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天体の観測者 - 凍結 -

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無限に煌めく宇宙

「皆さん、準備は整いましたね?」

 此処はリアス・グレモリーが所有する敷地、とある山の山頂である。
  
 天候は良好であり、太陽光が眩しいまでに輝いている。

 空は清々しいまでの快晴。
 まるでリアス達の旅立ちを祝うが如くの天候だ。

「ええ、整っているわ。」

 朱乃達を代表して彼女達の主であるリアスが準備が整った旨をウィスへと代弁する。
 
 リアス達は一人一人が大きなリュックを準備し、各自が思い思いの私服に身を包んでいた。
 女性陣は普段の制服姿とは異なり、見目麗しい私服でその魅惑的な肢体を包んでいる。
 男性陣も非常にラフな服装だ。

 各自、10日間の修行期間に憂いがないようにリュックを一杯に膨らませていた。
 女性陣が特に男性陣と比べ荷物の量が多く、リュックをぱんぱんにさせるほど荷物を沢山詰め込んでいる。

 その巨大な荷物を担いでいるのは一誠と木場の2人であるが。
 リアス達はかなりイイ性格をしているようだ。

 これら全ては言わずもがなこれから行われる修行に対する準備である。

 本来ならば学生であるリアス達が10日間も学校を休むことなどできない、
 だがそこは流石は学園と密接な関係を築いているリアス・グレモリー。

 学校側と交渉し、既に10日間の休学を勝ち取っていた。
 言わずもがなズル休みである。

 背後を見ればグレモリー家が所有する立派な別荘がそびえ立っている。
 ウィスに修行を断られていれば此処が彼らの修行の地になっていたことだろう。

 見ればウィスの姿も平時の物とは変化していた。

 右手には奇抜的なデザインが施された杖を有し、服装は魔導士を連想させるダークカラーのローブ姿。

 首回りには大きな水色のリングを下げ、杖を有していない左手は腰へと回している。
 よく見ればウィスの体は僅かに地面から浮き上がっていた。

 これがウィス本来の姿。
 その佇まいに隙は無く、洗練されたものだ。

 リアス達は超常とした雰囲気を醸し出すウィスの存在に圧倒され、目が離せない。
 ただ一人朱乃だけは自身の幼き頃の過去の記憶を回顧し、ウィスのその姿を目に焼き付けていた。

 ウィスの姿は幼き頃に出逢った当時の姿のまま。
 やはりウィスは年を取らず、悠久とした時を生きているのだろうか。

 朱乃は釈然とした気持ちに悩まされながらウィスを見詰めるのであった。










「では皆さん、私の体に掴まってください。これから飛び立ちますので。」

 ウィスはリアス達に背を向け、杖を握りしめる。

「えっと、肩でいいのかしら……?」

 リアスは躊躇い気味にウィスへと尋ねる。

「そうですね、肩で結構ですよ。勿論、私の肩に手を置いた人の肩に手を乗せて頂いても構いません。」

 ウィスの指示に従いリアスが率先しウィスの右肩に手を置く。
 それに続く形でアーシアがリアスの肩へと手を置き、続けて一誠がそんなアーシアの肩に手を置いた。

 そして木場は一誠の後ろ、小猫はウィスの左肩である。
 見れば朱乃は誰よりも先にウィスの左腕に腕を回していた。

 流石である。
 彼女に抜かりなどなかった。

 リアス達が全員自分に掴まったのを背中越しに確認したウィスは杖を宙へと掲げる。

「それでは参りましょうか?」

 ウィスは杖を地面へと軽く打ち鳴らす。
 
 途端、眩いまでの白銀の光が周囲に迸った。
 
 その光はウィスたちの周囲を円を描くように循環し、包み込み、その輝きを強く増していく。
 白銀の光は強く迸り、幾度も循環し、周囲を幻想的に照らし出す。
 
 やがてその白銀の光は即座にリアス達を包み込み、途轍もない速度で天へと昇っていった。

 そして天へと昇る最中その光は突如消え失せる。
 ウィス達の姿は既になく、先程までの輝きが嘘のようにその場には閑散とした光景が広がっていた。

 リアス達を連れたウィスは瞬く間に宙へと飛翔し、雲を突き抜け、大気圏を突破し、地球という惑星を飛び立っていった。







▽△▽△▽△▽△




 


