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おぢばにおかえり

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46部分:第八話 はじまってからその二


第八話 はじまってからその二

「負けたの」
「しかも巨人相手に」
「余計に気分が悪くなったわ」
 やっぱり巨人には勝たないと駄目ですよね。あの会長もユニフォームも補強のやり方も大嫌いです。私のいる大教会は清原の地元岸和田にも教会が多いですけれどそれでも巨人は昔から嫌いです。周りも殆どの人がアンチ巨人でお父さんもお母さんもそうです。
「朝から悪い話ね」
「東寮って朝は気持ちよく起きられるんじゃないの?」 
 その娘は不意に笑ってこう言ってきました。
「確か朝は」
「ええ、ハイジの曲よ」
 目覚ましの曲はアルプスの少女の曲なんです。それでいつも起きています。係りの娘が曲を決めるんですけれど殆どの年がこの曲らしいです。
「それで起きてるんだけれど」
「じゃあ目覚めはいいでしょ」
「まあね」
 これは本当です。朝からあの曲だと本当に気持ちがいいです、
「私の兄貴なんてあれよ。六甲おろしで起きるんだから」
「それはまたあれね」
 朝から黒と黄色の縦縞っていうのも。胃もたれになりそうです。
「止めろって言ってるんだけれど。虎だって言って聞かないのよ」
「そんなに阪神が好きなの」
「俺の身体には阪神液が流れてるって言ってるわ」
「阪神液!?」
 また随分聞き慣れない言葉です。けれどもそれが何なのかはすぐにわかりました。阪神って言えばやっぱり。関西にいたら離れられません。
「黒と黄色の液体らしいわ。それが流れてるんだって」
「ふうん。じゃあ弱かった時は大変だったのね」
「いつも荒れていたわよ」
 予想通りでした。
「いつも負けていたから」
「やっぱり」
「そんな兄貴だから。止めないのよね」
「大変ね、そんなお兄さんだと」
「あんたはどうなのよ」
 ここでクラスメイトが私に話を振ってきました。
「私!?」
「見たわよ、ハンカチ」
 くすりと笑いながら私に言ってきました。
「黒と黄色の。阪神のやつよね」
「あちゃ〜〜〜〜」
 思わず声が出てしまいました。本当にこう思いました。
「見てたの」
「偶然だけれどね。ファンなんでしょ」
「そうよ」
 最初からわからないかしらと思いますけれど。
「だから負けたら寂しいし」
「でしょうね。そのハンカチは何処で買ったの?」
「信者さんからの頂きものなの」
 信者の方の一人に凄い熱狂的な方がおられて。天理高校に入る時に頂きました。何時でも阪神も忘れないようにって。
「それでだけれど」
「何か楽しい信者さんね」
「実家神戸だから阪神ファンの人多いのよ」
 これは本当です。そういえばおみちの人で巨人ファンって凄く少ないです。これはそもそも天理教が関西にあって関西に信者さんが多いせいですけれど。
「奈良だってそうよ」
「そうなのよね」
 これも本当です。奈良も阪神ファン多いです。パリーグは地域ごとに分かれますけれどここは確か近鉄の場所だったような。確かそうだった筈です。パリーグ詳しくないんで。
「だから。別におかしいわけないでしょ」
「それでも驚いたわよ」
 また彼女に言いました。
「女の子がスポーツ新聞なんて」
「大阪じゃ競馬新聞よ」
「嘘・・・・・・」
 流石にこれは信じられませんでした。
「本当!?それって」
「大阪を舐めたらいけないわよ」
 ちなみに大阪はおぢばの玄関口と言われています。教祖がそう仰り立教して間もない頃に末娘のこかん様を大阪に行かせたこともあります。
「昔は阪神グッズ専門店が難波にあったし」
「それって凄いわね」
「道頓堀もあるしね」
 優勝したら飛び込むあそこですね。それは知ってます。
「西宮とあそこは阪神ファンの聖地よ。玉造に住んでる選手もいたし」
「詳しいわね」
 話を聞いていて驚きました。そこまで知ってるなんて。
「ファンじゃ当たり前じゃないの?」
「当たり前?」
「そうよ」
 平然とした調子で私に言ってきました。
「これ位は」
「そうかなあ」
「そうだって」
「なあ」
 何か他の皆もやって来て私に言います。どうやら私は阪神ファンといってもまだまだ浅いようです。まさか皆がここまで知っているなんて。
「あんたも阪神ファンならもっと勉強しなさい」
 こうまで言われました。
「わかったわね」
「何かそれって変なような」
「おみちと同じよ」
 何故かここでおみちが出て来ました。ちょっと訳がわかりません。
 
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