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ロボスの娘で行ってみよう!

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第15話 暗雲のエル・ファシル


えらい事が起こります。

皆さんの予想の斜め上をいったかも。


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第15話 暗雲のエル・ファシル

帝国暦479年5月16日

■オーディン ノイエ・サンスーシ   

 この日、エル・ファシルにて叛乱軍を撃破しエル・ファシル星を包囲下に置いたとの連絡があった。包囲している艦隊からは、艦隊の増援と人員輸送用船の派遣を求める連絡が有った。
イゼルローン要塞では直ぐに増援1500隻を送ったが、人員輸送船は中々派遣されなかった。

それは、幾つかの要因が複合で重なった結果であった。
一つには、300万人もの人員を運ぶだけの輸送船をイゼルローン要塞では直ぐに用意できない為であった。まさか此ほど簡単にエル・ファシルが包囲下に出来るとは思っていなかったこと。

第二にオーディンでの理由であった。
なんと、久しぶりに叛徒の惑星を包囲下に置き300万人という農奴を手に入れられると言う大慶事である。その為に農奴をどの様に分けるかで貴族達の間での駆け引きが行われていた。

「300万人もの農奴が手に入るとは誠に慶事じゃな」
「国務尚書閣下、その事につきまして、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、カストロプ公などのお歴々が、農奴の分配について相談が有ると陛下をお訪ねに来ておりますが、如何為さいますか?」

「陛下は良きに計らえとの事じゃから、お歴々は此方へお通しするようにいたせ」
「御意」

暫くすると、ブラウンシュバイク公を筆頭に数十人の貴族が詰めかけてきた。

開口一番ブラウンシュバイク公が用件を言い出した。
「国務尚書、陛下に謁見できぬとはいかなる仕儀だ」
「公爵、陛下はグリューネワルト伯爵夫人の元へ行かれたのでな」
「なんと」

「公爵方のご心配はもっともですな、しかし陛下より私がこの度のことを差配する様にとの事でな」
リヒテンラーデ侯の言葉に貴族達は納得したように頷く。
リッテンハイム侯が訪ねてくる。
「それでは、300万人もの農奴の分配は如何様にするのか?」

「此処は、儂に任せて頂きたい」
財務尚書カストロプ公が言い出すが、他の貴族はカストロプ公の悪行を知っている為に、此奴は独り占めする気だと言う目で見る。

「公爵、分配についても陛下より私が差配を任されている」
リヒテンラーデ侯が話すと、カストロプ公悔しそうに呟いた。
「それでは致し方無いか」

ヘルクスハイマー伯が話し出す。
「国務尚書殿、そのエル・ファシルとやらを包囲したのは我が一門の者、勲功一としていただけないと鼎の軽重を問われまずぞ」
「何の、増援は我が一門ではないか」
「なんの、この度の作戦を立てたのは、我が一門だ」

「いや、此処は国有財産として一端は財務省に所属させるべきでは」
「それでは、苦労が水の泡だ」

多くの貴族がてんでバラバラにそれぞれのエゴによる主張をし始めたのである。
ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯もカストロプ公も己の利益の為に主張するので収拾が付かない為、リヒテンラーデ侯が調整をし続けるのであった。

リヒテンラーデ侯はこの害悪共めと思いながら、朝から寵姫と乳繰り合う陛下のことをあきれ果てながら、このような時こそ少しは仕事をして頂きたいと思うのであった。

結局農奴分配話し合いが終わったのは実に1週間も後の事であった。それより前にイゼルローン要塞では近隣の星系から貨物船や軍用輸送艦までかき集めてすし詰めにすれば300万人を輸送可能な艦船を集めていたが、それだけでは飽きたらず、見目麗しい農奴は貴族達が慰め者にする為に特に念入りな輸送が必要であるとの意見で客船までが用意される始末である。

また会議中でもさっさと揚陸艦で惑星を占領して、順次、船を出しピストン輸送で農奴を輸送すればいいとの意見が軍部より出たが、貴族連中から見目麗しい農奴を軍部が横取りすると言う意見があり、それには及ばずと命令が下る始末であった。皆が皆300万人という大量ゲットに浮ついていたのである。

結果的に輸送船はイゼルローン要塞で無為に過ごすことになり、さらに貴族連中がそれぞれを信用できない為に、人狩りに参加させるべく自領から艦船を派遣して来て、占領艦隊に参加せせる為更に時間がかかったのである。