「皆さん、無事地球を飛び立ちましたよ?」

 無事地球を飛び立ったウィス達。

 リアス達は今や宇宙空間にいた。

 見渡す限りに広がる星々の煌めき。
 リアス達の眼前には言葉では表すことなどできない宇宙の神秘の輝きが広がっていた。

 今やリアス達はウィスの導きの元物凄い速度で宇宙空間を移動している。
 リアス達の故郷である地球は遥か彼方であり、自分達の目的地は未だその姿を現すことはない。

 白銀の光を纏い、宇宙空間を飛翔するリアス達。
 ウィス達は無限に存在する惑星と星々の間を突き抜け、駆け巡り、移動していた。

 何という爽快感と開放感。
 正に陳腐な表現では言い表せない神秘的な光景が目の前に広がっていた。

「うおおぉぉ、すげェ。」
「綺麗……。」
「はわわゎゎ、凄いですぅ……。」
「これは驚いたね……。」
「凄い……。」

 一瞬の瞬きも許されない程に幻想的な光景にリアス達は言葉が出てこない。
 一誠やアーシアの2人は感動の余りはしゃいでいる。

「皆さん、感動するのは構いませんが私から手を離してはいけませんよ?手を離した途端宇宙の藻屑になってしまいますからね。」

「うええぇぇえ──!?」
「はわわゎゎっ!」
「……そういうことは早めに言ってください、ウィス。」

 一誠とアーシアの2人は慌てふためく。
 小猫はジトっとした目でウィスを見詰め、諫言する。

「ほっほっほ、すみません。皆さんの感動の邪魔をしてはいけないと思いまして。」

 屈託のない笑みを浮かべながらウィスは返答する。
 実に笑えない話だ。

「でも本当に綺麗ね、宇宙は……。」
「宇宙は壮大で無限に広がっていますからね。自身の存在が如何に短小であるかを強く実感させられます。普段抱えている悩みや苦悩も同様です。」
「ウィス……。」
「リアスが今抱えている悩みを卑下するつもりはありませんが少しは視野を広げてはいかがでしょう。」
「……。」
「リアスには頼りになる仲間もいるのですから。自身が抱えている悩みや苦悩を打ち明けることも時には大切ですよ。」

 悩まし気な表情を浮かべるリアスを優しく、そして悟らせるようにウィスは話し掛ける。

「私の仲間……。」
「ええ、そうです。」

 再度頷くウィス。

「そうですよ、部長!」
「ウィスの言う通りですわ、リアス。」
「えっと、困ったことがあれば私達に遠慮なく言ってください……!」
「僕はリアス部長の騎士として何時でも貴方の力になりますよ。」
「リアス部長はいつも一人で抱え込み過ぎです……。」

 朱乃達が落ち込むリアスを口々に励ます。
 
「皆……。」

 仲間からの励ましの言葉を受け、リアスは徐々に落ち着きを取り戻し始める。
 リアスは本当に主想いの良い眷属を持ったものである。  

「気持ちの整理が付いたようですね?それでは降り立ちますよ。」

 そんな中遂にウィス達は目的地へと辿り着いた。







▽△▽△▽△▽△







 天を貫くが如く高くそびえ立つ大樹。
 大樹の下には四角錐と思しき形のこの星の基軸となる結晶の如き物体が逆さまに浮遊している。
 
 その大樹を中心に周囲には大小様々な木々が蔓延っていた。
 大樹には届かないがこれまた高くそびえ立つ木々の姿も。
 中には成長半ばで途中で折れている樹木も見受けられる。

 惑星の周囲には大小様々な惑星が存在し、空からは太陽光が降り注ぐ。
 この惑星の周囲には空模様の様な雲模様が存在し、それを彩る様に多数の色とりどりの惑星が存在していた。
 その雲の上から太陽光が一際強くその光を大樹へと落としている。
 そう、まるで天からの天啓が如く。

