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とある3年4組の卑怯者

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134 挑戦者

 
前書き
 校内テロで心配になって清水を訪れた片山と再会した藤木。藤木は自分を応援してくれる者の為にその感謝の気持ちをを演技で表す事を決意した!! 

 
 藤木は練習を切り上げ、家に帰る事にした。帰ると、母親が出迎えた。
「お帰り、茂」
「うん、ただいま」
「今日も頑張ったみたいだね」
「うん、今日、片山さんに会ってきたんだ」
「片山さんと!?」
「うん、この前の校内テロで僕を心配しに来てくれたんだ」
「そうだったの・・・」
「母さん、僕、全国大会で応援してくれる皆の恩を演技で表してみるよ!」
「茂・・・。そうだね、その方がとてもいいね。母さんも応援しているよ」
「ありがとう、母さん・・・」
 藤木は家に入った。

 藤木は寝ながら全国大会の事を考えていた。
(大会には僕の他にも凄そうな子が沢山出てくるだろうな・・・。勝ち抜けるかな・・・?)
 藤木は中部大会で姿を消した和島以外にもスケートの得意な者達が参加する事は見当はついていた。また、その大会は今までは男女別でやっていたが、今度からは男女どちらの大会も同じ日時と場所で行う。男女問わず交流の幅が広がると思うと、それは藤木にとって楽しみでもあった。


 新潟県のとあるスケート場。ここでは中部大会で銅メダルを獲得した吉岡肇(よしおかはじめ)という少年が練習していた。彼は中部大会で金メダルを獲得した藤木の技術に驚き、次こそはリベンジを果たそうと考えて、藤木以上の最高だと思える演技・演出を模索していた。
(あの時の俺はトリプルルッツがシングルになったり、少しふらついちまったが、今度はノーミスでやってみせる!!)
 吉岡の全国大会への臨む気持ちは並みの物ではなかった。

 富山県のあるスケート場、そこでは中部大会で銀メダルを勝ち取った佐野武政が練習をしていた。お得意の高速シットスピンでスケート場の客達を驚愕させていた。彼は銀は優秀な方には見えるが、それでも金賞の藤木の演技の素晴らしさには全く負けていたと感じていた。藤木を越える、いや、全国大会の頂点に立つには藤木以上の演技・演出を見せなければというプレッシャーがあった。
(今度は誰よりも上に立つぞ!!)
 佐野は必死になっていた。

 大阪府のとあるスケート場。そこでは一人の少年がその場でジャンプやスピンをこなし、その場にいた人々を魅了していた。
 瓜原かける。彼もまた藤木同様、片山から才能を認められた少年である。勿論、近畿大会においては金賞を獲得していた。前に瓜原が全国大会に向けて練習をしていた時の事である。瓜原は案の定、どのような構成にするか考えていた。そして休憩していると、一人の男から話しかけられた。
「君は小学生にしてはなかなかの技術を持っているな」
「あ、おおきに・・・。いえ、ありがとうございます」
 瓜原は大阪弁で礼をしたが、慌てて直した。
「わい、アマの小学生のスケート大会で金を獲りました。せやから、今度は全国を目指そうとしとるわけです」
「ほう、君もか」
「はい、わいの兄ちゃんや姉ちゃんも前にスケートの大会に出てましたさかい、わいも頑張ろ思うて・・・」
「そうか、君なら全国どころか、世界大会も夢じゃないな・・・」
「はい、おおきに・・・。ところで、おじさん、誰ですか?」
「おっと、失礼。私は片山と言う者だよ。それではまた全国大会で君の演技見せてもらうよ。ではまた会おう」
「はい、さいなら・・・」
 片山は去って行った。
(片山・・・・。何か聞いた事ある名前やけど、ほなどこやったか?)
 瓜原はそのまま練習を再開した。瓜原は全国大会が楽しみだった。まだ見知らぬライバルが自分を待っていると思うと、会ってみたい気もしたからである。

 全国大会では女子の部も男子の部も同様、同じ場所で行う。女子も全国大会に向けて練習する参加者がいた。
 山梨県のあるスケート場では一人の少女が調整していた。関東大会で金賞を獲得した桂川美葡(かつらがわみほ)である。
 その彼女が休憩すると、一人の女子が彼女の名を呼んだ。
「美葡ちゃん!」
「あ、みきえちゃん」
 学校のクラスメイトの雪田みきえだった。
「転校したこずえから返事が来たんだ。見せてあげるよ」
「え?ありがとう」
 美葡はみきえから受け取った手紙を見せてもらった。

 みきえ

 お手紙ありがとう。私は辛い時があったけど、今は元気にやっているわ。あ、そうそう。美葡ちゃんに次の事を教えてくれるかしら。学校は違うけど美葡ちゃんと同じようにスケートが得意な友達がいて、その子も中部大会で金賞をとったんですって。名前は藤木茂君っていうのよ。男子だけど全国大会は男女同じ場所でやるって聞いたからもし会ったら藤木君に宜しくねって。それじゃ、またね。

 こずえ

 美葡は転校していった友達の手紙を見て感動した。
「こずえちゃん・・・。うん、また会えたらいいワね・・・」
「それに、藤木君って子と知り合いになったってね。美葡ちゃんみたいにスケートが得意なようだけどどんな子かな?」
「そうね、まあ全国であったらみきえちゃんにも教えるワ」
「うん、ありがとう」
 美葡は練習を再開した。みきえも一滑りしようとリンクに入っていった。

 同じ頃東京の八王子。そこには女子スケートの関東大会で美葡にあと一歩及ばずに銀賞に終わった少女が滑っていた。黄花蜜代(きばなみつよ)という女子だった。
(関東では銀は悔しゐけどそれでも全国には行けた・・・。でも他の皆も頑張ってるはず・・・。倍の練習しなゐと駄目だわ!!)
 黄花は練習を続けた。

(よし、今度は足替えのキャメルスピンだ!!)
 静岡県清水市のスケート場では藤木茂もまた、全国大会に向けて練習を続けていた。彼がここで紹介した様々な参加者と巡り会うのは全国大会の時になってからである。そして、今日もまだ見知らぬライバル達も全国大会に向けて練習を重ねるのだった。 
 

 
後書き
次回:「英吉利(イギリス)
 リリィは自分が嘗て生まれ育ったイギリスに戻っていた。そこで彼女は己の旧友であるメイベルをはじめ、イギリスの友達と再会する。日本の学校生活を語りながら・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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