| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

MR編
  百五十三話  王墓の死霊

 
前書き
はい、どうもです!

さて、と言う訳でシリカのお手伝いダンジョンアタック、二話目になります。今回から、ダンジョンに入る事になります。

では、どうぞ! 

 
サラマンダー領 砂漠地帯。

「あっついなぁ……」
「そりゃそうだよ~、砂漠だもん」
キリトが漏らした余りにも当たり前の発言に、苦笑しながらアスナが答える。
シリカの言うダンジョンの座標を目指して移動する事40分ほど、イグシティから離れサラマンダー領へと入った一行は、一度中立域の街で最後の調整とロケーターストーンの登録を行い、更に飛行して砂漠地帯の丁度中心近くへと差し掛かっていた。

「飛行制限があった時代は、これ越えるの大変だっただろうねぇ……」
「あ、そう言えばリーファちゃんに聞いたことあります!昔サラマンダーの人達が、自分達の領地だけ長距離飛行しんど過ぎるって言って、砂漠の温度を下げてほしいって運営に沢山メールを送った事があったって」
「気持ちはわかるがな……もう砂漠じゃねぇだろそうなったら」
苦笑しながらリョウが眼下に広がる砂の海を眺めて言った、常に気温が高くなく快適に暮らせる砂漠となったら、それはもう砂漠と言うよりただの砂丘地帯だ。下の所々に見えるサボテンやらが今度は違和感の元になる事請け合いである。

「ねぇ、あれじゃない!?」
「え?あっ……ほんとだ、ピラミッド……」
先頭を飛んでいたユウキが指さした先に見えた巨大な構造物が、徐々に近づいてくるのが見える。底面に巨大な正方形を置いた錐の形。その形その物をそう呼ぶように、あの形状を見た多くの人はその名をイメージするだろう。古くは「金字塔」の語源でもあったというその巨大石製建造物を、人々は、ピラミッドと呼んだ。

────

「わぁ……改めてみてみると、でっかいねぇ!」
「あぁ、正直、遠近感が狂うな……リアルのピラミッドで一番大きいピラミッドってどのぐらいだっけ?」
水平に伸ばした右手で光を遮りながらそう言ったキリトに、少しアスナが考え込むような顔を作った。

「クフ王のピラミッドだったかな?確か、140mくらいだったと思うよ」
「少なくとも、それよかデカそうだな」
目算だが、其れは間違いないだろう。ホバリングしたままでピラミッドから視線を移したリョウが、ちかくでマップとにらめっこをしているシリカたちに視線を移す。

「おーい、どうだ、見つかったか!?」
「ごめーんまだー!」
クエストの受付になっているはずのNPCを探して、既にリョウたちは5分ほどこのピラミッドの周囲の空域をさまよっていた。

「うーん、この辺りだとは思うんですけど……」
「もう一回、生体感知の魔法で調べてみるね?」
「すみません、お願いします」
頷いて、サチは魔法の詠唱に入る。感知系の技能は、本来斥候系のスキルの一つだが、魔法……特にスプリガンなどが得意とする探索系魔法にも同じような効果の魔法がある。プレイヤーやエネミーを見つけるのが主な用途ではあるが、NPCもこの世界の住人として位置付けられている以上、その感知の対象になる。自然、範囲内にクエスト受付のNPCが居れば、それを見つけることが出来る理屈だ。しかし……

「……ゴメンね、やっぱり見つからない、もう少し上位の魔法が使えたらよかったんだけど……」
「サチさんの所為じゃないですよ」
何も見つけられなかったために詫びた言葉に、シリカは笑って首を横に振る。近くに来たアスナが、からかうような声色で続けた。

「そうだよ、誰かさんがちゃんと探索系の技能取ってたら、こんなに苦労しなくて済んだはずだもん」
「い、いやぁ、ははは……前衛としてのビルドにしてると、そっち方面はやっぱりおざなりでさ、はは……」
この中では唯一のスプリガン、数年前までは「探索」のスキルを最大まで上げていたものの、ALOに来てからはすっかり前衛一辺倒になったキリトが申し訳なさそうな、微妙そうな表情で後ろ手に頭を掻く。

