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おぢばにおかえり

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84部分:第十二話 制服その十


第十二話 制服その十

「それでもね」
「何かあるの?」
 彼女にまた尋ねます。
「色が白いから」
「色がなの」
「ちっちって色白じゃない」
 これも昔から言われます。そのかわりそれこそ日焼けしたら、ですけれど。
「だから余計に似合うのよね」
「そうなんだ」
「そうなんだじゃなくてそれっていいことじゃない」
 こうも言われました。
「色の白いのは七難隠す」
 よくある言葉ですよね、これって。
「男の子が放っておかないわよ」
「男の子ってまた」
 何かこればっかり話しているみたいな。東寮だとファッションとかも全然見ることができないから当然って言えば当然なんですけれど。
「そっちに話がいくのね」
「悪いかしら」
「何か他のことないのかしら」
 言ってもどうしようもないですけれどついつい思ってしまいます。
「何かこの学校って色々催しも多いけれどね」
「夏のあれとか?」
「そう、おぢばがえり」
 これが一番のイベントだったりします。夏は。
「やっぱりそれよね」
「何かそれで夏かなり忙しいのよね」
「ああ、そうよね」
 私の方を見て言ってきました。
「だってちっちって吹奏楽部だから」
「色々としないといけないらしいのよ、これが」
 もう先輩から聞いています。それが何か色々不安だったりしますけれど。どんなに忙しいのか大変なのかって。どうなんでしょうか。
「それこそ修羅場だって」
「もっと大変な人もいるわよ」
 そうしたらこう言われました。
「専修科の人達なんか」
「あっ、そうか」
 専修科は簡単に言うと天理教の専門学校みたいな場所です。天理高校から行く人は少なくて天理教付属高校や親里高校から行く人が多いんです。この二つの学校が合併するらしいですけれど。
「そうだったわね」
「ちっちの知り合いには専修科の人いないの?」
「ええ、ちょっと」
 その質問には首を横に振ります。
「いないわね」
「私もなのよ」
 彼女もこう答えてきました。
「看護学校の人はいるけれど」
「やっぱりいないわよね」
「少ないからね。それに第二専修科はもっと」
 そういう学校もあるんです。専修科は二年ですがこの第二専修科は何と五年もあります。それこそ軍隊みたいだって聞いています。
「厳しいらしいし」
「どんなのかしら」
「それこそあれみたいよ」
 彼女の言う言葉が少しおどろおどろしいものになってきました。何かつのだじろう先生の漫画に出てきそうって言ったらそれこそ思い出して夜寝られないですけれど。
「東寮よりまだ厳しいんだって」
「想像がつかないけれど」
「かつての海軍兵学校よりはましらしいけれど」
「海軍って」
 どんなところだったんでしょう。何でも聞いた話では仮面ライダーの昔のプロデューサーさんは予科練から特攻隊に入っておられたそうですけれど。予科練を思い出してしまいました。
「幾ら何でもそこまでは」
「やっぱりないかしら」
「ここは天理教よ」
 間違っても海軍ではありません。
「どうしてそうなるのよ。全然違うじゃない」
「周り山だしね」
 本当に見渡す限り周りは山です。あまりにも木が多くてそれが紫に見えたりもする時があります。これはこれで非常に奇麗で私は気に入っているんですけれど。
「やっぱり海って場所じゃないわよ」
「そうよね」
「そういうこと。ところでさ」
「何?」
「そろそろゴールデンウィークだけれど」
「部活三昧よ」
 他には何もありません。正直部活の青春です。
 
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