結局農奴輸送艦隊がイゼルローン要塞を出発したのは5月28日であり、到着予定は6月1日である。艦数は戦闘艦艇5275隻、揚陸艦、輸送船など1300隻程であり、エル・ファシルで包囲している艦艇を足すと、6月1日現在で艦艇数7589隻、補給艦、工兵艦、揚陸艦など562隻、農奴輸送船870隻で艦艇兵員数96万2945名、地上部隊10万名となる。それら艦船がエル・ファシルに勢揃いした時エル・ファシル300万人の運命も地獄へと突き落とされるのである。




宇宙暦788年5月29日

■自由惑星同盟 シャンプール星系

 この日昼過ぎ、ポレヴィト星系からシャンプール星系間を僅か13日で走破した第8艦隊は同盟軍造修敞及び民間ドック、近隣の星系から集まってきていた工作艦や民間ドック船などにより直ちに整備が始められた、流石に全速力で駆け抜けた為に不具合を出す艦も見られたからである。

途中不具合の出た艦は後から続行させ、余りに酷い艦は各星系で修理の後集まるようにした為に、これ以降も五月雨式に続行艦が到着してきていた。

またシャンプール補給敞や軍が手配した民間貨物船などからも、順次エネルギーと物資が補給されていた。その間に兵員を半舷上陸させ英気を養わせているが、司令部は大忙しで休む暇もないので、タンクベットで2時間睡眠を行い仕事を行っている、その中に顔面に包帯をグルグル巻いてミイラのような姿で左目には眼帯を付けたリーファの姿も有った。

リーファはクリスチアン大尉に殴られて入院中であるが、シャンプール到着後にてんてこ舞いの幕僚を手伝う為に軍医に無理を言って数時間だけという約束で補給の仕事を手伝っているのであった。その姿を見て幕僚や艦隊の将兵達に感心されていた。まあ、余り口が利けない状態なので書類整理等がメインであるが、事務力は十分に発揮されていた。

「候補生、うちの分艦隊3000隻の補給はあとどの位で終わるかね?」
そう話しかけて来たのは、あのウランフ中将であるが、今は未だ准将であった。
そう言われたリーファは、此ですと頷いてから書類を渡す。
「ご苦労さん、余り根を詰めない方が良いぞ」

リーファは頷きながら書類の山と格闘を再度始める。
第8艦隊はエル・ファシル救援の為に全艦隊が一丸となって準備を続けているのである。
艦橋でも臨時編成の補給隊の指揮官が挨拶に来ている。

「司令官閣下、小官は臨時編成の補給隊指揮官マスカーニ大佐であります」
「大佐、今回は宜しく頼むよ」
「はっ」


市街地では、半舷上陸組も休むことも仕事であるからと言われて、英気を養いながら救援を考えているのである。

翌日の30日15時全ての補給と出来うる限りの補修が済んだ艦隊はシャンプール星系を多くの人達の歓声と共に出発した。この時点でも補修が終わらない艦艇や到着できない艦艇が1000隻ほど残っていたが彼等は後続の病院船などの護衛に参加する事になっていた。

エル・ファシル救援に行きたいが星系を守る為に残らなければならないシャンプール星系警備艦隊。そして工廠や工作艦、民間のドック船や貨物船などから航海の無事を祈るの発光信号が発せられている。それを見ながら各艦とも敬礼をしながらエル・ファシルへと向かうのである。

シトレ司令官の命令が下る。
「全艦発進、目標エル・ファシル!」
各艦で力強く復唱がされる。
「「「「「「「「全艦発進、目標エル・ファシル!」」」」」」」」」
次々に分艦隊が進発する。エル・ファシルへエル・ファシルへと。

  

宇宙暦788年5月30日 午後11時

■自由惑星同盟 エル・ファシル 同盟軍駐屯基地

 リンチ司令官やヤン、ラップ等が必死になって避難の準備や折衝を行っている。時間がかかっているのは輸送船の手配や艦艇の無人化ソフトと各艦の同調等を行っていたからである。その頃、参謀長ウィリアム・ジョイス准将以下十数名が密かに会合を開いていた。

「閣下、あんな若造の作戦なんぞ成功するわけがありません」
「そうです、大体司令官が負けなければこんな事には成らなかったんだ!」
「閣下、如何致しますか、このままでは全員捕虜になるだけです」
「閣下、帝国の捕虜になったら、悪名高い矯正区行きです何とか成らないのでしょうか?」

