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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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絶対零度

 
前書き
ここに来て最悪の凡ミスに気が付いた・・・
ティオスのフルネーム出すの忘れてたorz
せっかく大きなヒントになるために考えたのに・・・なんて日だ!! 

 
ザシュッ

突き刺さる両者の拳。鮮血が飛び散るその一瞬は、まるでスローモーションのように周りからは見えていた。

「ごはっ・・・」

吐血してその場に倒れる氷の神。それに対し天海は、胴体に穴が空いているにも関わらず、少年を見下ろしていた。

「俺の心残りは、貴様に勝てなかったこと・・・そして・・・















もうティオスと戦うことができないことだ」

彼はそう言うと、目を閉じて地面へと倒れ込む。二人の人智を凌駕した死闘は、ついに終わりを迎えた。

「レオン!!」

その瞬間、シェリアは幼馴染みの元へと駆け出していた。血の海に横たわる彼を抱き抱える。

「シェリア・・・」
「しゃべらないで!!今ウェンディたちのところに・・・」

そこまで言ったシェリアの口はあるものに塞がれてしまう。それがレオンの唇であることに気が付くまで、彼女は動きが止まっていた。

「ちょっ/////何を突然/////」

嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をしているシェリア。そんなことをしている状況じゃないとわかっていた彼女は彼の顔を引き剥がしたが、その際にある異変に気が付いた。

「レオン・・・魔力が・・・」

出血していたことでただでさえ弱まっていた少年の体内から感じられる魔力が小さくなっていたのだ。その代わりに、体内からエーテルナノが消えて魔法が使えなくなったはずの少女の体から、わずかながらに魔力が感じられる。

「俺・・・の・・・魔力・・・もう・・・いらないから・・・シェリアに・・・」
「え・・・どういうこと・・・」

彼の言っている言葉の意味がわからず呆然としているシェリア。その間にも少年の目の輝きは、少しずつ失われている。

「俺が持ってる秘術の一つ・・・『魔力移し』・・・多分・・・明日くらいには・・・シェリアの魔力として使えるように・・・」
「違う!!そう言うことが聞きたいんじゃないの!!」

自身が行った秘術の説明をする少年の声を怒声で遮る。彼女は涙ながらに彼の顔を見つめていた。

「もういらないって・・・どういうこと・・・?」

彼が何を言いたいのか、そんなことは既にわかっていた。だが、それを認めたくない彼女は、必死に嫌な予感を消し去ってくれと言わんばかりに問いかける。
それなのに、少年の回答は非常なものだった。

「言葉通りだよ・・・俺には・・・もう魔力なんか・・・いらない・・・だって・・・これで終わっちゃうから・・・」

その言葉を聞いた瞬間、全員が目から流れてくるものを堪えきれなかった。口を抑え涙を必死に堪えようとするもの、耐えきれず地面に顔を伏せるもの、自分たちの未熟さに、地面を叩くもの。

