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転生とらぶる

作者:青竹
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番外編070話 if ゲート編 06話

 炎龍をテイムしたというのは、当然のように自衛隊の面々にも知られるようになった。
 いやまぁ、伊丹達と行動を共にしているんだから、それは当然だろうが。
 ともあれ、エルフ達は炎龍を従えた俺を信仰するようになったのは……恐らく俺の知ってる方のテュカが何かしたからなのだろう。
 結果として、この世界でもここにいたエルフ族達は全員が俺の支配下に入る事を望み、シャドウミラーのエルフ率は更に高まる事になった。
 ちなみにエルフの全員がホワイトスターに来るという事で、近くにあった村にその挨拶をしに行ったところ、見覚えのある魔法使い2人が興味深いということでこっちに合流したり、移動の途中で炎龍を従えた俺達の前に、こちらもまた見覚えのあるゴスロリ亜神が現れて一緒に行動するようになったりしたのだが……まぁ、それはともかく。
 現在俺達は自衛隊の車に乗って、イタリカに向かっていた。
 何故このような真似をしているのかといえば、俺達がこの世界に現れる前に自衛隊が帝国軍と戦って倒したワイバーンの鱗を売れば金になると魔法使い……レレイが口にしたのが理由だ。
 別に金に困ってる訳ではなかったのだが、自衛隊の方でこっちの世界で繁栄している街に行って来いと伊丹が任され、特にやる事のない俺が付いてきたという形だ。
 いや、やる気になれば色々とやる事はあるんだが、交渉とかそういうのはエザリア達に任せておいた方がいいしな。
 それに……これが俺の知ってる流れなら……

「あ、やっぱりな」

 遠くの方に見えてきたイタリカから昇っている煙。
 それを見れば、何が起きているのかは大体想像出来た。
 うん、どうやら以前と同じようにやっぱりイタリカは襲撃されてるらしい。
 ……俺達がイタリカに行くのに合わせたように、丁度襲撃されているのは……別にそこまで不思議はない。
 元々イタリカはそれなりに守りやすい作りになっているのだから、襲われました、はい壊滅です。なんて風にはならないのだから。
 つまり、襲われてから実際に陥落するまでは、それなりに期間があるのだろう。
 ピニャ辺りの指揮能力が意外と高いとか、そういうのもあるかもしれないが。

「アルマー代表、もしかして何か知ってるので?」
「多分、お前達に撃退された軍隊の敗残兵が盗賊になったんだろ」

 以前俺達がここと似た世界にいた事があるというのは既に話してるので、エザリアと日本政府は情報についても色々と交渉しているらしい。
 だからこそ、あまりその辺の事情は言えないのだが……まぁ、このくらいはいいだろう。

「盗賊……出来れば、この場から一旦離れたい……と言いたいところなんですけどね」

 そう言いながら、伊丹は遠くの空を見る。
 ……炎龍のポチが空を飛んでいる光景を。
 何でポチなんて名前にしたのか、今更ながら自分でも疑問だ。
 まぁ、覚えやすいというのは間違いのない事実なので、その辺りは今は気にしない方がいいか。

「いや、ここは行った方が面白くなりそうだ。まぁ、伊丹達には無理に一緒に来いとは言わないから、好きにすればいい」

 そう告げると、俺は乗っていた車から降りる。

「ポチ!」
「ガアアアァアァ!」

 俺の言葉に、ポチがこっちに近づいてくる。
 かなり遠くにいたのだが、それでも十分俺の声が聞こえたのだろう。
 もしくは、ポチの事だから魔力で感じているとか……そういう可能性も否定は出来ないが。
 ともあれ、早速やってきたポチの身体に乗ると、俺はそのままイタリカに向かう。
 ……何だか、地上で伊丹が叫んでいるような気がするが、多分気のせいだろう。
 ポチは翼を羽ばたかせると、イタリカまでは見る間に近づいてきた。

「ポチ、あの街……建物の外にいる連中だけを燃やしつくせ。出来るな?」
「ガウ!」

 その名前の通り、犬のような鳴き声を発すると、ポチは地上に向かって降下していく。
 地上ではイタリカを襲っていた盗賊達がこっちに気が付いて何人か逃げようとしていたが……ポチの飛ぶ速度はかなりの速さだ。
 逃げ出した盗賊達を優先して、ファイアブレスを吐いて燃やしつくしていく。
 もっとも、イタリカはかなりの広さを持っている。
 それを包囲している盗賊達全てを焼きつくすような真似は出来ず、かなりの数を逃がしたのは間違いないが……ともあれ、盗賊達の大部分は焼き殺す事に成功した。

