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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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第六感

 
前書き
南がメインになるかと思ったが北部がメインになってしまった今回のお話。
そろそろ南部が増えてくると思うんだけど・・・何気に難しい・・・ 

 
「「・・・」」

睨み合って動かないギルダーツとティオス。だが、両者の表情は大きく違っている。口をきつく結んでいるギルダーツと笑みを浮かべているティオス。どちらが余裕があるのか、誰の目から見ても明らかだった。

バッ

先に動いたのはギルダーツだった。彼は手をティオスに向ける。それを見て青年は冷静に体を横にズラすと、後ろにあった木々が一瞬で粉々になる。

「吹き飛びな」

ギルダーツのクラッシュを難なく回避したティオスはその位置から腕を振るう。すると、突風が吹き荒れ四人を強襲した。

「くっ!!」
「風!?」
「なんて力だ」
「踏ん張るので精一杯だ」

その強風に耐えるために足に力を入れていたギルダーツ。ティオスの狙いはそれだった。動きが取れない彼に一瞬で詰め寄ると、黒い魔力を込めた拳を振るう。

「ほらよ」
「ガハッ!!」

目にゴミが入らないようにと片腕で顔の周りをガードしていたことが仇になってしまった。視界が減少していたことでティオスの攻撃に反応することができなかったギルダーツは、彼の拳をまともに受けて尻餅を付く。

「チッ」

追撃に備えてすぐさま体を起こしたギルダーツ。その予想通り、ティオスは高々と足を振り上げ、自分に狙いを絞っていた。

「ギルダーツさん!!」

目にも止まらぬ速さで降り下ろされた右足。しかし、ギルダーツはそれを間一髪で転がるようにして回避・・・

「できてればいいんだけどな」
「!?」

したかに思えた。だが、ティオスは交わしたはずのギルダーツの真後ろにいつの間にかやって来ており、彼がそちらを振り向いた瞬間・・・

ゴンッ

強烈な右ストレートが顔面に入れられた。

「ガッ・・・」

鼻血を出して倒れそうになった妖精。だが、この男はそれを許さない。胸ぐらを掴み地に落ちようとした彼を引き寄せると、今度は左手での往復パンチを幾度となく繰り出す。

「やめろ!!」
「その手を離せ!!」

意識が飛びそうになっていたギルダーツを助けるべくスティングとグラシアンが救助に走る。それを視界の端で捉えたティオスは、捉えていた男を二人に投げ付けた。

「「「どわぁっ!!」」」

二人よりも大柄なギルダーツを勢いよく投げつけたことによりスティングもグラシアンも地面を転がる。だが、その際彼らの後ろにいたはずの黒髪の青年はいなくなっていた。

「こっちか」

すぐさま後ろを振り返り魔力を溜めるティオス。しかし、そこにはいるはずの青年の姿がない。

「影竜の・・・」
「!!」

ローグは一度影になってティオスの背後を取った。しかしそれは相手に気付かれることを想定していたローグは影から完全には戻らず、青年が後ろを向いたタイミングで再度回り込み魔法を放つ。

「連雀閃!!」

両腕から翼のように黒い影を作り出して敵を吹き飛ばそうとしたローグ。ティオスは完全に背を向けていたため決まるかと思われた。だが・・・

「よっと」

彼は片足だけで再度ローグに体を向けると、彼の魔法の間を縫って拳を腹部に叩き込む。

「ガハッ!!」

ローグの読みのさらに先を行っていたティオス。彼は宙に浮いた青年の体に回し蹴りを入れると、ローグは倒れ込んでいるスティングたちの上に落ちていった。

「すまん・・・」
「大丈夫ですか?ギルダーツさん」
「あぁ・・・なんとかな」

四人が1ヶ所に落とされる形になった彼らはそのダメージも重なって苦しい表情。そんな状態でも、ティオスの猛攻は留まることを知らない。

「面白い魔法を見せてあげましょう」

黒装束の青年は手を天に向ける。すると、四人の真上の空に魔法陣が現れた。

「この魔法は・・・」
「そんなバカな!!」

噂でしか聞いたことがないその魔法。それよりも小規模ではあるが、描かれている魔法陣から命の危険にあることが用意に想像できた。

「超絶時空破壊魔法・エーテリオン」

青年の手が降り下ろされると、目の前の四人に絶望の光が打ち落とされたのであった。


















「どういうこと・・・」

絶対的な悪の前に苦戦を強いられる北方に対し、南方のハルジオン解放戦では、水髪の少年が想定外の事態にふらついていた。

「おい!!大丈夫かよ!!」
「しっかりしろ!!シリル!!」

今にも崩れ落ちそうだった少年をグレイとリオンが支えて声をかける。だが、彼はいまだに状況が理解できず、頭を抱えていた。

「なるほど。つまりお前のもう一つの目的は・・・」
「そうだ。そのガキに滅竜の魔水晶(ラクリマ)与えることだ」

エドラスのヴァッサボーネにシリルの父であるアースランドのヴァッサボーネは念話を使ってある頼み事をした。それはアースランドのどこかに隠してある滅竜の魔水晶(ラクリマ)をシリルに渡すこと。さらにはシリルに新たな魔法の修得方法を教えること。
彼はそれに喜んで従った。そのヴァッサボーネの息子がどんな人物かは知らなかったが、この双方を手にいれれば間違いなく強くなる。自分の欲を満たしてくれると考えたからこその行動。