「そんなことない!!レオンには・・・まだまだその力が必要だよ!!」

その現実を受け入れられない少女は、自らの体内に復活した、わずかながらに感じられる魔力を少年の傷口へと当てる。

「やめろ・・・まだ馴染んでないのに魔法を使ったら・・・また・・・」
「いいの!!あたしはレオンを助けられれば・・・魔法なんか必要ない!!だって・・・」

自身の回復魔法で必死に少年の傷を癒そうとする。だが、その手から放たれる魔力はとても小さく、彼の体に大きく空いた穴を塞ぐのは不可能だった。

「レオンのことが・・・大好きだから」

涙でグチャグチャの表情で白くなっている少年に話し掛ける少女。それを聞いた彼は、嬉しそうに笑みを見せた。

「俺も好きだよ・・・大切な・・・友達として・・・」
「違うの!!あたしの好きはそういうのじゃない!!」

笑みが浮かんでいた少年の表情が困惑の色へと変化した。彼女が何を言いたいのかわからない彼は、次に出てくる言葉を待つ。

「“愛”してるんだよ・・・レオンのこと・・・一人の男の子として・・・」
「え・・・」

彼は何を言われているのかわからず、遠くにいた従兄へと視線を向ける。彼は必死に涙を抑えながら、真っ赤に目を充血させて、小さくうなずいてみせた。

「いつから・・・?」
「ずっとだよ・・・ずっと・・・」

天空の神の涙が氷の神の体へと降り注ぐ。ようやく彼女の気持ちに気付かされた神は、紅く染まり行く空を見上げ、奥歯を噛む。

「そうだったんだ・・・全然気付かなかった」

自分にずっと自信が持てなかった彼は、彼女が自分を慕ってくれているとは思っていなかった。もっとカッコいい存在が近くにいるのに、自分をそんな風に感じてくれていたことに喜びを感じていた。
だが同時に、彼はひどく自らを嫌悪することになってしまう。

「最低だな・・・ずっとシェリアの気持ちに気付かなかったなんて・・・」

手を伸ばし、涙が止まらない少女の頬に触れる。彼の手に付いた赤い血液が、彼女の涙を混ざり合った。

「ごめんシェリア・・・俺・・・絶対勝ちたいって思ってたのに・・・」

彼女のために勝ちたい・・・生きていたいと強く願い戦いに挑んだレオン。その願いは叶わないことは、もう誰の目から見ても明らかだった。

「シェリアがあんなに頑張ってくれたから・・・生きて・・・」
「諦めないでよ・・・レオン・・・」

少女の頬から手を離し、自らの熱くなった目頭を押さえる。神の領域により熱を帯びていた彼の体は、少しずつ冷たくなっていた。

「ねぇ・・・シェリア・・・」
「何?レオン」

お互いの目線が合う。だが相手の顔はほとんど見えない。涙でボヤけた視界を必死に取り戻そうと、少年は涙を拭った。

「笑ってくれよ・・・泣き顔じゃなくて笑顔で見送ってくれよ・・・最後のお前の顔を・・・悲しい思い出で終わらせたくないんだ・・・」

強く握り締める血まみれの手。それを強く握り返した少女も、ボロボロになっている袖で涙を拭う。

「あたしも・・・レオンの笑顔が見たい・・・」
「うん・・・わかってる・・・」

二人の神が見せたのは、無理矢理に作られたであろう笑顔だった。あまりにもひきつっていたそれを見て、彼らは吹き出してしまう。

「ありがとう・・・シェリア・・・」

満足げな表情を浮かべた少年の手から力が抜けていく。落ちそうになる手を少女は必死に握り締めた。

「レオン!!レオン!!」

懸命に呼び掛けるシェリア。その声を聞きながら少年は瞳を閉じていく。

「次に生まれてくる時は、もっと自分に素直な人間になりたいな・・・」

そう言い残して、少年は果ててしまった。どれだけずっと共にいた少女が呼び掛けようとも、その声が少年に届くことはない。

「レオン!!レオーン!!」

大粒の涙を流しながら戦場に響き渡る少女の叫び。それを聞いて今まで涙を堪えていたものたちも、一斉にその涙腺が崩壊した。

「レオン・・・」

その中で、地面に顔を伏せていた水髪の少年は、全身を襲う痛みに耐えながら、その場に立ち上がった。

「ふざけんなよ・・・」

プルプルと震えている彼の俯いている顔から、ボロボロと水滴が落ちていた。笑っているような表情で深い眠りに付いているレオン・・・シリルは彼の顔を真っ赤になった目で睨み付けた。

「お前は・・・二度と俺の追い付けないところに行っちまうのかよ!!」

一年前に交わした約束・・・シリルがレオンに追い付いたその時、お互いの全力をぶつけて戦おうと交わした契り・・・しかし、それがもう果たされることはない。

「俺はずっとお前を追い掛けてきたのに・・・お前は・・・」

拳を握り締めて声を張り上げる。これには皆何も言わなかった。いや、今口を開いたら涙が止まらなくなるから、わざと口を開かなかったのかもしれない。

「シリル・・・」

ショックから次の言葉が出てこない少年を見上げる天空の巫女の目も充血していた。ただ抑えることのできない感情をぶちまけるしかないシリルに見えていた・・・しかし、次に少年の口から発せられたのは、非常に頼もしい言葉だった。