 大気には地球と同じように酸素が充足し、問題なく呼吸を行うことができる。
 惑星内部から空を見上げれば地球とは異なる空模様が広がっている。
 頭上に広がるは青空ではなく、ピンク色の空だ。
 また周囲を見渡せば湖や草花、宇宙産と思しき珍妙な生物と植物の姿も確認することができた。
 蜃気楼が如く現象も。

 だが近代的な建物や乗り物も存在し、地球との類似点も存在している。

「此処がウィスの住処……。」

 朱乃は周囲を見渡し感慨深けにボソッと呟く。
 知らなかった、こんな場所が宇宙に存在していたなんて。

 神秘的、幻想的、近代的、宇宙的、様々な要素を内包した摩訶不思議な惑星だ。
 此処がウィスの住処なのだと自覚し朱乃は興味深けに周囲を見渡す。

 見れば自分以外の皆も同様に驚愕し、興味深けに辺りを遠めに見ていた。

「ほっほっほ、少し星ごとリニューアルさせて頂いたんですよ。」

 何でもないと言わんばかりに朗らかな笑みを浮かべながら簡潔にウィスはそう述べる。

「星そのものを創り変えたということですか……?」
「ええ、まあそういうことになりますね。」

 アーシアが疑問と驚愕の気持ちを内包した声をウィスへと投げ掛ける。
 彼女の疑問は最もだ。 

 そう、家をリニューアルではなく星そのものをリニューアルなのだから。
 規格外の権化と呼ぶに相応しい所業であろう。

 此処はウィスの心象風景に強く残っている光景を表面化させたものである。
 本来なら自分はとある神の付き人としてこの場所に住んでいたはずだが如何せん世界戦が異なるためその神は存在していない。

 最初はそれはもう大変であった。
 初めの頃は当然何も存在せず、一から限りなく自身の心象風景に近い物へと創り変えていったのだから。

 だがウィス本人は此処を創ることに全く躊躇することなどなかった。
 この場所こそが自分という存在を強く実感できる場所の一つだからである。

『……。』

 リアス達は皆一様に言葉が出てこない。
 それはそうだ。ウィスが述べていることが真実ならばそれは正に神の御業と呼ぶに相応しい行為なのだから。

 宇宙空間を自由自在に移動する術を有し、天地創造に相応しい力で惑星を創り変えたウィス。
 文字通り隔絶した力を有するウィスとは一体何者だろうか。
 リアス達は誰もがウィスという存在を改めて強く認識するのと同時に純粋な疑問の気持ちが心を支配した。

 そんなリアス達の耳に澄んだ女性達の声が。







『お帰りなさいませ、ウィス様。』

 敬意を込め、深々と礼をするメイド達。
 彼女達は皆一様にメイド服をその身に着込み、洗練された所作で己の主人であるウィスへと深々と頭を下げていた。

「皆さん、お勤めご苦労様です。」

 リアス達を背後に引き連れ、ウィスは彼女達を労わる。

「ウィス様、後ろの方々は……?」
「彼女達は私の、まあ弟子と言ったところでしょうか。これから10日間の間私が彼女達の面倒を見ます。ですので貴方方は平時の時と変わらず行動してください。」 
「承りました。」

 恭しくメイドの一人がウィスへと礼を尽くす。

「ああそれと……、貴方方からリクエストして頂いた物を丁度地球から持ってきましたよ。」

 ウィスは杖を地面へと打ち鳴らす。
 地面に杖が打ち鳴らされた瞬間、メイド達の目の前に淡い光が現れた。

 それらは全てウィスが地球から取り寄せた土産の数々であり、カートの上に全てが箱詰めされた状態にて綺麗に置かれている。

「ありがとうございます、ウィス様!」
「いえいえ、構いません。後で皆さんで仲良く食してください。」

 再びウィスへと礼を尽くした彼女は後ろのメイド達を引き連れ、その場からいそいそと去っていった。





「流石ウィス様!行動がはやい!」
「きた!お土産きた!」
「土産きた!」
「これで勝つる!」

 