ジョイス准将が語り出す。
「みんな聞いてくれ、今回の事態を起こしたのはリンチ司令官の怠慢である。我々には落ち度はない、現在行われている若造の浅知恵では逃げることは不可能だ、ここは覚悟を決めねばならない」

集まった者達全員がジョイス准将を見つめる。
「最早逃げることは不可能だ!そこでこの脱出計画を帝国軍に伝えようと思う」
「閣下、それでは我々も捕虜になるではないですか!」

「パーカスト大尉、落ち着け。閣下のお考えは?」
「うむ、帝国軍へ誼を得ようと思う、300万人を差し出し我々を見逃して貰うか、最悪でも亡命者として遇して貰おうと思う」
「それは、いい手ですが、旨く行くでしょうか?」

「通信妨害で通信が出来ませんし、下手に電波を出せばリンチ達に気がつかれます」
「グメイヤを乗っ取って発光信号で情報を伝えようと思う」
「旨く行きますかな?」

「それしかないのだからな、やるしかない」
「ジェンキンス少佐以下はシャトルの確保を行え、ランヌ大尉以下は奴らの動きに注意しろ、良いかこの事がばれたら全員一蓮托生だ判ったな」


宇宙暦788年6月1日 午前5時 

徹夜で仕事をしていたリンチ司令官の元に一人の人物が密かに訪ねてきた。

「閣下、宜しいでしょうか?」
「パーカスト大尉、どうしたのかね?」
「閣下にお話があります」

パーカスト大尉は蒼い顔をして真剣そうに話す。
「実はジョイス准将達が帝国軍に民間人300万人を売り渡す算段をしてるのです」
「なんだと、詳しい事を話してくれ!」
「私はこのような事は良心の呵責に堪えられません。実は・」

その時司令官室の扉が開き、数名の男達が飛び込んできた。
「パーカスト、貴様裏切ったな!」
ジョイス准将が、2人にブラスターを向けながらしゃべり出す。

リンチ司令官が怒りを露わにしながらも、冷静に話し出す。
「ジョイス准将、本当なのか?」
「ほう、司令官にも知られたか、本当ですよ」

ジョイス准将は悪党面で話し始める。
「300万人を売り渡して、我々は助かるのですからな此ほど良いことはない」
「何を言うか。市民を守るのが軍人ではないか!」
「ふっ、きれい事を!」
その時司令官室の電話が鳴り始めたが出られるわけがない。

「貴官らは何をしているのか判っているのか」
リンチ司令官は他の士官達に問いかけるが他の士官達は何も言えない。
ジョイス准将が持つ携帯が鳴り出しそれに出る。

「うむ、確保できたか、うむ少々早いが計画を開始する」
そう言い携帯を切るり、リンチ司令官にむき直す。
「お喋りが過ぎたようですな、少々早いが我々は失礼しますよ」

「そんな事を許すわけがない!」
「ハハハ。許す、そんな事は関係有りませんよ、貴方は此処で死ぬのですから」
そう言ってブラスターを向け、パーカスト大尉を撃った。

腹を撃たれて倒れるパーカスト大尉。続いてリンチを撃とうとする。
その時、部屋の外で見張っていた、キム中尉が連絡が無いのを怪しんだ者達が駆けてくると連絡してきた。

その報告に皆が一瞬よそ見をした瞬間にリンチ司令官がブラスターを抜いて応戦状態になる、しかし多勢に無勢リンチも数発被弾し倒れ込むが、ジョイス准将達は止めを刺せずに逃げ出した。

ジョイス准将達はシャトルを強奪しグメイヤに向かい脱出していった。
司令官室では駆けつけたラップ中尉以下が血だまりに倒れているリンチ司令官とパーカスト大尉を見て愕然としていた。

「リンチ司令官閣下ー!!」
司令官室にラップ中尉達の叫び声が響いた。

空港ではヤン中尉が飛び立つシャトルを見て怪しんで、
先ほど連絡に出ない司令官室へ向かったラップへ連絡をしようとしていたのである。
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エル・ファシルの帝国軍がぐずぐず包囲だけしていたのを自分なりに考えて今回の様な輸送船不足と貴族間の駆け引きの結果ではないかと推測し今回の文章にしました。
 
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