「この戦いは・・・絶対に勝ってみせる!!俺が勝たせてみせる!!お前なんかに、負けてたまるかぁ!!」

真っ赤に染まった空を見上げながら決意を新たにした水竜。これに仲間たちはホッとしたような表情を浮かべるが、あまりの惨状広がる周囲を見て、その表情もすぐに影を潜めてしまった。

















「これは・・・どういうことだ?」

その時、地面に手を付いているゼレフが目を見開いた。

「どうしました?陛下」

西部から妖精の心臓(フェアリーハート)を狙うべく進軍しているアルバレスを率いているインベルが、ゼレフが何に困惑しているのかわからず問いかけた。

「あの少年が・・・死んだ?」

誰のことを言っているのかわからず眉間にシワを寄せるインベル。そんなことなど気にした様子もないゼレフは立ち上がると、ある方角へと視線を向けた。

「それじゃあ・・・君は一体誰なんだ?ティオス」

波乱の起こる戦場をさらに混沌へと陥れる事態となった。そのせいで、ゼレフは現在フィオーレに起ころうとしている変化に気付くことができなかった。


















「貴様・・・なぜ生きて・・・」
「いや・・・おい・・・ウソだろ?」

冷たくなった共の周りに集まってきていたスティングとローグ。二人の青年は、これまで隠れていた顔を見せている敵の素顔に困惑していた。

「グラシアンの判断は素晴らしかった。だが、俺には生憎それは通用しない」

肩にかかるほどの水色の髪。前髪も非常に長く、まるで手入れをしていないように見えたが、なぜかツヤツヤな少女のような髪。

永遠の悪夢(エタニティナイトメア)は敵を自らの作り出した悪夢に誘うことができる魔法・・・つまり、それを打ち破るだけの魔力を敵が保有していれば、容易く破られる両刃之剣とも言えるんだ」

眠たげに開かれた目。首筋は細いが、そこに繋がる肉体には鍛え上げられた筋肉が付いているように見える。

「いくら滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)といえど、俺の魔力を上回ることなどできやしない」

見覚えのある顔をしている敵を見て、スティングとローグは動揺した。よりにもよって、最悪の人物が敵になってしまっていることに、彼らは体から吹き出る汗を押さえることができない。

「氷の神と呼ばれた、俺をな!!」

黒装束から現れた素顔。それは、水色の髪をしたレオンの大人びた姿を思わせる風貌だった。

「レ・・・オン・・・」
「お前が・・・ティオスの正体なのか?」

聖十入りの第一候補として名前の挙げられる存在だったレオン。それほどまでに強大な魔力を持っている魔導士が、数年の年月を越えてこの時代に帰ってきている・・・そうなれば、今までの比ではない攻撃を繰り出されることは容易に想像できる。

「俺は今ティオス・レイバアンと名乗っている。まぁ、自分の名前を単純に並べ替えただけだ」

この時代を生きていく上で、同じ名前でいるのは非常に都合が悪い。周りから存在を悟られてしまえば、時の流れに大きな影響を及ぼし、自分の知る過去から逸れてしまいかねない。それを避けたかった彼は、偽名を使い、ここまでの日々を過ごしてきたのだ。

「なぜだ・・・なぜお前が俺たちを裏切ることになるんだ!!一体何があった!?」

信じられない人物の裏切りに動揺を隠しきれないローグは声を張り上げる。それを聞いたティオス・・・いや、レオンは小さく笑みを浮かべてみせる。

「お前たちがシェリアを守り抜けなかった。それが答えだ」
「な・・・何を言っているんだ?」

言っている言葉の意味が理解できずに唖然としている二人。そのうちの一人、白き竜の懐に彼は入り込んでいた。

「凍てつく闇の恐怖を受けてみよ」

左腕に渦巻くように集まってくる魔力。その魔力のせいで周囲の温度が大きく下がっていく。

「絶対零度!!」

神から悪魔へと変化してしまったレオン。彼の強烈な一撃が、白き竜へと突き刺さった。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
カウントダウンの正体は、レオンの死、からのティオスの正体でした。レオンの絶対零度で0!!無事に完結ですよ。
しかしまだまだ謎は残っている上に、新たな謎まで出てきましたからね。それもおいおい出てくると思います。
次は北部が中心かな?うまく進めていけるようにがんばルビィ└(。`・ ω ・´。)┘ 
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