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おぢばにおかえり

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4部分:第二話 神殿その一


第二話 神殿その一

                   第二話  神殿
 おぢばの商店街は長いです。けれど一直線なので迷うことはないです。
 雨の時なんかはアーケード街なのでとても楽です。だからここを歩くのは好きです。これで何かと手間のかかる男の子を連れていなければもっといいんですけれど。
「何かこの商店街も慣れてきたね」
「慣れたの」
「俺さ、住んでるとこ結構田舎だしさ」
 新一君は奈良の田舎の方に家があるそうです。そこから通っています。天理高校は全国から集まるので寮があるのですがそれでも奈良県内から通う人も多いんです。全体の半分位がそうじゃないでしょうか。
「こんな長い商店街ってあまり歩かなかったから」
「そうなの」
 何か私にはわからない話です。私の実家は須磨で神戸には長い商店街も多いですから。こうした話は実感がないんです。
「だからさ。慣れるまでに時間がかかったよ」
「私は別にだけれど」
「そういえばあれだよね」
 私の方に顔を向けて言ってきました。
「先輩って子供の頃からずっと天理・・・・・・いやおぢばに帰ってきてたんだよね」
 ここは人間創造の場所である元の場所です。それを『おぢば』と呼びます。人間を創った言うならば故郷ですからここに来ることを『帰る』って言うんです。
「ええ。こどもおぢばがえりとか祭典で」
 こどもおぢばがえりは毎年夏にやるお祭りです。七月の末から十日程します。色々な催しやパレード、花火とかがあってとても楽しいです。祭典は毎月あるものと決まった日に行われるのがあります。それも何時かお話させて頂きますね。
「結構帰ってたけれど」
「で、高校は寮だったし」
「それは貴方も知ってるでしょ」
 また言葉をとんがらせました。嫌な思い出があるんです。
「毎日夜に前まで来てたんだから」
「あれは偶然だって」
「嘘じゃない、そんなの」
 天理高校の寮は幾つかあります。そのうち普通の女の子は東寮という場所に住むことになっています。ちなみに男の子は北寮という場所です。
「大体駅から全然違う場所にしかも夜に」
「だって通学路だから」
「電車通学で!?」
 駅から全然違う場所に毎日来ていたんです。本当に迷惑でした。
「嘘ばっかり。部活も忙しくなかったのに」
「用木コースだったし」
 天理高校は二つのコースがあるんです。普通の教養コースっていうコースと用木っていう天理教のことを深く勉強させてもらうコースと。私は教会の娘ということもあって用木コースでした。ちなみに新一君も何故か用木コースでした。
「勉強もしていたし」
「高校の図書館で?」
「他には大学の図書館とかさ」
 天理大学の図書館は凄く大きいです。蔵書がかなりあります。
「あそこで」
「毎晩夜までしたいたの」
「今でもそうだよ」
 何でも彼優等生らしいです。信じられないですけれど。
「ずっと」
「真面目ね」
「だって暇だし」
 しっかりさっきとは矛盾することを言ってます。けれどそんなの気にしないです、彼は。
「先輩に会うまで」
「ほら、やっぱり嘘だったじゃない」
 わかっていましたけれど。
「何で私なのよ」
「何でかな」
「迷惑していたんだから。止めて欲しかったわよ」
「俺はそうじゃないけれど」
 勝手ですよね。すっごい自分勝手なんです、彼。だから困ってるんです。
「だから別にいいじゃない」
「ふざけないでよ。大体ねえ」
 またキッと睨んで言います。
「私は新一君とは一緒に歩きたくも」
「あっ、着いたよ」
 気付けばもう商店街を出ていました。目の前にすごく大きな和風の建物が見えます。そこが神殿なんです。
「主任先生ここにおられるから」
「わかったわ」
 話を誤魔化されて何か不愉快ですけれどとにかくそっちに考えを移します。
「それで何処におられるの?」
 階段をあがって神殿の構内に入ってお辞儀をします。それから新一君に尋ねます。
「主任先生は」
「さあ」
 すっごい無責任な返事ですよね。本当にこんなのです、いつもいつも。
「何処かな」
「何処かなってちょっと」
 また怒ってしまいました。だって呼んでるっていうから来たのに。
「何処であったのよ」
「西の礼拝場」
 神殿は四つの礼拝場があります。東西南北です。他には『おやさま』と御呼びする教祖であられる中山みき様がおられる教祖殿と『みたまさま』、祖霊が祭られている祖霊殿があります。渡り廊下にお庭もあって本当に広い場所なんです。
「そこの入り口だったけれど」
「おられる?」
「いや、全然」
 新一君は目をこらして見ます。彼は目はいいんです。目は。
「おられないみたい」
「何処か移られたのかしら」
「先輩わかる?」
「わかるわけないでしょ」
 何で私に聞くんでしょう。本当にわかりません。
「私が聞きたいのに」
「いや、何か勘で」
「勘ってちょっと」
 このいい加減さが。何処までこんなのなんでしょう、この子は。
「そんなのでわかるわけないでしょ」
「だって先輩ショートヘアだし」
「それがどう関係あるのよ」
 かなりわからなくなってきました。彼の言っていることが。
「いやさ、髪がアンテナになって」
「それってあれでしょ」
 はい、やっと言いたいことがわかりました。漫画の話だったんですね。
「ゲゲゲの鬼太郎よね」
「うん。わかる?」
「わからないわよ」
 わかったら凄いです。人間じゃないですよね。
「そんな能力ないし」
「じゃあ何処におられるんだろ」
「とにかくここにおられるのよね」
 それは念を押して聞きます。
「じゃあ携帯でメール送って」
「うん・・・・・・ってほら」
 急に音楽が鳴りました。この曲は。

 
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