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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第四十六話 -瞳の中の暗殺者-

 
前書き
このお話は劇場版名探偵コナン 瞳の中の暗殺者 が元になっています。

話という話になっていません。短いですし。ただ、もし龍斗が絡むのならこういう感じになったかな、と。
 

 
―某日、米花サンプラザホテル―

 

「いやあ、それにしてもなんだな。白鳥の妹も間が悪いと言うか…何もこんな時期に結婚披露パーティをしなくても…」

「仕方ないじゃない、事件が起きたのは彼女のせいじゃないし。そもそも一か月前には決まってたみたいだし」

「それと、今回の集まりは披露パーティではなくて彼女のお友達が企画した「結婚を祝う会」らしいですから…彼女の…というか、お兄さんの白鳥刑事の都合で取りやめにするというのも心苦しかったんだと思いますよ」

「刑事さんが二人も殺されて大変なのは分かってるからこそ、おめでたいことで空気を換えたいのかもしれないわよ、オジ様?」

「うむ…ん」

 

俺、毛利一行と園子ちゃんは白鳥任三郎…白鳥刑事の妹の白鳥沙羅さんが婚約し、それを祝うパーティに呼ばれていた。小五郎さんは事件現場の縁で、蘭ちゃんと新ちゃんは一緒に招待。園子ちゃんはと俺は恐らく白鳥家とのつながりでかな。沙羅姉さんには子供の頃、パーティに連れて行ってもらったときに出会って、子守みたいなことをしてもらった縁で仲は良かった。そのお兄さんの白鳥刑事もその縁で知り合いになった。まあ、彼とは幸い、事件現場ではまだあったことは無いけど。エッグの時は怪盗キッドが変装していたわけだし。

エレベーターが丁度降りてきたのでお目当てである15Fのボタンを押した。

 

「ねえねえ、新郎の晴月さんってどんな人?」

「画家だって言ってたけど」

「頭に「売れない」がつく、な」

「売れないがかぁ…こりゃその友人関係の男はあんまり期待できないかなー」

「あはは…」

「(は。相変わらずだぜ、園子の奴)」

「もう、薗子ちゃん。あんまり目移りしてたらダメだよ?」

「いいじゃないー、ちょっとくらい」

 

15Fにはすぐ着き、エレベーターの扉が開いた。えっと、確か「鳳凰の間」だったかな…ああ、あそこか。記帳台もあるし。白鳥家のほうにまず俺が名前を書き、次に小五郎さんが書いていると…

 

「相変わらずぶっきらぼうな字ねぇ…」

「んな?」

「お母さん!」

「あ、英理さん」

「お前も呼ばれてたのか?」

「ええ。沙羅さんは弁護士の卵だからその関係でね」

 

そう言うと英理さんは小五郎さんと俺が書いた記帳ノートとは別のノートに「妃英理」と記帳していた。その名前を後ろから覗いた園子ちゃんは達筆だと感心していたが。

 

「いや、夫婦で別々に記帳するなよな…」

「いやほんとにね…」

「もう10年も経つんだし、少しずつ歩み寄ってもいいと思うんだけどなあ…」

「いやあ…蘭も色々やってるけど二人とも頑固だし難しいんじゃねえか?」

「だよねえ。今日のパーティで二人が新婚だったころとかを思い出したりしてくれたらいいんだけど」

「いや、オッチャンに限ってそれはない…」

「ないかぁ。致命的に別れたんならこんなふうには思わないんだけどね」

 

毛利一家と園子ちゃんが話しているその少し離れた所で俺と新ちゃんはそんな話をしていた。なんだかんだでお似合いの二人だと思うんだけどね。

記帳が終わり、クロークへ荷物を預けた俺達は鳳凰の間に向かった。その途中で新ちゃんが立ち止って傘立てにあるビニール傘を見ていたが…何の変哲もない傘だぞ?

 

「わあ、すっごく人が来てる!」

 

園子ちゃんが言う通り、鳳凰の間には50人以上の人がすでに来ていた。ふーん、スーツ姿に強面、華やかな衣装の女性にラフに着崩した格好の面々。うん、誰が誰の関係者なのか一目で分かるな。

 

「おお、警部殿も来ているぞ」

「警察関係者はすぐに見分けがつくわね。目つきが悪くて、皆重苦しい空気を漂わせて…」

「無理もねえ。例の事件でパーティどころじゃねえんだろ」

「でも佐藤刑事はいつも明るいわ」

 

蘭ちゃんの視線を辿ってみると高木刑事に自分のドレス姿を見せつけている女性がいた。彼女が蘭ちゃんの言う、佐藤刑事なのだろう…佐藤刑事?あれ?…んー?

小五郎さんは警察時代の知り合いに挨拶に行ったり、その人物の説明を英理さんに聴いたりしているとパーティが始まった。さて、と。たまには純粋にパーティ参加者としての立場を楽しみますか。

 

 

――

 

 

料理とって食べたり、園子ちゃんの男見極めに突っ込んだり、新ちゃんに言われて刑事の人たちの話していることで今起きている刑事殺しの話題があったら盗み聞きして情報収集をしたり、料理を食べたり、久しぶりに会った英理さんと話したりなどしていると。

 

「毛利さん」

「ん?おお、白鳥!今日はおめでとう!」

「ありがとうございます」

 

小五郎さんの後方から、白鳥刑事が一人の男性を伴って現れた。

 

「あの、ご紹介します。私の主治医で米花薬師野病院で心療科医をしている風戸先生です」

「風戸です、よろしく」

「毛利です。妻の英理に娘の蘭、そして居候のコナンです。それから、彼は娘の幼馴染みで…」

「緋勇龍斗です。初めまして」

「緋勇?緋勇ってあの?」

「ええ、龍斗君はあの緋勇夫妻の一人息子で彼自身もすでに世界で名を轟かせる料理人ですよ。よく来てくれたね」

「いえいえ。沙羅姉さ…沙羅さんとは何度かお会いして面倒を見てもらいましたし。おめでとうございます、白鳥さん」

「それで?白鳥さん、心療科って?」

「あ、いや。管理職って言うのは色々と悩みが多いもので…毛利さんも一度、見てもらった方がいいかと思いまして」

「そうだなあ、オレも時々記憶が抜け落ちて…ってこら!」

「「「あははは!」」」

――ゴチン!

