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おぢばにおかえり

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39部分:第六話 レポートその八


第六話 レポートその八

「何よ」
「先輩って宿題とかはいつも真面目にしているよね」
「まあそれはね」
 昔からです。子供の頃から宿題を忘れたことはないです。
「いつもメモしてるし」
「真面目だね」
「やっぱりね。色々あるから」
 そう新一君に答えます。
「お父さんとお母さんに教えてもらったのよ。何かあったらメモしておきなさいって」
「ふうん」
「家が教会だから。色々あるでしょ」
 こうも言います。うちの家は何かと信者さんが出入りするのでどなたが何を御願いしたりしているのかメモを取っておかないといけないんです。
「だからよ」
「そういうことだったんだ」
「それに高校でもね」
 高校時代のことも言います。
「メモしておくと役に立ったし」
「その宿題とか部活だよね」
「そういうこと。わかったかしら」
「うん、まあ」
 新一君は私の言葉に頷きました。
「一応はね」
「何か少し不安な返事ね」
 その返事を聞いて言いました。一応ってどういうことなんでしょうか。
「大丈夫なの、本当に」
「何か本当にお姉さんみたいだよ、それじゃあ」
「そうさせてるのは誰よ」
 また新一君に言い返します。
「手間がかかるんだから。妹達だってちゃんとメモは取ってるわよ」
「僕には必要ないしね」
 急にこんなことを言ってきました。
「メモなんて」
「それはまたどうして?」
「頭に全部入るから」
 自分の頭を指差して笑います。
「それもすぐに」
「嘘でしょ」
 毎度毎度のいい加減差を見ていたらとてもそうは思えません。
「それって」
「まあたまに忘れることもあるけれど」
「しょっちゅうでしょ」
 少なくとも私にはそう思えます。だからいい加減なんです。
「それって」
「まあそれに先輩がいてくれるし」
「私が?」
「そう。代わりに覚えておいてくれている人が」
 私の方を見て笑って言ってきます。
「だから安心しているんだ」
「そんなことするつもりないし」
 冗談じゃありません。だからどうしてそんな考えができるのか。凄く不思議です。
「大体ね。他人をあてにしないの」
「助け合い助け合い」
 またおみちの言葉で切り返してきます。
「そうじゃない。だからさ」
「それも自分で努力してのこそよ」
 それを全然しようとしないんですから。だから困るんです。
「それ。わかってるのかしら」
「勿論」
 その癖返事はいつもこうで。根拠もないのに。
「わかってるって、それは」
「わかっていたら自分でしなさい」
「あれ、放任主義」
「違うわよ」
 そもそも私って他の人、妹達にはあれこれ言わないんですけれど。どういうわけか新一君に対しては全然違うようになってしまっています。
「新一君があんまりにもだらしないからよ」
「何か僕って評判悪いんだ」
「少なくとも私から見ればね」
 こう言い返しました。手間のかかる子です。
 
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