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とある3年4組の卑怯者

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126 怨念(うらみ)

 
前書き
 前回までがみどりちゃんの学校の話でしたので、今回からは藤木の学校の話にしたいと思います。またもやハードボイルドになりますが、これまで出番が多くなかったキャラを中心に登場させたいと思います。 

 
 昼休み、藤木は笹山から声を掛けられた。
「藤木君!」
「さ、笹山さん・・・」
 笹山は周りを確認するように見回してから用件を言う。
「昨日ね、お母さんとアップルパイ作ってみたの。よかったら食べに来ない?」
「え?僕でいいのかい?」
「うん、藤木君、中部大会で頑張ってたし、全国でも頑張って欲しくて、その気持ちで作ったの」
「ありがとう、是非頂くよ!」
「よかった」
 笹山は安心したように言った。そして再び周りを見回した。
「どうしたんだい?」
「小杉君がいないか確かめてたの。もし聞かれたらまた食べつくされちゃうんじゃないかと思ってね」
「ははは、そういえばそうだね・・・」
 二人とも小杉が食べ物に関して恐ろしい執念を見せる事を熟知していたのだった。もし聞かれたら「俺にも食わせろ!!」などと喚いてアップルパイを独り占めされるかもしれないだろう。

 藤木は笹山の家へとお邪魔した。
「こんにちは」
「あら、藤木君、こんにちは」
 笹山の母親が出迎えた。そして中に入ると、笹山がアップルパイを皿に分ける準備をしていた。
「藤木君、いらっしゃい!」
「この子ったら、藤木君が来るって楽しみにしてたのよ」
「お、お母さん・・・」
 笹山は照れた。藤木はアップルパイをご馳走になった。
「笹山さん、凄く美味しいよ!」
「う、うん、ありがとう!!」
 笹山は藤木の感想に非常に喜んだ。
「そうだ、藤木君、今度スケートの全国大会に出るのよ」
 笹山は母親に報告した。
「へえ、どこでやるの?」
「盛岡です」
「盛岡か。遠いわね。中部大会の時は花輪クンにお世話になったけど、今度は遠いからちょっと無理かもしれないわね・・・」
「う、うん・・・」
「うーん、笹山さんがいてくれたらなあ」
「藤木君・・・」
 笹山はできれば全国大会でも藤木の姿を見たかった。しかし、盛岡は東北である。行くには新幹線で東京に出てそこから東北線の特急列車か花巻空港へと向かう飛行機に乗らなければならない。花輪がまた連れて行ってくれる事を祈るしかなかった。その可能性も低いのだが・・・。
「それじゃ、ごちそうさまでした。さようなら」
「藤木君、また来てね」
「うん・・・」
 藤木は帰った。できれば中部大会の時のように笹山とリリィに自分の演技を見せてあげたいと思っていた。しかし、簡単に行ける場所ではないので行けないのも仕方ないと思っていた。