「オメエは笑い過ぎだ!」

「いってえ!」

 

新ちゃんに拳骨を振り下ろした小五郎さんは後ろを通りかかった目暮警部に気付き話しかけたが、目暮警部は取りつく島もなく去ってしまった。そこで、一緒に歩いていた高木刑事を見て悪い顔をした新ちゃんは、彼が佐藤刑事に好意を抱いていることを小五郎さんに告げ口して、そこから情報を開示しようとしていた。

観念した高木さんが吐いたのは二人目の犠牲者となった芝刑事が警察手帳を握っていたという、マスコミにも流されていない情報だった。さらなる追求をしようとしたところ、白鳥さんに一言言われた。それを聞いた小五郎さんは呆然としていたが…

 

「ねえ、新ちゃん。Need not to know,ってどういうことだい?」

「ああ、刑事たちの間で使われている隠語で。この場面で使われたってことは恐らくこの事件は警察関係者ってことになるな」

 

…それは。小五郎さんにも情報が下せない訳だ。中がごたついているのに外に漏らせるわけもないか。

 

 

――

 

 

「新ちゃん、ちょっとお手洗いに行ってくるね」

「ん?ああ。わかった」

 

パーティの主役だった沙羅姉さんに挨拶もでき、ついでに小五郎さんのプロポーズの言葉もゲットできてしばらくして俺はパーティの料理を食べすぎたのか用を足すためにトイレへと立った…あれ?蘭ちゃんもいなくなってるわ。

トイレの中には誰もいず、すぐに用を足すことができた。手を洗い、身だしなみを整えていると、突然ホテルの電灯が消えた…停電か?俺は取りあえず通常モードから感覚を開放してトイレの出口へと向かった…っと。

 

「おっと」

「!!」

「どうしたんですか?風戸先生?こんな暗闇の中走ってトイレに駆け込んでくるなんて」

 

そう、駆け込んできたのはさっき白鳥刑事に紹介された風戸先生だった。真っ暗闇の中(俺にはよく見えているけれど)クロークの方向から走ってトイレに入ってきた…ん?左手にゴム手袋…!!?この臭い!!

 

「どういうことか…皆さんに説明してくださいね?ここには都合のいい人たちでいっぱいですから」

 

はてさて、なんで彼は左手にゴム手袋を。そしてそのゴム手袋から硝煙の匂いがするんですかねえ…

 

 

――

 

 

停電がやんだ後、隣の女子トイレから蘭ちゃんの悲鳴が上がった。俺もその場に行きたかったんだが風戸先生を取り押さえている現状そうも言っていられなかった。幸い、悲鳴を聞きつけて人が集まってきたので彼の左手のゴム手袋から硝煙の匂いがすることを伝えて刑事さんに拘束してもらった。

問題なのは女子トイレで血まみれになっていた佐藤刑事だった。撃たれた箇所も悪く、出血も多い。出来うる限りの応急処置を行い、ちょっとだけ末梢組織の血管を収縮させ主要臓器に血が行くようにしてあとは病院に任せた…なんかそんなこと(応急処置)ばっかりやっている気がする…

 

 

――

 

 

結局、あの事件は俺達にも爪痕を残した。蘭ちゃんが記憶を失ってしまっていたのだ…参ったな、トリコの世界に連れて行けばすぐに解決するんだがそうするわけにもいかず日々の生活で取り戻すことになった。アルバムを見せたり、子供の頃にしたみたいに料理を教えながら一緒に作ったり、久しぶりに英理さんが小五郎さんの家に帰ってきたり。

でも結局、彼女の記憶を取り戻す事になったきっかけは俺が新ちゃんの変装をして、新ちゃんにインカムで指示をして貰いトロピカルランドでのデートの再現をすることだった。

いやあ、辛かった。何が悲しゅうて幼馴染みのデートを男目線で追体験しなくちゃならんのだ。しかも変装の事は誰にも言っていないから(つまり本物の工藤新一として認識されていたわけで)、記憶を取り戻した蘭ちゃんにすっごく追いかけられたし。まあ必殺の「わりぃ、事件だ」と気配を立つ技、消命で乗り切ったけど。

 

 

 

 

次は、自分の身体で来れるといいね?新ちゃん。

 

 
 

 
後書き
天国へのカウントダウンで哀ちゃんがカウンターで秒数カウントしてましたけど、携帯の向こうの人にカウントしてもらうてもあったんじゃないかなあと映画館で子供心に思いました。
あ、ベイカーも恐らくさらっと流します。

風戸先生の行動は、オリジナルですが
佐藤刑事を撃つ→傘を傘立てに戻す→トイレに入る→(入ったあたりで電気がつく?)→手袋を切ってソーイングセットなどの小さなはさみで切り、鋏も共にトイレに流す→トイレから出る。としています。多分こうしないと刑事さんに見つかっていたでしょうし。
トイレに入ったところで龍斗につかまったわけですね。

 
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