「そ、それにほら!今は昔みたくソロじゃなくてみんなが居るしな!オレも人に頼る事を覚えて成長したんだよ、ウン」
「調子良い事言ってんなぁお前」
「うっ……って、兄貴だって戦闘一辺倒のビルドだろ!?」
「あぁん?俺は聞き耳とってるっつーの!」
「あっ!?ねぇ!あれ見て!!」
非常にくだらない意地の張り合いを始めた兄弟をよそに、周囲にぐるりと視線を巡らせていたユウキが、突然一点を指さして叫んだ。女性陣が一斉に其方に視線を向ける。

「んー?」
「あれ?あの黒いの……」
「ちょっと待って今望遠するから」
アスナが魔法を唱えると、氷のレンズが遥か彼方に居るその黒い影を拡大して見せる。それでもまだ遠くはあったが、其れは紛れもなく……

「あ、人です!」
「えっ……?」
「きっとあれじゃない!?」
「おぉ、こっからだと殆ど見えないのに、凄いねユウキちゃん!」
「えへへ~」
魔法も含めた手段抜きに、裸眼だけで遥か彼方の人影を見つけて見せた彼女にメンバーが次々に称賛を送る中……

「だから悪趣味だとか言われるんだろ」
「ハッ、取ってもいねぇスキルよりマシだわ。つーか、人の足跡見てつけてく索敵も大概だろが」
「そもそもは人間の追跡に使うスキルじゃないんだよ」
「二人とも~、どっちでもいいけど、どっちも今回は役に立たなかったよ~」
「「えっ」」
アスナの言葉に、男子2人が面食らったように自分の方を向くのをみて思わず吹き出しそうになりつつ、ユウキを示す。彼女は此方に気が付くと、ニカリと笑ってピースサインをして見せた。

「ブイッ!」
「……あー」
「……ま、まぁ、こういう場合、リアルラックも重要だし」
「あぁ、それな」
「二人とも、負け惜しみはカッコ悪いよ~?」
「「ぐっ」」
アイリの一言で、完全に二人は沈黙した。

────

「…………」
砂漠の少し小高い砂丘の上、ピラミッドの全体が見える場所に、そのNPCは立っていた。褐色の肌に、簡素な布だけを纏った小柄なその少年は、ただただジッとピラミッドを見つめ、灼熱の砂漠にあってどう言う訳か寒気がするほどの静謐な空気を纏っていて、どことなく恐ろしさを感じるたたずまいでその場に立っている。
しかし、その頭上には間違いなくクエストの開始NPCである事を示す「?」のマークが浮いており、彼が目的のNPCである事を示している。

「さ、シリカちゃん」
「は、はい、あの!なにか、お困りですか!?」
「…………」
近づいていったシリカの問いに、少年は答えない。ただ彼女に気が付かなかった訳では無いらしく。一瞬シリカに視線を向けると、真っすぐにピラミッドを指さした。

「……死霊を鎮めて、この短剣の、本当の力を……」
「あ……」
それだけを言って、少年は指を下ろし、それ以上何も言わなくなる。シリカは少しだけ表示されたホロウィンドウを見ると、メンバーの元へと戻ってきた。

「どう?」
「クエストは受注できたみたいです。名前は……「王墓の死霊」ですね……」
「死霊……」
アスナが若干嫌そうな顔をしたのを目ざとく見つけて、リョウはニヤリと笑う。

「おやまぁ、騎士姫さんは相変わらずアストラル系がこえぇと見える」
「ちょっと!」
「え?アスナ、お化け嫌いなの?」
意外そうに聞いたユウキに、アスナは慌てて首を横に振る。

「え?う、うぅん、そんな事無いよ?全然平気ダヨ?」
「今更隠してもなぁ」
「ちょっと、もう、キリト君!!」
仲間内では既に周知の事実を今更隠そうとしたところで無駄ではなかろうか、と唸ったキリトの肩をバシンッと叩いて一度ため息をついたアスナはしかし、諦めたようにため息をついた。

「そーです!幽霊は、苦手なの!」
「お、認めるあたりは進歩だなァ」
「からかわないで!!」
「アスナ!」
いつも通りの流れでケラケラと笑いこけるリョウにジトッとした目を向けるアスナの手を、ユウキの両手がギュッと包み込んだ。

「え、えっと、ユウキ?」
「大丈夫だよ!ボクがアスナの事守るからね!」
「ゆ、ユウキ~!ありがとう!!!」
感極まったように互いの手を掴んで見つめ合う二人の妖精、互いに美少女であるため見目麗しい姿なのだが、いかんせん背景が灼熱の砂漠ではそれもシュールさを増して見える。

