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おぢばにおかえり

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22部分:第四話 大学の中でその五


第四話 大学の中でその五

「アーケードを!?」
「そっ、商店街のね」
 にこりと笑って言います。確かに悪くないですけれど何か。
「それもちょっと」
 私はその言葉にも首を捻りました。
「もっと他に」
「じゃあ適当に二人で歩いたら?」
 別の友達はこう提案してきました。
「そういうデートもいいわよ」
「そうなの」
 そういうの全然わかりません。だってしたことないですから。
「そうよ。阿波野君はどうなの?」
「僕ですか?」
「そっ、何か考えてるかしら」
「ええと」
 珍しく困った顔を見せていました。滅多に見られない顔です。
「そうだなあ。ここはやっぱり」
「好きにしたら?」
 私は突き放すようにして新一君に言いました。
「変な場所じゃなければ何処でも」
「じゃあホテル」
「・・・・・・はったおすわよ」
 絶対に言うと思っていました。本当に。
「そんなの。旦那様とじゃないと」
「だそうで」
「阿波野君、そこまではまだ先よ」
「はい」
「はいじゃないの」
 またそこで言うんだから。すぐ調子に乗る。
「全く。新一君とだなんて縁起が悪い」
「いや、やっぱり後輩だし」
 全然後輩らしくないですけれどね。それこそ初対面の時から。
「こういうのは教えてもらわないと、俺が」
「一体何を教えるのよっ」
 今の言葉は本気で頭にきました。
「私が新一君に何を」
「だから恋のレッスン」
「冗談じゃないわよ」
 腕を組んでむくれた顔で新一君から顔を背けました。
「水でも被って反省しなさいっ」
「先輩厳しいなあ」
「厳しいも何もね」
 段々りっぷくが増していきます。それが自分でもわかります。
「だから私は結婚するまではキスも何も」
「だから阿波野君チャンスなのよ」
「わかるわよね」
 ここでまた。友達が新一君に言うんです。どっちの味方なのかわかりません。今のところは確実に新一君の味方になっていますけれど。
「唇ゲットしたら勝利は決まりよ」
「後はそのままゴールインだから」
「ゴールインってねえ」
 今の言葉ははっきりと耳に入りました。私耳はいいですから。
「何でそう新一君に色々言うのよ」
「応援してるから」
「そうそう」
 新一君をです。とんでもない話です。
「阿波野君、できれば今日決めなさい」
「未来のお嫁さんよ」
「ですね」
 まあた言うんですから。この子は。
「じゃあ奥さん」
「二度とその言葉使わないで」
 けれど。あまり悪い気はしないです。本当なら今までで一番怒る言葉なんですけれど不思議とそうじゃありませんでした。むしろ受け止められる感じです。どうしてなんでしょう。
「いいわね」
「わっかりました。じゃあ今からデートに」
「仕方ないわね」
 少し溜息を出して応えます。
「行きましょう。ただ」
「ただ?」
「手をつないでも駄目よ」
 最初の段階で釘を刺しました。
「いいわね、そうしたらすぐにはったおすから」
「男は強引によ」
「そしてそのままゴールイン」
「そこ横から言わないっ」
 また友達を注意しました。
「新一君が本気にしちゃうでしょ」
「あっ、それは大丈夫です」
 また新一君が言ってきました。
「俺ムード重視派ですから」
「ムード?」
「そう、ムードです」
 いきなり何馬鹿言ってるのよと思いました。新一君が。
「先輩と二人きりですしね」
「気持ち悪いこと言わないのっ」
 二人きりだのムードだのって。何されるか不安になりました。
「仕方なくなのよ、私は」
「まあまあ」
「まあまあじゃないわよ」
 何かまたデートに行きたくなくなりました。実は私今までデートなんてしたことなかったですし。そのはじめての相手がどうして新一君なんでしょう。
「帰るわよ、詰所に」
「じゃあ送りますね」
「いいわよ」
 一緒に帰るんですから同じです。本当に狙ってるんだかいないんだか。
「そんなの」
「まあとにかくお邪魔虫はこれで」
「退散するわね」
「えっ、ちょっと」
 皆が帰ろうとするので慌てて声をかけます。
 
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