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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第五十一話 -黒の組織との接触…の解決後-

 
前書き
このお話は原作第37,38巻収録のお話の解決後のお話となります。

少し短いですが、どうぞ! 

 
――ピンポーン

 

「ん?」

「誰やろか?こない朝早く」

「あ、私が出てきますね」

「お願いします、夏さん」

 

夏さんは居間を出ていき、玄関の方へと向かっていった。紅葉の言う通り、俺達が朝食をとり終わってからそう経っていないので宅配業者だとしてもまだ動き出すには早い時間だった。

 

「今日は誰か来る予定やったろうか?伊織?」

「いえ、私が把握している限り今日緋勇邸に来訪するご予定のお客様はおりません」

「と、いうことは知り合いかご近所さんかな?」

「あのー……」

「ああ、夏さん。それでどちらさまでしたか?」

「それがですね…」

 

そう言って夏さんが体を横にずらすと所在なさげに哀ちゃんが立っていた。

 

 

――

 

 

来訪者は哀ちゃんだった。どうやら彼女は俺に用があったらしく、詳しく話を聞いてみようとするとちょっと賢橋駅まで一緒に行ってほしいとの事。道中歩きながら、事情は説明すると夏さんの方をちらちら見ながら俺に言った。予定もあるけど、賢橋駅と自宅を往復しても十分間に合う時間だったので了承した。

そして、俺と哀ちゃんは賢橋駅に向かって出発した。約束通り、哀ちゃんはなぜ俺についてきてほしいかとの事情を教えてくれた。

 

「……なるほどねえ。夜遅くに新ちゃんが来て博士と新ちゃんはそのまま外出して朝になっても戻ってこないと」

「ええ。博士の新しい発明を受け取りに来たって言ってたのだけれどね。私が地下から上がってベットに横になってから博士のビートルが家を出る音が聞こえたのよ。それから私は眠ってしまったのだけど夜中に群馬県警の人の電話が来て。それで分かったのよ、彼らが群馬に行ってたってね。どうせ、工藤君に唆されて何かの事件に首を突っ込んでるんでしょうけど」

「それで朝になっても二人は帰ってこないし連絡もない。予備の追跡眼鏡があったから様子を見に行くというわけか」

「この眼鏡に映るのは探偵団バッジの在り処と工藤君のもつ発信機。これを見る限り、吉田さんたちは家にいて、動かない点は二つ。位置を地図に当てはめてみたら警察署と賢橋駅付近だったのよ」

「…事件に首突っ込んで巻き込まれて、警察署で事情聴取を受けているってわけね……はぁ~、何やってんだか」

「警察署の方はともかく、賢橋駅の方が気になったのよ。それに……」

「それに?」

 

哀ちゃんは少々口ごもり、確信を得ていないけどと前置きをして。

 

「実は、私がお風呂から上がって地下の実験室に行くと二人が熱心な様子でパソコン画面を見ていたのよ。洋物のファンタジー小説だって誤魔化されちゃったけどあれって組織の手掛かりだったんじゃないかって……」

 

…組織。新ちゃんが黒ずくめの組織と呼ぶ、「名探偵コナン」における最大最強の敵役。今まで、新ちゃんと共にいて事件にいくつかの事件に遭遇した。原作知識なんておぼろげで、その事件が漫画にあったのかどうかも今は判別がつかない。まあ、覚えているものもいくつかはあるしそれらに遭遇したのなら……最低限、人死にが出ないように立ち回ろう。

っと、考えが逸れた。ともかくいろんな事件に遭遇してたけど黒の組織関連は哀ちゃんに変装して偽装工作したことを除いて今まで一度も遭遇していないんだよね。

 

「……もしかしたら、新ちゃんか博士が巻き込まれているかもしれないって?」

「確証はないのよ…もしかしたら賢橋駅にバッジを落として、二人とも警察署にいるのかもしれないし…まあそれはそれで意味わからないんだけど」

 

確かに。群馬に行って、東京戻ってきて、賢橋駅に行って、警察署にいる?なんの事件だそれは。

 