「とりあえず、近くまで行ってみよっか!」
「はい!あの、皆さん大丈夫ですか!?」
「あぁ、了解」
「私も大丈夫……だけど……」
「おーう、お前ら二人の世界に入ってんじゃねぇよ、戻ってこーい」
小柄なケットシーを戦闘に羽ばたいていく七つの人影が遠ざかっていくのを、少年NPCのガラス球のような瞳が、無機質に見つめていた。

────

「意外に、すんなり入れましたね……」
ピラミッドの丁度真ん中あたりに口を開けた入り口をくぐったところで、シリカが意外そうに言った。
シリカがNPCから受け取ったダガーを携えて砂嵐に近づくと、まるで霧が晴れるかのように、砂嵐は跡形もなく消えさり、ピラミッド付近の飛行が行えるようになったのだ。そこからは特にエネミーが出現するでもなく、すぐに入り口を見つけて侵入することが出来た。入り口をくぐる前にひと悶着あるかと予想していたメンバーには、少々拍子抜けだ。

「あぁ、でも中は流石に涼しいな」
「だねー、快適快適ぃ」
アイリがくるくるとスピンしつつ歩いていくのを見て、石材で囲まれ、松明のみで照らされた薄暗い遺跡の中は外の灼熱が嘘のように、うっすら肌寒いほどのひんやりとした空気が漂っている。長く砂嵐に晒されてはいても、入り口から少し奥に行けば砂は積もっておらず、いっそここが砂漠である事を忘れてしまいそうなほどである。

「いやぁ、案外涼しいのは他の理由があるかも知んねぇぞ、熱い中出てくるより、涼しい方が出やすいんだろ“死霊”とやらも」
「もう、リョウ!露骨に話題に出さないでよ!」
「おめーが気にしなきゃいいんだろ~」
「もう……ダメだよ、リョウ、ホントに怖い人は怖いんだから」
ケラケラと笑いながら、アスナをからかうリョウに、サチが困ったようにため息をつく。それを聞いて、ユウキが少し意外そうに問い返した。

「サチは、お化け怖くないの?」
「え?ううん、怖いよ?でも、こう、私は幽霊そのものより、「わーっ!」ってくる奴だと、すごく怖い、かな」
「わーっ」
「わーっ……」
「……なんか可愛いね?わーっ」
「うん、サチが言うと可愛い」
「え、えぇ……!?」
女性陣三人から全く無関係な方向のほめ言葉を言われて、サチの顔がみるみると紅くなって行く。その様子を見て、メンバーにほんわかとした空気が流れた。

「そう言うユウキはどうなんだ。アストラルは怖くねぇみたいだが……」
「うん!ボクお化けは好きだよ!ゾンビとか、虫とかも結構好き!」
「怖いものなしかぁ、そんな気はしてたけどなぁ」
「そう言うとこ、男勝りなわけか……偶に野郎ばっかでクエとか行くが、今度お前さんも一緒行くか」
「え、ホント!?」
「駄目―!」
とてとてとリョウとキリトに駆け寄ろうとしたユウキを、アスナが後ろから抱きかかえて制止する。

「わっ!?」
「だまされたら駄目だよユウキ、絶対変な遊びに連れていかれるから!」
「だますとは人聞きわりぃなぁ」
「そうだぞアスナ、俺達はただ、ちょっと一緒に中立域の新たなグルメを探しに行こうとしてただけで」
肩をすくめたキリトに、リョウが吹き出す。

「こないだのビーンズワームとかなぁ?」
「クリー虫も、なれればクリーミーで割と美味かったよ」
「虫を食べたって話じゃない!」
「んじゃトリプルメンソールミントの煙棒にするか?キクぜぇあれは」
「レコン滅茶苦茶むせてたなぁ」
「「へっへっへ……」」
薄暗闇の奥で怪しい笑みを浮かべる男性陣に、アスナはユウキを抱えたまま後ずさる。

「分かった?危ない人に近寄ったらダメです」
「私も止めた方が良いと思います……」
「うーん、分かった」
アスナとシリカの言葉に流石に身の危険を感じたのか、やや残念そうにユウキは頷く。が……

「……私ちょっと興味あるなぁ」
「アイリ!!?」
もう一人の男勝りは、何やら好奇心を刺激されたようだった。

────

「……待った、奥に広場だ」
「お、やっと何かしらお出ましって訳か?」
「かもな……注意していこう、サチ、索敵できるか?」
「うん」
少しの詠唱の後、サチの魔法が発動する、が、反応はない。

