一同だった。

 四人とそれぞれの飼い犬達は雪の野原を駆けまわっていた。
「みんな雪が嬉しいみたいだね」
「ええ、私も花輪クンと一緒で嬉しいわあ~」
「もう、いい加減離れてくれよ、baby・・・」
 そんな暑苦しい二人のやりとりはさておき、たかしはタロが犬の友達と仲良くしている光景を見て感動していた。
「よかったね、タロ・・・。楽しくて・・・」
「あ~ら、西村君、感動してるの?」
 みぎわが聞いてきた。
「うん・・・。僕、こうして見ていると、犬を飼ってよかったなって思えるんだ・・・。特に何かいい所があるわけでもないからさ・・・」
「そんな事ないわよ・・・」
 城ヶ崎が心配そうに言った。
「でも僕なんて、花輪クンみたいにかっこいい所があるわけでもないし、みぎわさんのバレエとか城ヶ崎さんのピアノとか、藤木君のスケートとか、まるちゃんの絵とか何か得意な事があるわけでもないし、長山君とか丸尾君みたいに勉強ができるわけでもないからね・・・。タロが幸せそうな所を見ると、僕もいい気分になるんだ」
「西村君・・・」
 みぎわも、花輪も、城ヶ崎もたかしの気持ちについてしみじみとなってしまった。
「He、hey、それじゃあ、僕達も一緒に遊ぼうじゃないか」
 花輪が提案した。一同はまずは雪合戦を行った。通常の雪合戦とは異なり、飼い犬の投げた雪玉が相手の飼い犬に取られたら失敗で、飼い主に当てなければならないというルールで行われた。二人のペアに別れ、どちらかに二発当てたペアの勝ちとした。じゃんけんの結果、花輪と城ヶ崎、みぎわとたかしのペアになった。みぎわは花輪と城ヶ崎の組み合わせが気に食わなかったが、自分の犬のアマリリスがたかしのタロと仲良くしている所を見て、我慢した。
「それじゃあ、始めようか」
 ゲームが始まった。タロは子犬なので、たかしとみぎわの組が不利に思えたが、アマリリスが必死で雪玉をキャッチしたので、善戦となった。みぎわは嫉妬の凄まじさなのか、城ヶ崎を集中攻撃したため、ベスも守り切れず、二発城ヶ崎に当てる事に成功した。
(フンッ!花輪クンとペアになったからっていい気になってるんじゃなわいよ!!)
 城ヶ崎はみぎわの敵意がお見通しで何も言えなかった。

 この後、皆は雪だるまを作って遊んだ。その時、たかしは必死で雪でだるまでない物を作っていた。
「西村君、何作ってるの?」
 城ヶ崎が尋ねた。
「雪で犬を作ろうと思ってね」
「いいわねっ、私も手伝うわっ!」
 こうして二人で雪犬を作った。およそ10分後、完成させる事ができた。
「可愛くできたわねっ!」
「うん、手伝ってくれてありがとう!」
 花輪はヒデじいを呼び、写真を撮ってもらった。四人と四匹が集まり、雪だるまと雪犬の記念写真となった。(なお、みぎわは花輪に抱きついていた。)
「それじゃあ、そろそろ別荘で温まろうじゃないか、everyone」
 一同は別荘へと戻って行った。 
 

 
後書き
次回:「犬友」
 自分たちの犬と共に高原の別荘を楽しむたかし達。花輪家の別荘で一夜を過ごすたかしは寝る時、トイレに行きたくなり、その途中で偶然にも・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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