「それで、もし万が一奴らが関わっていたとしたら私1人では太刀打ちできない。それで……」

「俺を護衛に選んだと」

「貴方を巻き込んでしまう事は私も工藤君も出来れば避けたいわ。今も連れてきてよかったのか迷ってる。でも貴方は私達が何も言わずとも自分から頭を突っ込んでいくでしょう?罠があろうとそのど真ん中をね」

 

見た目と普段の様子と違って脳筋よね貴方、と続ける哀ちゃん。失礼な。そりゃあ新ちゃんのように人間模様を深く考察する事には長けていないけども。皆が無事ならいいじゃないか。

そんなことを彼女に言うと、

 

「……ねえ。例えばの話なんだけど、密室に閉じ込められて毒ガスがあと1時間で噴出される。扉には謎解きがあってそれが解ければ扉はあく。貴方ならどうする?」

「え?扉を壊すか、壁をぶち抜く」

 

謎解きをする時間がもったいないし、解けるかどうかも分からない。本当にそれで扉が開くかもわからないし。最善手は壁かな。扉に爆弾でも仕掛けられていたら目も当てられない。新ちゃんなら密室に監禁された意図や正解を導けるだろうけど俺は俺ができる最短の解決策を実行するかな。

 

「……その発想が脳筋なのよ。ってかなによ、壁に穴を開けるって。出来るわけないでしょう!?」

「あはは、たとえ話さたとえ話。それにしても…」

「なによ?」

「ほら、哀ちゃんと二人で話すのは珍しいなって。会話自体はそうでもないけどね」

 

大抵は子供たちが居たり博士の家で新ちゃんたちがいる。2人っきりってのは中々レアだな。

 

「言われてみればそうね…でも、男子高校生と小学一年生の女の子が二人っきりって言うのも兄妹以外ではなかなかいかがわしいと思わない?」

 

そういってこちらにニヒルな笑みを見せる哀ちゃん。おっしゃる通りで。

 

「嫌なことを言うねぇ。まあ子供好きって言葉が言葉通りに取られないご時世だし仕方ないっちゃあ仕方ないけどね。それはともかく……」

 

目線を歩いていた方向から、哀ちゃんを落とす。俺の視線に気付いた哀ちゃんは不機嫌そうに俺を見上げながら言った。

 

「なによ?」

「前の哀ちゃんなら一人でさっさと見に行っただろうなあってね。少しは頼りにされてると思っていいのかな?」

「……さっきも言ったけど貴方は何も言わなくても勝手に行動するし、工藤君は工藤君で影でこそこそ私に黙って何かたくらむし。だったら私の目の届くところで動いてもらった方がいいってだけよ」

 

……哀ちゃんは気付いているのかな?それは、形がどうあれ他人へ助けを求められるようになっている事の証左になっていることを。以前の彼女なら俺が行動する事なんて考えもせず、自分で抱え込もうとしていたはずだ。彼女にとっての幼児化は悪い事だけではなかったんだな…

 

「あらら。ま、信用されてるって捉えるよ」

「いい意味じゃないわよね?それ」

 

そんな雑談を続けていると目的の東都地下鉄、賢橋駅に到着した。工事中の標識と工事の作業員が地下へと消えていくのが見える……うん、新ちゃんの匂いがするね。しかも残り香じゃなくてまだいるっぽい。

 

「……うん。確かにここにいるみたい。いるのは新ちゃんで、今もいるよ」

「犯人追跡眼鏡もここを示してるわね。全く、なにしているのかしら」

「さあ?それは本人に聞いてみよう?」

 

俺は作業員の人に、子供がかくれんぼで駅の中に入って行ってしまったので連れ出したいので入りたいと言う旨を伝えると快く許可を頂けた。

 

「にいちゃん。子供はしっかり目の届くところに置いとけよ?にしても、子供をみたって話は聞かないがなあ」

「多分、子供ならではの隠れ場所だと思います…例えば」

 