「あのウィス、彼女達は一体……?」
「彼女達は人外達に迫害された人達です。元はぐれ悪魔や神器遣いであることが影響して居場所を失われた方々ですね。勿論原因はそれだけではありませんが。」
「それじゃあ……っ。」
「ええ、彼女達は文字通り人生を無茶苦茶にされたんですよ。外ならぬ人外達の手によって。」
「……。」
「私は彼女達と相談した上で地球から此処に移住してもらったんです。此処ならば人外達の魔の手も伸びませんからね。」

 まあ、移住と呼ぶにはかなり遠い引っ越しであるが。
 言うまでもなくこの星にいるのは彼女だけではない。
 勿論、男性も多数存在している。
 
「私達悪魔のせいで……。」
「おっと、罪悪感を感じるのはお門違いですよ、リアス。」

 罪悪感を感じ表情を暗くするリアスの唇をウィスが人差し指で閉じさせる。

「リアスのその悪魔らしくない誰かを思いやる心は美徳ですが、時にそれは出過ぎた行為と言うものです。」
 
 ウィスは顔を近付け、その曇りない紅き瞳でリアスを見据えながら優し気に諭す。
 リアスは思わずうっすらと頬を赤く染める。

「確かにリアス達悪魔のせいで彼女達が苦しめられたのは事実です。ですがそれは悪魔という種族が生み出した世界のシステムそのものが原因です。決してリアスだけのせいではありません。一概にリアスが無関係とは言えませんが手を下したのはあくまで一部の屑の悪魔達ですからね。」

 ウィスは落ち込むリアスを慰める。

「確かにそうだけど……。」
「今はそのことを考えるよりもリアスは10日後に開かれるレーティングゲームのことを考えることが先決です。」

 ウィスはリアスの唇から手を離し、軽くこつんと彼女の額を小突く。 

「それに安心してください。彼女達の人生を滅茶苦茶にした悪魔達には軒並み塵になっていただきましたから。」

 そう、奴らは軒並み粛清済みである。

「さてそれでは進みますよ。」

 ウィスは再び杖を地面に打ち鳴らし、白銀の光に導かれ大樹の根本へと飛んでいった。







「おやおや、また伸びていますね。」

 大樹の傍には見渡す限りの草原が広がっていた。
 宙に浮遊しながらウィスは草原を見渡している。

「先ずは掃除を行いましょうか。」

 ウィスは人差し指と中指を揃えて天へと突き出した。

 途端、草原全体が爆音に包まれる。
 眩いまでの光と共にウィス達がいる場所を除いた周囲の草原一体が文字通り更地と化した。
 不可視の力がウィスを中心に周囲へと波及し、草原を軒並み消し飛ばしたのである。

「うおおぉぉお……。」
「はわわゎゎわ……っ。」

 ウィスはもう少し自重したほうがいいと思われる。
 一誠と木場の2人は素直に驚嘆しているが、アーシアに至っては涙目である。

 純粋なアーシアには少し刺激が強すぎたようだ。

「"また"って言ってましたがウィスは定期的にこの草原を刈っているのですか?」

 今なおウィスの左腕に抱き着きながら朱乃はウィスへと質問する。

「一概に正確な成長速度をお伝えすることはできませんが……。そうですね、この草原は翌日には再び同じ長さに成長しているでしょう。」

 絶句、何という成長速度であろうか。
 というかそれは本当に純粋な植物なのか。

「次はあの大樹の中に案内しましょう。」

 驚きの声を今なお上げているリアス達の声を背後に聞きながら、ウィスは再び杖を打ち鳴らした。







「さて、此処がリアス達の寝床です。」

 周囲に浮遊するは岩石の山。
 その岩石の上には数個の簡易式の寝台がぽつんと置かれている。
 寝台の上にははシーツと毛布のみが敷かれ、正に質素と言う言葉を体現していた。

 一際目を引くのはこの寝室を占拠する大蛇と思しき巨大な亡骸。
 大蛇の口内には周囲のモノとは一線を引いたこれまた巨大な砂時計の姿が確認できる。

 周囲にはそれと同じ様にサイズは小さいが同様の砂時計が寝室全体に多数浮遊していた。
 その砂時計は何か白銀の光によって球状に包み込まれている。
 とても神秘的であるのと同時に異様な光景である

