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おぢばにおかえり

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43部分:第七話 学校に入ってその三


第七話 学校に入ってその三

「おみちの人を育てるんだから。当たり前じゃない」
「けれど今の後ろの子って」
「まだ合格するかどうかわからないわよ」
 お母さんはにこりと笑って私に言いました。
「それに世の中色々な人がいるじゃない」
「ええ」
 これはわかります。私の家の教会にも本当に色々な人が来ますし。中には白いタキシードで黒いマントを羽織ったとても怪しい人もいます。一回だけ着てその後教会にお巡りさん達が大勢やって来たのを覚えています。何でも自衛隊の基地に巨大ロボットを殴り込ませたとかで。とんでもない人もいるものです。
「八条さんみたいな方もおられるでしょ」
「そうよねえ」
 八条さんは昔大財閥で今は世界的企業の会長さんです。まだ若くてとても奇麗な顔立ちの人です。礼儀正しくて謙虚で時々私の家の教会に参拝に来てくれます。実は私が中学校まで行っていた学校の理事長さんでもあられます。私の住んでいる町も八条町っていいますけれどこの人の家があるから名付けられたそうです。須磨区にあります。
「あんな素晴らしい方もおられるし」
「困った子もいるじゃない」
「人それぞれなのね」
「そういうことよ。それも勉強することね」
 お母さんは言います。
「学校のだけじゃなくて」
「色々と勉強しないといけないのね」
「わかったかしら」
「寮でも。それを勉強するのね」
 私はそう思いました。それを言うと何かこれからのことが余計にわからなくなりました。
「本当に。寮でも一杯色々な人がいるし」
「ふうん」
「それはそれで面白いって思う時がきっとあるわ」
「けれど」
 ここでまた。不安を感じました。
「大丈夫かしら、本当に」
「先輩や同級生の人達のこと?」
「それもあるけれど」
 不安はそれだけじゃないです。
「お父さんともお母さんとも離れて。ずっとだから」
「毎月二十六日には帰るわよ」
 月次祭の時は毎月おぢばに帰っています。それが我が家です。
「その他にも機会があれば」
「会えるのね」
「だから寂しくない筈よ」
「だといいけれど」
 そうは聞いてもやっぱり不安で仕方がありません。これからどうなるかって考えて。それでどうしようもなく不安になっています。
「三年間。それから多分大学の四年間」
 一口に言っても本当に長いです。
「楽しみなさい。いいわね」
「このおぢばを」
「それで。できたら」 
 お母さんは何故かここで私の顔を見て笑いました。
「旦那様を見つけなさい」
「何よ、それ」
 急にそんなことを言われたで思わず笑ってしまいました。何でそこで旦那様が出るのかわかりませんでした。
「旦那様って」
「夫婦揃ってでしょ」
 天理教の基本です。夫婦仲よくです。
「だからよ。千里もいい人が見つかればお母さんも安心なんだけれど」
「安心って。私まだ十五なのに」
 空に吸われる十五の心。石川啄木でしたっけ。
「まだそんなの先よ、ずっと先」
「そうかしら。ひょっとしたら」
 それでもお母さんは私に言います。
「高校で年下の彼氏を見つけて。お母さんみたいに」
「お母さんって年下好きだったの」
「うちの家は代々そうよ」
 実はお母さんの家ではお婆ちゃんも曾お婆ちゃんもおばさん達もどういうわけか皆年下の人と結婚しています。凄いいんねんです。悪いいんねんじゃないですけれど。
「千里も多分ね」
「私の好みって福山さんなんだけれど」
 他には俳優さんだと内藤剛志さんとかアイドルだとトキオの長瀬さんとかスマップの香取さんとか特撮だとオダギリさんとか半田健人とか。そういう人達がタイプです。背の高い人が好きかなあ。
「そういう人は」
「うちの家系は代々小柄だから背の高い人がいいのかしら」
「うっ、そういえば」
 お母さんの家系は女は皆小柄です。これも天理教だからでしょうか。おみちの女の人ってとにかく小さい人が多いような気がします。
「そうかも」
「千里は子供の頃結構大きかったのに」
 お母さんは少し残念な顔になりました。
「やっぱり。これもいんねんかしら」
「小柄のいんねん?」
 おかしないんねんなんですけれど。私も背が低いのは気にしています。けれどそれが遺伝じゃなくていんねんっていうのは何か不思議です。
「変な話ね」
「悪いんねんじゃないけれどね」
「そうだけれど」
 それでも何か腑に落ちません。背が低いのがいんねんっていうのは。
「だから背の高い人に憧れるとか」
「そういえばお母さん日曜の朝はいつも」
「羨ましいわ」
 ここで本当に羨ましがる顔になっていました。
「あのヒロインの女の子も一七〇近いのよね」
「そうらしいわね」
 最近までやっていた仮面ライダー龍騎です。この頃やっていたライダーはそれでした。お父さんと妹達が好きなんで観ていました。
「私の家系なんて一五五越えないのに」
「私は越えると思ったんでしょ」
「それがねえ」
 またふう、と溜息をつくお母さんでした。
「結局小さいままだから」
「何かもう背の話止めない?」
 そろそろ東寮が見えてきました。見れば何か学校の校舎に似た感じです。思ったよりも小さいので少し驚きました。
 
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