俺は新ちゃんの匂いが留まっている箇所を指さした。

 

「ああいう、ロッカーの中とかね」

「ああ!大人じゃ入れねえけど子供なら入れるな」

「じゃあ行こう、哀ちゃん」

「ええ」

 

俺達はロッカー室の中に入り、一番奥まで行きとある列の一番下の棚を哀ちゃんに指差した。

哀ちゃんは頷き、ロッカーの扉を開けた。

 

「は、灰原?」

「何してんのよこんな所で」

いやホントに。

「お、おまえこそどうしてここへ?」

「夜中にビートルで出て朝になっても帰ってこないから予備の追跡眼鏡で追ってきたのよ。彼と一緒に」

「彼?……って龍斗!?え、あいや、朝だって!?」

 

哀ちゃんに言われて俺に初めて気づいたのかびっくりした様子の新ちゃん。呼吸が荒いところから見るに酸欠による意識消失でもしたか?いつから気を失っていたのやら。朝になっていたことに驚いた新ちゃんは一目散に駅の出口へと駆けて行った。

作業員の人に上に上がるように促されたので俺と哀ちゃんは礼を言ってこの場を後にした。

俺と哀ちゃんも新ちゃんの後を追うように地上に上がるときょろきょろと誰かを探す新ちゃんを見つけた。

 

「まったく、こんな朝まであんなところで何やってたのさ」

「え?あ、ああ。寝てなかったからあの中でちょっと仮眠を…」

「そんな言い訳で…」

「俺達が納得するとでも?」

「まあまあ、いいじゃねえか!ってかなんで龍斗もいるんだよ」

「俺は哀ちゃんに呼ばれてね」

 

全く。俺も哀ちゃんも誤魔化されたつもりはないのにどんどん帰路に進む新ちゃん…お?

 

「どうしたんだい?哀ちゃん。そんな勢いよく振り返って」

「…いや。なんでもないわ」

 

んー?後ろか。一応……!!拳銃特有の鉄と火薬の匂い!?拳銃所持者がこんな近くに!?

 

「……あー、新ちゃん。哀ちゃんにここまで付き合ってきたけどこれから予定有るからさ。ここでお別れだよ。ちゃんと警察署にいるであろう博士を回収するんだよ?」

「え?お、おう。分かった」

「……ごめんなさいね。朝早くから付き合わせちゃって」

「いいよいいよ。子供はわがままを言う物さ。じゃあまたね」

 

俺は彼らとは逆方向へと歩きだした。

 

 

――

 

 

明らかに警察関係者には見えない、黒いニット帽を被った男性が俺の気づいた拳銃所持者だ。彼は左の耳にイヤホンをつけ、街を気ままに散策しているように見える……っと、観察を続けていたがイヤホンから聞こえてきた彼の名前を聞いて俺は脱力してしまった。「赤井さん」と。

いつの間に日本に来ていたのか、とか。彼が賢橋駅に居たってことはやっぱり黒の組織関係だったのか、とか。俺だけ気づいているけど10年ぶりですねピエロのDr.ワトソンさん、とか。色々考えが浮かんだが、今ここで話しかけなくてもいずれ出会う事があるだろう。

俺は彼の追跡をやめて、元々の予定のために家へと急いで戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

え?気づかれなかったのかって?直線距離で1km以上も離れていて、道なりに言えば2km近く離れて追跡していたから流石の赤井さんも気づけないでしょう?

 

 
 

 
後書き
赤井さんとの再会は次へと持ち越しとなりました。龍斗の行動をかんがみて、割と脳筋な行動ばっかしていると思ったので灰原に代弁して貰いました。もう少し二人の会話を書きたかったんですけど、うまく纏まらなかったので断念しました……

1km、2km離れたくらいではトリコ世界感覚では目と鼻の先で追跡しているようなものですがコナン世界の住民の赤井さんじゃ気づくことは流石に無理ですね。
距離もですし、実際はビルだったり建物だったりで視界にすら入っていないですしね。 
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