 寝台の位置もかなり地面から離れ、岩石の上にリアス達の人数分だけ置かれていた。

「酷く、殺風景……。」
「ウィスも此処で寝ているのですか?」
「あのウィスさん、周囲にある大きな砂時計は何なんですか?」
「でけぇ……。」

 寝室と呼ぶには壮大過ぎる光景に言葉が出てこないリアス達。
 リアス達は口々に個人個人の思いを口にする。

 ウィスと共に地球を飛び立って以降何度"凄い"を連発したことだろうか。
 驚嘆と驚愕が止まる所を知らない。

「皆さん、そんなに矢継ぎ早に質問しないでください。順にお答えしますから。」

 矢継ぎ早に質問するリアス達を宥めるためにウィスは静かに人差し指を掲げる。

「先ずは朱乃。私は睡眠を必要とはしませんから此処には普段は入り浸ってはいませんね。ですからこの10日間の間は此処が皆さんの寝室となります。」

 普通の寝室も用意されているが、修行期間中はここがリアス達の寝室だ。

「次にアーシアさん。周囲に浮遊している大きな砂時計ですが、それは(時限式爆発)目覚まし時計です。私がリアス達の修行時間を吟味し、目覚ましの時間を設定しておきます。」

 起床時間は6時でいいだろう。

「最後に伝えておきますが此処にいる間は如何なる時でも修行の一環ということをお忘れなく。一瞬でも気を抜いてはいけませんよ?」

 最後にウィスは言外の意味を込めた言葉を発する。
 ウィスの言葉の真意に気付いたのはリアスと朱乃、木場の3人。
 一誠とアーシアの2人は目の前の光景に圧倒され、ウィスの言葉には気付いていないようだ。

「さて、次はいよいよ修行に取り掛かりますよ。では移動しましょう。」

 ウィスは再び杖を地面に打ち鳴らした。







「先ずは修行を行うための空間を創りましょうか。」

 ウィス達が最後に辿り着いたのは先程の草原。
 今では更地と化した大地をリアス達と共に踏みしめている。

 途端、ウィスの姿がその場から消え失せる。
 否、上空へと高速移動したのだ。

 当然、リアス達にはウィスの姿を捉えることはできなかった。
 騎士の木場も同様である。

 宙へと浮遊したウィスは眼下のリアス達を見下ろしながら杖を宙へと掲げ、円を描く様に軽く振るった。
 大地に線が引かれ、発光する。
 続けてウィスは杖の先端の球体が光を帯びたところを左手の親指と人差し指、中指をかざした。

 次の瞬間、リアス達の周囲を囲む様に膨大なエネルギーによって創り出された結界と思しき壁が半円の形で現れる。

 その透明な壁は瞬く間にリアス達を包み込み、周囲の空間と隔絶した空間を創り出した。

「次は修行を行うための武舞台の創作ですね。」

 神と呼ぶに相応しい超常の力を振るうウィスに対して言葉を失うしかないリアス達。
 そんな呆然とするリアス達に対してウィスが杖をかざしたことでウィスのエネルギーが彼女達を包み込み、宙へと浮遊させた。

 驚きを隠せないリアス達を視界に収めながらウィスは眼下の地面にまたしても杖を振るう。
 ウィスは正方形を描く様に杖を動かし、"武舞台"を形成させていく。

 途端、ウィスが杖を振るった眼下の箇所から次々に岩石と思しき素材で創り出された"武舞台"が創り出されていった。

 升目が刻まれ、岩石が着々と積み上げられていく。

「広さはこんなものでしょう。大きさは約50メートル四方と言ったところでしょうか。」

 最早何でもありなウィスである。
 リアス達は既にウィスに対して考えることを止めた。

 だがこれで全ての準備が整った。
 ウィスは今なお呆然とするリアス達に向き直り、その紅き瞳で見据えた。

「……さて、それでは修行を始めましょうか?」 



─こうしてウィスの指導の元リアス達の修行が始まった─
 
 

 
後書き
リアス達の修行の始まり、始まりー!

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