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般若湯

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第一章

                般若湯
 これは阿波座陽奈が大学に進学し成人式を迎えた後の話である。
 阿波座陽奈は人格者でイラストも上手で高校時代に数学以外の教科は優秀でしかも美人というハイスペックと言っていい少女だ。大学に進学し成人した今は数学の試験もなくその欠点もなくなったと思われている。
 それで友人達も陽奈のことをこう言うのだった。
「いや、陽ちゃん凄いわね」
「数学以外はいつもトップクラスだったし」
「絵も上手だしね」
「性格もいいし」
「嫌味さがないのよ」
「もうまさに尼さんね」
「修行を積んでる人よ」
 こう言うのだった、だが陽奈自身はそう言われても驕ることなくいつも自分を律していて問題のある行動は取らなかった。それで余計にだった。
 友人達は余計に陽奈は凄いと言った、だがそんな彼女は。
 そうした話を聞くとだ、いつもこう言った。
「私そんな立派じゃないから」
「いや、立派よ」
「陽奈ちゃん凄い娘よ」
「流石はお寺の娘さんよ」
「しかも美人だし」
 友人達はその陽奈に返した。
「完全無欠?」
「数学以外はね」
「まさにね」
「そうでもないから」
 あくまでこう言う陽奈だった、しかし友人達はそんな彼女の言葉を全く信じていなかった。陽奈は高校時代の数学のテストはいつもかろうじて赤点でない位ということを除けばこれといって欠点はないと確信していた。そんなある日のこと。
 友人の一人が自分の家でパジャマパーティーをしようと提案した、しかもそのパジャマパーティーにはだ。
「お酒をね」
「それぞれ持って行って」
「そしてなの」
「飲みながらなのね」
「やるのね」
「そうしましょう、休日の前に私の家に集まって」
 そしてというのだ。
「めいめい買って持って来たお菓子やお酒でね」
「楽しみながらなのね」
「やるのね」
「そうしましょう、大学生になったし皆二十歳になったしとことんまで飲んで」
 本当はよくないがあえてというのだ。
「やってみましょう」
「そうね、じゃあね」
「今度の土曜の夜ね」
「お酒やお菓子持って行って」
「パジャマパーティーしましょう」
 こうして話は決まった、そして友人達は陽奈にも声をかけた。
「陽ちゃんも来てくれるわよね」
「そうしてくれる?」
「お酒は駄目?」
「般若湯よね、煙草は駄目だけれど」
 これは絶対にと言う陽奈だった。
「けれど家じゃ般若湯はね」
「いいのね」
「飲んでいいのね」
「陽ちゃんも」
「ええ、うちでもそうなの」
 寺である陽奈の家でもというのだ。
「だからパジャマパーティーもね」
「参加してくれるのね」
「じゃあお菓子とお酒持って来てね」
「そうしてね」
 友人達はその陽奈に笑顔で言った、こうしてだった。 
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