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とある3年4組の卑怯者

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130 救出

 
前書き
 今回も124~125話と同様に(それ以上かも)残酷な所があるため苦手な方は飛ばしても構いません。 

 
 たかしが笹山の救出に名乗りをあげた。
「藤木君、僕が笹山さんを助けに行くよ!だから気にしないでくれよ!それに僕は堀内に怨みがあるんだ!」
「西村君・・・」
「大丈夫なの?」
 リリィが心配した。
「うん、絶対に助けるよ!」
 その時、鹿沼もその場に現れた。
「藤木君、笹山さんが堀内に襲われているって?」
「うん、早くしないと!」
「分かった。西村君一人じゃ危ない。僕ら各クラスの学級委員も付き添うよ。だから心配しないでくれ!」
「ありがとう、鹿沼君・・・」

 大野と杉山、冬田とかよ子の四人は校庭に出る途中、花輪と菖蒲岡が隣町の親分を取り抑えている所を発見した。
「おい、花輪に菖蒲岡・・・。ああっ、こいつはいつかの隣町のガキ大将じゃねえか!!よくもこんなバカな事やってくれたな!!」
 大野は怒りを山口に向けた。そして杉山と共に近づき、二人で顔面に拳を刺した。
「花輪、俺達もこいつを外に引っ張りだすぜ」
「ああ、thank you、大野クン、杉山クン」
 四人がかりで山口を校庭に連れ出した。

 鹿沼は本郷とひろ子を呼び集めた。山口の子分を押さえ付けていた本郷はケン太とブー太郎にその役目を継がせた。
「ごめん、笹山さんが堀内に襲われているんだ。今すぐ助けに行こう!」
「おお!」
「あれ、丸尾君は?」
 ひろ子が見回した。そして丸尾の姿を見ると四人は丸尾の所へと向かった。
「丸尾君!」
「はい?」
「大変だ!笹山さんが堀内に襲われている!今すぐ助けに行こう!」
 鹿沼が催促するが、丸尾は体を震えさせた。
「ヒ、ヒエエーー!?ワタクシが!?それはズバリお断りでしょう・・・」
「何言ってるんだい?役に立とうとするのが学級委員じゃないのかい?」
 本郷が問いた。
「し、しかし、ワタクシは喧嘩が苦手なもので・・・」
「何言ってんの?!臆病者!!学級委員隊の生みの親の君がそんなの怖がっててどうすんの!?」
 ひろ子が丸尾を叱咤した。
「う・・・」
「そんな意気地がなくてよく学級委員ができるな!君のクラスの女子だろ!?なら助けに行くのが学級委員として普通じゃないのか!?誰かに行ってもらうんじゃなくて自分から行くもんなんだよ!!」
 鹿沼は丸尾を説き伏せようとした。本郷も、ひろ子もたかしも丸尾を睨みつけた。
「お願いだよ、丸尾君!!」
 たかしも懇願した。
「わ、分かりました!ズバリ、行くでしょう!!」
 たかしと学級委員隊は出動した。
「そういえば横須君は?」
 本郷が聞いた。
「そうだな・・・」
 鹿沼は2組の竹村の姿を見ると声を掛けた。
「おーい、竹村君。君のクラスの横須君知らないかい?」
「横須君?堀内を止めようとしたんだけど、来てないよ・・・」
「もしかして・・・」
 ひろ子はまさかと思った。
「横須君達も取り残されている!?」
「う、なら一緒に助け出そう!!」
「うん!!」
 横須を欠く四人の学級委員隊とたかしは校舎へとかけて行った。
「あ、ズバリ、待ってくださいでしょう!!」
 途中、五人は花輪達とすれ違った。
「お前らどこへ行くんだ?」
 大野が聞いた。
「君のクラスの笹山さんが堀内君に襲われているって聞いたんで助けに行く所だよ」
 鹿沼が答えた。
「ええ!?」
「ところで君達が取り押さえているのは誰だい?」
 本郷が聞いた。
「隣町の親分だよ」
「そうだったのか・・・」
「とにかく僕達で笹山さんを助けるよ」
「分かった!気を付けろよ!!」
 こうして五人は校舎に入って行った。堀内から暴行されている笹山や安否不明の横須らを助けるために。