「ガアアアアアァァァァ!」

 俺の指示をこなしたよ! と、嬉しそうに鳴き声を上げるポチ。
 うん、それはいいのだが……見た限り、イタリカの住人が皆絶望の表情を浮かべて上空を見上げてしまっているぞ。
 いや、炎龍がこの世界の住人にとってどのような存在なのかを考えれば、不思議ではないのだが。
 さて、俺の記憶通りであれば、恐らくイタリカにはピニャ辺りがいそうだが……どうしたものかな。
 帝国の中ではそれなりに有能な人物であるのは間違いない。
 逆に言えば、ここでピニャを処分してしまえば、もう帝国は日本やシャドウミラーとの間で停戦条約やら降伏条約やらを結ぶ事すら出来なくなる訳だが……
 まぁ、俺としてはこの世界の帝国には恨みがないから、その辺りは因縁のある伊丹達に任せた方がいいのかもしれないが。
 勿論、この世界の帝国が俺やシャドウミラーに向かって攻撃を仕掛けてくれば、話は別だが……さて、その辺りはどうなる事やら、だな。

「あの街の前に降りてくれ」

 ポチにそう言うと、ポチは鳴き声を中断して地上に向かって降りていく。
 当然イタリカの住人達からの視線が強く向けられているのには気が付いていたのだが、生憎と今はこっちから手を出すつもりはない。
 まぁ、向こうから接触してくれば話は別だが、ピニャも炎龍を前にしてすぐにどうこうとする事は出来ないのだろう。
 そうして少しの時間が経ち……やがて、周囲に焦げ臭さが漂ってる中、やがて数台の車がこっちに向かってやって来た。
 車から降りてきた伊丹は、どこか恨めしそうな視線をこっちに向けているのだが……ともあれ、イタリカとの交渉に関しては伊丹に任せるとしよう。

「伊丹達も来たし、行っていいぞ。腹も減っただろうから、動物やモンスターの類を食ってきてもいい。ただ、人間や亜人の類は食べるなよ」
「ギャウウ」

 頭を撫でながらそう言うと、ポチは嬉しそうに鳴き声を上げてそのまま飛び去っていく。

「えっと、それで……これからどうするんですか?」
「どうしたい? 俺としては、別にこのまま帰ってもいいんだが……」
「いやいやいやいや、それは勘弁して下さい! これだけの事をしておきながら、イタリカにいる人達に何も言わずに帰るような真似をすれば、絶対に問題になりますって」
「そうか? やっぱり問題になるか?」
「ええ、はい。ですから……」
「なら、交渉は任せた」
「アルマー代表が……え? 今、その、何と?」

 言葉の途中で、何か奇妙な事を聞いたぞ? と言わんばかりに伊丹が視線を向ける。

「だから、交渉は伊丹に任せた。……何て言うんだったか……そうそう、良きに計らえって奴だな」
「いや、ちょっ!」

 伊丹が俺に何かを言い返そうとするが、それよりも前に事態は動く。
 イタリカの城門……の近くにある、勝手口とでも呼ぶべき場所が開き、数人が姿を現したのだ。
 先頭にいるのは、赤毛の美人。
 言うまでもなく、帝国の皇女たるピニャだ。
 だが、普段は凛とした様子のピニャなのだろうが、今はどこか恐る恐るといった様子を見せている。
 ちょっと前にここで行われた事を考えれば、それも当然なのだろうが。
 ともあれ、ポチに乗っていた俺や亜神のロウリィを畏怖の目で見ながらも、ピニャとの交渉は始まるのだった。……完全に伊丹任せだったが。

「その、貴方達は一体……」

 皇女にしては言葉遣いが妙に丁寧なのは、やはりポチの攻撃をその場で見ているからだろう。
 しかも俺がポチから降りてきているのも見ていただろうし、その頭を撫でているのも見ている。
 この状況で強気な交渉が出来る筈もない。
 もっとも、伊丹の方も別に交渉が得意って訳じゃないし、そもそも今回の一件で盗賊を倒したのはシャドウミラーの代表たる俺だ。
 そうである以上、自衛隊の利益になるような取引をするわけにもいかず……ワイバーンの鱗の類を売るのを邪魔せず、一時的な停戦条約を結ぶという事になるのだった。





