ときめき
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第一章
ときめき
宮部麻美は同期の飲み会でふとこんな言葉を出した。
「私も恋がしたいわ」
「それで結婚ね」
「そういきたいのね」
「そうよ、大学出て入社してね」
勤めている今の会社にだ。
「働いて趣味を満喫していたらよ」
「気付けばもう二十八」
「いや、私達もだけれどね」
「早いものよね」
四人いる、同期の女子社員は他にもいるが麻美と同じ大卒でしかも彼女達が今いる神戸本社に残っているのは四人だ。転勤したり結婚退社なりして大卒組でここにいるのは四人だけになってしまっているのだ。
麻美は黒髪をロングヘアにしていて目は大きい二重だ、仕事中は眼鏡をしているが今はしていない。背は一六〇位ですらりとしたスタイルだ。会社では営業の女子社員としていつも頑張って働いている。趣味は読書と映画鑑賞と横浜ベイスターズの応援だ。今は同期のメンバーと居酒屋で一緒に飲んでいるのだ。
座敷の席でビールや焼き肉を楽しみつつだ、こう漏らしたのだ。
「何しろ彼氏いない歴七年よ」
「大学の途中からじゃない」
「もう結構長いわね」
「ずっと日照りなのね」
「そうよ、だからね」
それでというのだ。
「そろそろって思うけれど」
「じゃあお見合いしてみる?」
「合コンどう?」
「婚活サイトに登録するとか」
「そうしてみたら?」
「結婚関係入ってるけれどね」
それでもとだ、麻美は真剣な顔で応えた。ビールのジョッキは手放していない。
「それもいいわね」
「歳だからね、もう」
「二十八だからね」
「そろそろ三十だし」
「アラサーだから」
同期の面々もこう返す。
「そろそろね」
「私達全員彼氏いるけれどね」
「麻美ちゃんいないからね」
「そうなのよ、あんた達はそれぞれ結婚前提だけれど」
それがというのだ。
「私はそうじゃないから」
「だからよね」
「是非よね」
「彼氏欲しい」
「そうなの、本当にいないかしら」
切実な言葉だった。
「いい人」
「そういえば今度転勤してくる子いるでしょ、営業に」
「東京支社の方から」
「だったらその子に期待したら?」
「そうね、私的にはね」
ここで自分の好みも言う麻美だった。
「渡哲也さんとか」
「全然若くないわよ」
「滅茶苦茶渋恰好いいじゃない」
「そういう人じゃなくてね」
「若い時のよ、そうした人だったらね」
麻美としてはというのだ。
「いいけれど」
「じゃあそんな子が来たらね」
「告白したらいいわ」
「タイプの子が来たらね」
「そうするわね」
麻美は同期の面々に本気で答えた、言いつつビールを飲みほしてもう一杯注文した。
「実際に」
「じゃあ恋愛祈願ね」
「そっちの神社にお参りしましょう」
「困った時の神頼みよ」
「それね、じゃあね」
麻美も乗ってだ、そしてだった。
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