「くそ!ごめんよ、僕の代わりに行ってくれて!本当に俺はなんでこんな時に卑怯な事を・・・!!」
 藤木は万全な状態でスケートの大会に臨む事と大会を諦めてでも笹山を助ける事のジレンマで悔しさのあまりに拳を地面に突き付け、悔し泣きした。その時、後ろから永沢が現れた。
「藤木君、君は西村君達に笹山さんを助けに行かせるなんて相変わらず卑怯者だね」
「永沢君・・・」
「今の藤木君は卑怯じゃないわ!」
 リリィが永沢に反論した。
「藤木君だって本当は助けに行きたかったけど、私が大会前に怪我して欲しくなかったから止めたのよ!それにこんな事が起きたのはあの人達のせいでしょ!?」
 リリィは花輪達に抑えられている山口を指差した。
「でも結局藤木君は動かなかったじゃないか」
「永沢君!貴方はどうして藤木君を傷つける事しか言えないの!?」
「だって本当のこ・・・」
「もう二人共やめてくれ!!」
 藤木は自分の事で喧嘩している様子に耐えられなくなった。
「どのみち卑怯呼ばわりされるし、自分でも卑怯だって分かってるよ!やっぱり僕も行くよ!西村君達と一緒に!!」
「ダメ!!」
 リリィは藤木にしがみついて止めた。
「本当に助けられたとしも怪我して氷滑り(スケート)ができなくなったらどうするの!?それでも笹山さんが悲しむわ!!」
「でもやっぱり笹山さんに悪いよ・・・」
「ちょっと二人共、どうしたの?」
 まる子が近付いた。
「笹山さんを助けに行こうとしてるんだけどリリィがスケートの大会で怪我しちゃ行けないからダメだって・・・」
「笹山さんってまる子のクラスメイトだったわよね?」
 共に現れたまる子の姉が聞いた。
「そうなんです!今逃げ遅れて暴力を振るわれているんです!!」
 藤木は泣き叫んで言った。
「・・・藤木君、私達が助けに行ってあげるわ」
「え?そんな迷惑は・・・」
「大丈夫よ。上級生に任せて。よし子さん、助けに行きましょう!」
「え?うん、そうね!!」
 さきこはよし子に小山と根岸を呼んで校舎へ向かった。
「お姉ちゃん、気を付けてね!!」
 まる子は姉の無事を祈りながら見送った。
「藤木君、きっと西村君や鹿沼君達、まるちゃんのお姉さん達がきっと笹山さんを助けてくれるわ。信じようよ!」
「う、うん・・・」
(笹山さん、ごめんよ・・・)

 笹山は山口の部下から鋸で足をちぎられかけた。足をじたばたさせて切断まではいかなかったが、すねの流血は半端なく溢れた。それでも堀内の頬に噛みついている口を放す事はなかった。
「おい、お前ら、大丈夫か!?」
 先ほど大野と杉山から制裁を喰らっていた別の山口の子分が駆け寄ってきた。
「こ、こいつが、離れねえんだ!」
「何!?この野郎!!」
 別の子分が加勢に入る。完全なリンチ状態だった。その子分が笹山の頭や背中を殴ったり、野球のボールをぶつける。そしてまた別の子分が笹山の髪を引っ張って堀内から無理やり引き離した。
「ったく、ふざけやがって!!」
 堀内の左頬には笹山の歯形が付いていた。堀内はバットで笹山の顔を殴りつけた。笹山は顔を抑えた。鼻骨が折れて鼻血が出た。さらにあの時、藤木を庇った時と同じように歯が折れ、口内から血を流していた。
「ったく、テメエはそこで本当に死んでろ!!そんで今からどんな葬式挙げてもらうか考えやがれ!!」
(うう、藤木君・・・)
 笹山は動けなくなった。それでもバットで殴られ、鋸で体の各部を切りつけられる。その時だった。
「お前ら、いい加減にしろ・・・!!」
 皆が振り向いた。先程堀内に止めにかかったものの、山口の子分から鋸で頭を切られた横須が赤坂、柴田と共に現れた。
「はん、テメエらは引っ込んでろ!!」
「本当に殺す気なのか!?」
「うるせえ!!」
 その時、反対側からもたかしや本郷、鹿沼、ひろ子、丸尾の学級委員隊が現れた。
「堀内君!君は何をしているんだい!?」
 たかしが聞いた。
「うるせえ!!」
「横須君、君は無事だったのかい!?」
 鹿沼が横須に聞いた。
「ああ、頭を切られているけど・・・」
 たかしは拳を握りしめて飛び掛かった。
「邪魔だ!!」
 堀内がバットを振るう。たかしは腕で抑えたが、その時、山口の部下がたかしを抑えつけた。たかしが堀内にバットで再び殴られそうになる。
「西村君!!」
 本郷も、鹿沼も、ひろ子も飛び込んだ。たかしへの攻撃は回避された。丸尾は恐ろしさで動けなかった。その時、別の集団が駆け付けた。
「貴方達、大丈夫!?」
「あ・・・」
 たかしはその女性を見た。顔はまる子に似ていたが、年上だ。まる子の姉とその友人だと気づいた。
「何をしているんだ!」
 小山が吠えた。そして、六年生達も喧嘩の収束にかかった。子分の一人が鋸を振り回したが、横須が決死の体当たりをした。さきこがその子分を捉え、鋸を取り上げた。
「こんなもの振り回して危ないじゃない!!」
 さきこは怒鳴りつけた。根岸とよし子が鹿沼らと協力して堀内からバットを取り上げた。堀内が鹿沼と根岸に身動きを封じられた。たかしが堀内に近づいた。
「堀内君、君は・・・、最低な迷惑者だよ!!」
 たかしは拳を堀内の顔に突き付けた。
「この野郎・・・!」
「僕にいじめをさせた恨みを晴らしてやるよ!!」
 たかしはもう一発、堀内の顔を殴った。ひろ子と本郷は笹山に近寄った。彼女の姿は全身血だらけだった。
「さ、笹山さん!笹山さん!!本郷君、急いで運ぼう!!」
「うん!」
 その時、警察官が5、6名駆け付けた。
「君達、大丈夫かい!?」
「はい、ですが、この子が・・・!!」
 ひろ子が笹山を警官達に見せた。
「分かった。救急車も回したから今すぐ校庭に運んでくれ!!」
 堀内と暴れん坊の子分は警官に取り押さえられた。ひろ子と本郷は大急ぎで笹山を運んだ。 
 

 
後書き
次回:「罪悪感」
 笹山がようやく救出された。付き添いとして藤木は救急車に同乗し、そして笹山の手術が行われるが、笹山を見捨てて逃げたとして藤木は己の罪悪感に苛まれてしまい、ある事を考えようとする・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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