「ポーリュシカさんと仲が悪いってのも~」
「人を助けるのと人を傷つけるのじゃ、真逆だもんね」

薬剤師として人々を助ける仕事をしているエドグランディーネことポーリュシカ。それに対し強者との戦いにのみ興味があり、人を傷つけることを厭わないエドヴァッサボーネこと天海では真逆の立ち位置。お互いが相手のことを知らないなどごく当たり前の話だ。

魔水晶(ラクリマ)をカミューニに騙し取られて東洋の国に身を隠していたのに、なぜこのタイミングでこちらに・・・ましてやフィオーレではなく西の大陸(アラキタシア)に渡ったのだ?」

鋭い眼光を光らせ問いかけるエルザ。天海はそれに無表情のまま答えた。

「簡単だ。あの男の情報を入手するキーマンがいると聞いたからだ」

そう言って彼が指を指したのは、ラクサスと共にアルバレス軍を撃退しているカミューニ。それを見て数人の事情を知るものは彼が誰を求めてアルバレスに乗り込んだのかすぐにわかった。

「リュシーか・・・確かに同じBIG3の奴なら・・・」

だがそれは裏返せばリュシーが早くからイシュガルを裏切っていたことになる。彼女と仲の良かった緋色の剣士からすれば、それは非常に心が苦しくなるものだった。

「だが、それならなぜアルバレスに付いた。お前ともう一人の奴は国を壊滅状態にできるほどの実力があったんだろ!!」

真っ青になっているシリルを支えているグレイが声を荒らげた。

「その国には強い魔導士が大勢いると聞いていた。だが、戦ってみれば皆雑魚ばかり・・・そんな時に、スプリガンに声をかけられたんだ」

アルバレス帝国の皇帝スプリガン。今回の戦争の引き金を引いたその男が彼を誘い込むのは簡単だった。

『君より強い人間を僕は知っている。彼と戦ってみたくないかい?』

それを聞けば彼の解答は一つしかない。その条件としてアルバレス帝国に付かなければならないのであれば、それは些細なものだったのだろう。

「この南方にそいつが現れると聞いて来たが・・・」

そう言った天海は距離を置いていたレオンに接近する。打ち出された拳。少年はそれを難なく手で叩いた。

「スピード、パワー、体力、判断力、第六感・・・全てが優れている。まさしくお前が俺の求めていた強者」

その狂気に満ちた瞳に映るのは金色の髪をした少年ただ一人。他の者など誰一人として映ってはいなかった。

「俺を認めてくれるのはうれしいが、生憎1対1(タイマン)を張るつもりはないぜ?」

無情な少年の言葉。それを受けて彼の背後から現れたのは、魔法陣を書き終えた少女とそれを持っているオレンジ色の猫。

「ファイア!!」

炎の渦を生み出したサクラ。レオンはそれから逃れるように逃げるが、天海はそれを簡単に消し飛ばしてしまった。

「あぁもう!!なんで決まらないのぉ!!」

不意討ち、速攻、好条件を揃えていたにも関わらず届かなかった攻撃に悔しさを爆発させる。だが、そんなことをしている余裕はなかった。

「目障りだ、落ちろ」

空に飛び上がっていた彼女の目の前までジャンプで来ていた天海。彼は油断していたサクラとラウルを地面に叩き落とす。

「ギャッ!!」
「フニャッ!!」

敵は魔法を使えない人間それならば攻撃範囲は絞られると思っていたのに、それさえ覆す彼の実力に(おのの)いた。

「俺は魔法は使えんが、あの程度ならいくらでも落としてやれるぞ?」

至って当たり前のような顔をしている天海。これには全ての者が額から流れる汗を感じずにはいられない。全員が尻込みしている中、金髪の少年は前に出て青年へと向き合う。

「みんな、フォローしてくれ。俺がメインで戦う」

彼に対抗するのは自分しかいないと察した彼は先頭で戦うことを決意する。しかし、それに異論を唱える者もいた。

「レオン・・・俺もやる」

そう言ったのは彼の親友であるシリル。まだ額に汗を浮かべている彼はグレイとリオンから一人立ちすると、少年の横に立とうとする。

「悪いけど、それは無理だ」
「なんで!?」

素っ気ない少年の言葉に怒声を上げる。それにレオンは冷たい目で返した。

「今のお前じゃ、誰にも勝てない」

憐れむような目付きでそう告げる友人に驚愕を受ける。彼は何事もなかったかのように敵に向き合うと、魔力を高めていった。

















響き渡る爆音、周囲に巻き上がる砂煙。その中心にいるスティングたちは、自分たちが無傷であることに驚いていた。

「あれ・・・なんで・・・」
「俺たち・・・無事なんだ?」

かつて評議院が保有していた最強と言っても過言ではない魔法。それをまともに喰らったはずなのに、なぜ自分たちが無事なのか、訳がわからない。