 堀内は自身の悪行で自宅謹慎を言い渡され、遺恨が募っていた。他のクラスの授業に勝手に入り込んだ事で文句を言われたり、やかましく注意されたり、学年全員の前で公開処刑されたりと散々だった。さらに、球技大会の打ち上げが4組の花輪の家で行われたと聞いて自分だけ誘われなかった事、その大会でもへまをやらかしたクラスメイトを制裁しようとしたことで勝手なプレーをしたと指摘された事、それらの怨みで西村たかしを利用して報復を行った事で児童相談所通いにされた事・・・。怨みが溜まっていく一方だった。ある時、母親が買い物に行っている時、外に出たくなって留守番を命じられているにも関わらず外出した。
(ああ、ムカつくぜ!!あいつらぶっ殺してやりてえ!!)
 堀内は隣町まで来ていた。そしてとある公園に入り、鉄棒を蹴った。
「ああ、クソ、クソ、クソ!!」
 遊んでいる子供達は堀内を見て、怪しい目で見ていた。それも気にせず、堀内は鉄棒を蹴ると、今度はベンチを蹴った。その時・・・。
「オイ、どウしたんだ、オマエ?」
 堀内は誰かに呼び掛けられた。
「うるせえ!!おめえには関係ねえよ!!」
「まア、そウいウなって。オマエ、ムシャクシャしてんだろ?」
「ああ、そうだよ!!」
「それは俺様も同じだぜ。隣の町の公園を縄張りにしよウとしたら二度も邪魔されちまってよ。しかも二回目なんて大人を召喚しやがってマジでこっちも散々だったぜ」
「はん、そりゃ残念だったな」
「オマエもムシャクシャしてんなら俺様も手伝ってやるよ、オマエをそウさせた奴らへの復讐をな」
「できんのかよ?」
「アア、オマエ、昔町内会長やってた奴の息子がウザイと思った奴の家族を殺そウとした事件、覚エてっかア?」
「え?」
 堀内はその男に言われてそのような事件を思い出した。
(そういやその事件で4組の永沢って玉葱野郎と城ヶ崎ってクソ女が入院したっけな・・・)
「だが、失敗だったぜ」
「アア、そウだ。だが、ソイツみてエに復讐をする事はできるんだ。オメエもウザイ奴らに復讐してエなら手伝ってやるぜエ!」
「いいのか?なら面白えな!!」
「で、オマエは学校はドコだ?」
「入江小だ」
「オオ、入江小!そウイや、俺様もちょウどアソコの学区の公園を奪おうとしてそこの学校の奴らに恥を掻かされた怨みがアんだよオ!手を組んでやるぜエ!俺様はこの町の親分、山口のぼるだ。宜しくなア!」
「俺は堀内竜一だ。学校への復讐が楽しみだぜ!!」
「だが、アの事件のせイでサツの警備が厳しくなってっからよオ、気イ付けろよオ!!」
「ああ」
 二人はある事の打ち合わせを行った。

 たかしは花輪の家に来ていた。花輪の愛犬・ミス・ビクトリアを紹介するとみぎわから誘われた為だった。たかしは自分の犬のタロを連れて花輪家に行ったのだった。その場には花輪やみぎわ、城ヶ崎もいた。城ヶ崎は同じ犬を飼う者として集まりたくて来ており、飼い犬のベスを連れていた。みぎわもまた、アマリリスを連れて来ていた。なおみぎわは城ヶ崎が来る事が多少気に食わなかったようだった。
「Hey、西村クン、君のpuppyもcuteだね」
「ありがとう、僕のタロは大事な友達でもあるんだ」
「そうよ~、ときどき寂しくないようにタロのお母さんの犬に会わせてあげているのよ~」
 みぎわが説明を補足した。
「私と花輪クンが会えないと寂しくてたまらないのと同じよお~」
 みぎわが花輪に近づいた。
「み、みぎわクン、もう少し離れたまえ・・・」
 みぎわの暑苦しい態度に何も言えないたかしと城ヶ崎だった。
「でも、タロも西村君に懐いているわね。それだけ仲が良いのねっ!」
 城ヶ崎がタロとアマリリスが仲良くすり合っている所を見ていた。
「うん、前にみぎわさんとアマリリスをタロのお母さんの飼い主の家に連れて行った時も一緒に遊んでいたんだ」
「へえ~、犬の友達っていうのも見ていて微笑ましくなるわね。ベスも仲良くなれるかしら?」
 城ヶ崎の犬のベスはおとなしくしていたが、城ヶ崎に催促されてタロとアマリリスの元へ向かう。そして目を合わせた。お互い笑いあっているようだった。花輪の犬のミス・ビクトリアも傍へ寄ってきた。タロは友達が増えて幸せそうに見えた。
「へへ、良かったね、タロ、友達が出来て!」
「ええっ、嬉しそうな顔してるもんねっ!」
「それじゃあ、everybody、庭の散歩に行こうじゃないか」
 花輪が提案すると、四人は花輪家の庭を散歩した。四人と四匹は満喫した。たかしはタロに友達が、そして花輪やみぎわ、城ヶ崎と同じ犬を飼う者同士としての交流を楽しむ事ができてよかったと思うのであった。 
 

 
後書き
次回:「校内暴力(テロ)
 堀内と隣町の親分・山口のぼるは入江小学校への復讐を画策した。そして授業中、藤木達はその校内テロに巻き込まれる事となる。藤木達は逃げようとするのだが・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語が始まる・・・!! 
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