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ときめき

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第二章

 実際に飲み会の後で四人で居酒屋の近くにたまたまあった恋愛祈願の神社に入ってお賽銭を払ってだった。
 お願いをした、だがこの時はそんなこともないと思っていた。
 しかしだ、その転勤してきた若い社員を見てだ、麻美はびっくりした。
 精悍で背が高く背筋はしっかりとしている、まだ二十五歳だがきりっとした顔で黒髪は奇麗に刈られている。
 仕事も口調もテキパキとしている、スーツの着こなしもいい。
 その彼を見てだ、麻美は営業部の後輩達に言った。
「あの子何なの?」
「織部君ですか?」
「織部健君ですか?」
「凄い子が来たわね」
 こう言うのだった。
「ルックス、いえ仕事ぶりが」
「実は最初東京支社に配属されてです」
「実家があっちの方にあるとのことで」
「それであっちで最初は経理部にいたらしいですが」
 後輩の娘達が麻美に話す。
「それがなんです」
「あっちの営業部長さんが一目見てこれはいけるって思ったらしくて」
「営業部にスカウトしてです」
「あっちでトップの成績を何度も獲得しまして」
「それでなんです」
「今度はこっちの本社にスカウトされまして」
「東京支社と激しい争奪合戦を経て」
 そうしたことがあったというのだ。
「それでなんです」
「神戸本社配属になりました」
「東京支社じゃ営業部と経理部でも争奪合戦があったとか」
「そんな子なんですよ」
「入社した時から注目されていて」
「バリバリの営業マンですよ」
「そうなのね。いや凄い仕事振りね」
 こう言う彼だった。
「本当に」
「はい、ただもう結婚してますよ」
「向こうの営業部長さんが婿にと言いまして」
「部長さんの娘さんと結婚して」
「こっちも奥さんと一緒に来まして」
「部長さんの紹介ですがアツアツみたいですよ」
「ああ、そうなの」
 そう言われて急に冷めた麻美だった、好みのタイプだったが結婚しているならと思った。だがここでだ。
 実は東京から来た営業部の社員は彼だけではなかった、入社二年目のおっとりとした顔立ちで背も普通で髪型は短めで大人しい感じの者もいた。そのバリバリ働く彼の一年下で彼にも何かと教えてもらっている。
 その彼についてもだ、麻美は後輩達に尋ねた。
「もう一人は誰なの?」
「あっ、小林君ですか」
「小林勇気君ですね」
「彼も東京支社にいたんですよ」
「彼の場合は最初から一年って話で」
「それで東京にいまして」
 そうしてというのだ。
「こっちに戻ってきました」
「あっちじゃ最初は総務にいたそうですが」
「ここの営業はまあ経験らしいですね」
「他の部署も知っておけってことで」
「こっちでも後々総務部になるそうですよ」
「そうなの。何か仕事ぶりを見てたら」
 織部と違って彼はとだ、麻美は小林を見て思った。
「不安になるわ」
「ちょっと営業向きじゃないですよね」
「どっちかっていうと総務ですよね」
「元々そっちの子ですし」
「おっとりした感じで」
「ええ、織部君には一人でどんどん働いてもらって」
 結婚していることを残念に思いつつの言葉だ。
「彼の教育係は別に決めるべきかしら」
「今部長もそう考えてるみたいですよ」
「うちの営業部長も」
「織部君には一人でどんどん働いてもらって」
「小林君は営業の仕事を知ってもらう」
「後々総務に戻ってもらうし」
「そう考えてるみたいです」
「そうした方がいいわね」
 麻美は後輩の娘達の話にそれがいいと自分でも思った、この時はこれで終わったがそれがまさかだった。 
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