「ギリギリだったが・・・間に合ってよかったぜ」

そう言ったのはギルダーツ。彼らが無事だった理由、それはギルダーツが寸でのところでクラッシュを発動し、難を逃れていたのだ。

「さすがですね、まさか今のを止められるとは」

それに対し拍手を送るのは脅威的な破壊力を持つ魔法を繰り出した人物。その人物を見据えて、ギルダーツは目を細くした。

「今のエーテリオン・・・全力じゃなかったんだろ?」

その一言で、拍手をしていた青年の手が止まった。上がっていた口角が下がり、不機嫌そうな顔を浮かべている。

「なんだと?」
「本来のエーテリオンはもっと威力が高いはずだ。それが今程度ってことは、手加減してくれたのかと思ったが・・・」

ニヤリと笑みを浮かべるギルダーツに対し、苛立っている様子のティオス。彼は地面を蹴ると、魔法を防いで安心していた妖精を殴り飛ばした。

「ガッ!!」
「ギルダーツさん!!」

近くにあった木に叩き付けられるギルダーツ。ティオスはそこに目にも止まらぬ速さで移動すると、首元を目掛けて手刀を降り下ろす。

「なっ・・・」

そのまま地面に落ちるかと思われたギルダーツだったが、それをこの男は許さない。地面に付く直前で髪を掴んで止めると、引き寄せて腰にエルボーを入れる。

「俺の魔法が評議院より劣っているわけないだろ」

先程のエーテリオン。あれはティオスに取って本気の魔法だった。しかし、彼一人では評議院全体を用いての魔法よりも力が落ちるのは必須。ギルダーツはそれに気が付いていたからこそ挑発に出たのだが、それが仇となってしまった。

「偶然防げたからって、調子に乗ってるんじゃねぇぞ!!」

地面に伏せている彼に黒い冷気を込めた右腕を降り下ろそうとした。しかしその腕を、影になったローグに弾かれてしまい、あらぬ方向へ魔法が飛んでいってしまい、失敗に終わる。

「そう簡単にやらせないぞ」
「俺たちでお前を倒してやる」
「仲間がいれば、必ず勝てるんだ」

それを聞いてティオスはさらに不機嫌そうに口を尖らせた。

「仲間がいれば・・・か。本気でお前たちはそう思っているのか?」
「あぁ!!思っているさ!!」

これまでよりも低い声で問いかける。それに対しスティングは間髪入れずに答えた。

「俺たちは昔は仲間なんてどうでもいいと思っていた。でも、妖精の尻尾(フェアリーテイル)がその大切さを教えてくれた!!」
「そのおかげで俺たちはより強くなることができた」
「想いの力を、手に入れることができたんだ」

三人がそう言った瞬間、苛立っていたはずのティオスの口元が緩んだ。その瞬間、三人の背中を冷たいものが流れる。

「俺も昔はそう思っていた。仲間がいるから頑張れる。みんなで力を合わせればきっと何とかなる・・・でも、そんなものは幻想だ」
「そんなことはない!!仲間を想う強い気持ちは、絶対に負けることはないんだ!!」

なおも反論しようとしたスティングだったが、ティオスはそれを制する。彼は首を鳴らすと、厳しい言葉を投げ掛けた。

「確かにお前や妖精の尻尾(フェアリーテイル)はそれで勝ってきたんだろうが、じゃあ相手は?」
「「「え・・・」」」
「相手には想いの力はなかったのか?」

それを言われると、彼らは何も答えられなくなった。相手にも何か意志があるから戦うことになった。その際自分たちが勝利を納めたのは想いの力が強かったからなのか、それとも実力が上回っていたなのか説明ができない。

「そもそも、君たちの勝利も勝利と言えるか疑問だがね」
「何?」

言葉を失っていた彼らはその言葉で正気を取り戻した。しかし、それはすぐに失われることになる。神の子の一言によって。

「もし君たちが仲間を守りたいと想い戦うのであれば、この戦争の負けは確定している。なぜなら・・・」

そう言って彼が指を指したのは、多くの仲間たちが倒れ、苦しんでいる姿。中にはすでに息絶えている者もおり、四人は口を大きく開ける。

「既に数えきれないほどの犠牲者が出ているのだから」

“仲間”という戦う理由を見出だした虎。しかし、それはあまりにも大きすぎて、彼らが守りきることができないのだと思い知らされたドラゴンたちの動揺は、大きかった。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
皆さんもうお気付きでしょうが、現在原作でもあったカウントダウンが始まっています。
原作ではゼーラが出てくるまでのカウントダウンでしたが、当小説では違うものとなっています。
カウントダウンが終了した時どうなるか、お楽しみに。 
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