「ごめんね、私の魔法、生体感知だから……」
「いや、そうだよな……さて、シリカ、どうする?」
「わ、私ですか?」
突然話を振られた事に驚いたのか、シリカが目を白黒させる。しかし、アイリは納得したように手を叩いた。

「そっか、今回はシリカちゃんのクエストだもんね」
「そう言う事、だからリーダーは、シリカが良いと思うんだ」
「え、えぇっ!?わ、私がリョウさんやキリトさん達に指示を、出すんですか……?」
「気負うな気負うな、何も一から十まで指示を出せってんじゃねぇんだ。自分で考えるべきときゃ、考えて動くさ」
肩をすくめたリョウを見て、アスナが微笑みながら言葉を受け取る。

「大丈夫だよ、シリカちゃん、リズも言ってたよ?時々パーティのメンバーが、シリカのおかげで前に進むときがあるって」
「……!わ、分かりました!」
胸の前でグッと手を合わせて、シリカは頷く。高難度と噂されているこのダンジョンにおける指揮を任されることは、このメンバーの中ではリーダー経験の薄いシリカには不安ではあったが、その難易度にこのメンバーが一緒に挑戦してくれているのは、シリカの都合によるものだ。ならば、先導はシリカが行うべきだし、リズやアスナ達がそう言ってくれるのなら、その信頼にこたえたいとも思う。それに、無責任とは思うけれど、このメンバーなら自分がミスをしたとしても、少々のそれならばカバーしてくれる。そう言う確信もあった。

「キリトさん、ユウキさん、先頭をお願いします」
「あぁ、了解!」
「オッケー!」
「リョウさんは中衛と遊撃、アイリさんは後方を警戒しながら、敵の沸出(ポップ)によっては前へ」
「あいよ」
「はいはーい!」
「私は遊撃、アスナさんとサチさんは、基本的に後衛に徹してください」
「うんっ!」
「はい」
全員のポジションを改めて確認し、各員が頷くのを確認して、シリカは通路の先を見て少しだけ考える。

「広場に入ったら少し散会しつつ前進します。周りを警戒しつつ、前衛を前に進んでください」
「あぁ。他にも何かあるか?」
キリトに聞かれて、シリカは少し思案を巡らせるように顔を伏せると……ややあって、気が付いたように言った。

「分断……」
「え?」
「あの、もし何かあって、メンバーが分断されてしまった時なんですけど……、ダンジョンマップで、ダンジョンの形状は見れるので、ひとまず、中心を目指して合流する、って、事にしておきませんか」
「ほぉ……了解だ」
なんとも限定的な状況に対する指示に、メンバーは少し意外そうな顔をしたが、何しろ初見のダンジョンだ。慎重になってなりすぎるということは無い。全員が快く了承し、シリカたちは前進を再開した。

────

「何も、居ないな」
「うん」
「油断すんなよ~」
広場は、幅5mほどの太い通路ホールだった。所々に障害物や柱があり、綺麗とは言えないが、奥までの見通しは悪くない。高い天井の下を、侵入したメンバーは慎重に進行しつつ、周囲を確認していく。周囲のよくわからない石の突起や段差、柱には謎の意匠や文字が刻まれており、薄暗い空気の中で不気味な気配を醸し出している。

「これ、ヒエログリフ?」
「やっぱり、エジプトに関係ある場所なのかな……?」
「うーん……」
後方についた三人が、周囲のそれを興味深げに観察していると、不意に前衛に立っていた二人が声を上げた。

「ん……奥が見えた、行き止まりだ」
「ホントだ、シリカー!通路が……」
そうユウキが声を上げた……その時だった。
重々しい音を立てて、地面が揺れた。

「っ……!」
「!停止して!皆さん、気を付けてください!」
全体が足を止め、周囲を観察する。揺れと共に、周囲の壁や天井から砂煙が降り始めていた。

「オイでなすったか……?」
「後衛の皆さん!大丈夫ですか!?」
「うん!シリk……!?」
恐らくは注意を変えそうとしたのだろうアスナの声が、不意に途切れた。

「アスナ、どうし、ぅおっ!?」
「ひゃっ!?」
「なっ!?」
「わぁぁっ!!?」
次の瞬間、それまで揺れと共に響いていた重低音は、周囲そこら中から鳴り響く轟音になり、それと共に、石臼を回すような石材が擦れることが響く。そして次の瞬間、地面は揺れどころか、「動き始めた」。