「……だった、が。さて。これはどうする?」

 手にした槍の穂先をこちらに突きつけている女だけの騎士団達を見ながら、そう呟く。
 イタリカでの取引は無事に終わり、ピニャの厚意――という名の懇願――により2晩程領主の屋敷で泊まって、それでアルヌスの丘に戻ろうとしている途中で、女だけの騎士団と遭遇した。
 そう言えば、以前もこんな事があったな。
 あの時は何人かを痛めつけてピニャの前に連れて行ったが……今の俺は、別に帝国を恨んでいる訳じゃない。
 さて、どう対応するべきか。
 少し考え、こいつらはピニャの部下なのだから、その辺りは本人に任せればいいだろうと判断する。
 影のゲートに関しては、自衛隊の面々に見せてはいなかったが……まぁ、見られて困るようなものじゃない。
 そういう手段があると知ったところで、自衛隊を含め地球側には魔力を感知するという方法が使えないのだ。
 いやまぁ、実は門世界の地球にも魔法やら魔術やらがありましたとなれば、話は別だが……取りあえず現在のところ、その痕跡は見つけていない。
 Fate世界の魔術協会のように、神秘の秘匿が徹底しているという可能性もあるが、そうなったらそうなったで、別にいい。

「ちょっと伊丹に時間稼ぎをしろと言っておけ」
「え? ちょっ、アルマー代表? ……え?」

 俺の言葉に栗林がいきなり何を? といった視線を向けてくるが、その時には既に俺の姿は影に沈み込み始めていた。
 それを見た栗林の妙な声と唖然とした表情は、可愛らしいと言ってもいい。
 そんな栗林をそのままに、次に影から抜けると、俺の姿は再びイタリカの領主の館にあった。

「ア、アルマー殿? その、一体どこか……影から出て来たように見えたのだが……」

 幸い俺が出たのは、ピニャが仕事をしていた部屋だったらしい。
 そんな部屋にいきなり俺が姿を現したのだから、驚くのは当然だった。
 ハミルトンだったか……ピニャの副官的な役割を果たしている女も、俺に驚愕の視線を向けている。
 ピニャの護衛的な役割を果たしてもいるんだろうから、武器を抜くくらいのは事はしてもいいと思うんだが。
 また、俺が影のゲートから出る前に反応がなかったのも気になる。
 前は俺の魔法に反応してなかったか?
 それとも、単純にそういう対策をしていなかっただけか。
 ともあれ……今はまず用件を済ませよう。

「1つ聞くが、日本やシャドウミラーと帝国は停戦条約を結んだ。それは間違いないな?」
「え? う、うむ。それに間違いはない」
「なら、例えば……例えばの話だが、帝国の皇女直属の騎士団が俺達に手を出してきた場合、それは明らかに帝国側の過失となって、停戦条約は破棄されたと考えてもいいんだな?」

 さーっと。
 擬音を付けるならそんな形でピニャとハミルトンの顔色が青白くなっていく。
 自分の部下たる騎士団を呼び寄せていた事を忘れていたのか、もしくはまさか自分の部下と俺達が遭遇するとは考えなかったのか。
 その場合、何だったか……薔薇騎士団? とかいうあの騎士団の機動力がピニャの想像を上回っていたという事を意味するんだろうが。

「つまり、停戦条約が破棄されたのであれば、それこそ俺がポチ……お前達に分かりやすく言えば、炎龍か。その炎龍を使って帝国の城をこんがりと焼いても、問題はない。違うか?」
「待て! 待ってくれ、アルマー殿!」

 慌てたようにピニャが叫ぶ。
 まぁ、自分のミスで城が焼かれるなんて事になったら、ちょっと洒落にならないから当然だろうが。

「何だ? 俺は今からポチを呼んで帝都を焼け野原にしないといけないから忙しいんだが」
「待って欲しい! その……うちの者が迷惑を掛けたというのは、本当だろうか?」
「そうだな。俺は問題ないが、現在進行形で伊丹を殴ったり蹴ったりしてるぞ」
「……その、それは私の本意ではないのだ。出来れば……」

 そう言ってくるピニャの様子を見て、まぁ、このくらいでいいかと判断する。

「分かった。じゃあお前に直接現場を見て貰うとしよう。……近くに来い。そっちのお前もついでに連れて行ってやるよ」

 そう言い、近づいてきた2人を影のゲートに沈めていく。
 当然影に沈むという経験をした2人の口からは悲鳴が上がったが、それはもういつもの事なので、気にしない。





「この、馬鹿者がっ!」

 叫ぶと、鞘に入ったままの長剣を振るったピニャの一撃が薔薇騎士団の隊長格と思われる2人の女の顔を殴る。
 うん、まぁ、あの2人は縦ロールとお姉様系という典型的な2人だったが、現在は2人共が鼻血を流し、口からも血を流している。
 ……まぁ、代わりに伊丹はもっと殴られているが、その辺りは伊丹が自分で招いた結果なので、自業自得だ。
 反撃するなりなんなりすればいいものを、伊丹が自分で殴られた方がいいと判断して、そういう結果になったのだから。

『アクセル、ちょっと日本まで行って貰う事になるけど、構わない?』

 ふと通信機からエザリアのそんな声が聞こえ……それを聞いたピニャがどこから声が!? 驚きつつ、何だか顔を青ざめさせるのだった。 
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