「なんだっ!?」
「おいおいおい!?」
「きゃあっ!?」
足を踏ん張る事も、地面にしがみつくことも到底できないようなスピードで、周囲に会った突起や柱、天井、地面が、右へ左へ上へ下へと出鱈目に動きまわり、まるでミキサーか回転するボールの中にでもいるかのように、それらの動きにリョウたちは振り回される。

「くそっ!?」
「キリト君!」
「あぶなっ!?」
「み、みなさ、ひゃぁっ!?」
「アスナ!?」
「チッ!?」
体制が保てないまま、仲間達の声がそこいらじゅうから響き渡る。次から次へと立て続けに変化していく地形の向こうで視界が大混乱を起こし、既に彼らがどこに居るのかろくに確認することもできない。そんな中……

「きゃぁぁあっ!?」
「!んなろっ!」
視界の端に、体制を完全に崩したシリカが移り、何とか近場に会った石材を足場に体を跳ね上げて彼女に向けてリョウは飛び込む。彼女の身体を掴んだ、と思った途端に、周囲に渦巻いていた轟音が止んだ。
そして……

────

「っと!!」
「ひゃっ!?」
突然周囲の変化が収まり、地面が安定……リョウはシリカを抱えたまま、何とか着地する。

「……シリカ、無事か」
「ぅ……ひゃぁっ!!?り、りり、リョウさん!?何を……」
腕の中で顔を真っ赤にして狼狽する少女に、リョウは緊張感のなさからか微妙に苦笑しながら肩をすくめた。

「お前が頭から落ちるのを阻止してやったんだよ。ほら、立てっか?」
「あ、はい……ありがとうございました……」
脚からゆっくりと下ろしてやると、シリカは少しよろけそうになりながらもなんとか地面に立つ。少し足をしっかり踏ん張るようにして立った彼女は、首をプルプルと振りながら、何とか体にしがみついていたピナを一度撫でて、リョウを見上げる。

「うぅ、でも、一体何が……」
「周りを見てみろ、ようは、こういう事だろうぜ」
「え……?」
彼女がキョロキョロと周囲を見回すと、そこは細い通路のようになっていた。先ほどよりも更に光源は少なくなり、通路には細々と松明の明かりがともるだけ、揺れる火が、二人の影をユラユラと揺らし、不気味な明暗を作っている。
後方には行き止まり、前方には道が続いているがしかし、最大の問題は其処ではない。その場所には「シリカとリョウ」しかいなかったのだ。
つまり、他のメンバーと自分達は……そう気が付いて、シリカは一気に胸の中がざわつくのを感じた。

「そんな……アスナさん!?サチさん!」
「やれやれだな、こりゃ……っ、シリカ、構えろ」
「えっ!?」
突然、リョウが鋭く息を吐き、緊張の度合いが一気に増す。耳を澄ませると、通路の奥から、硬く、乾いたものがすれるような音が響いているのが分かった。それは不規則に鳴り響き、徐々に、徐々に大きくなっていく、大量に響き渡るその聞きなれた音は間違いなく、大量のスケルトンの足音だ。

「来るぜ、取りあえずはこの場を切り抜けなきゃならねぇ、行けるな!?」
「は、はいっ!ピナ!」
「キュクルゥゥッ!!」
二人と一匹が戦闘態勢に入った、直後、ガシャがシャとやかましい音を立てて、スケルトンの軍勢が彼らの元へと押し寄せるのを彼らは視認する。

「ッ……!」
「やれやれ……高難易度つーのは、こういう事かよっ!!」
重々しい風切り音と共に、最初のスケルトンが粉々に砕け散った。
 
 

 
後書き
はい!いかがだったでしょうか!?

と言う訳で、今回のダンジョン最大のギミック、分断機能がお披露目となりました。
無事に分断された一行、この先少しずつ視点を変えたりなんやりしつつ、進めていこうかと思っております。ちなみにモデルになったのは、エイ●アンVSプ●デターで登場したピラミッド擬きだとの事。ただ今回は、流石にエイリ●ンは用意できないのでスケルトンや他の皆様に頑張ってもらうつもりでおります。

さぁ、これで作者たる私は今回のメンバー同士で色々な会話を強制的にむふふ……

次回はその辺りを中心に書いていこうかと思っております。

ではっ! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