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提督はBarにいる。

作者:ごません
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春の訪れは揚げ油の香りと共に?・その2

「ど、どうだろうか?」

 二度揚げをしてカラリと揚がった唐揚げを、俺に見せてくる那智。生焼けを嫌ったのか、少し揚げ過ぎで予定よりも若干焦げている。

「若干焦げてるが……まぁ、この位はご愛敬だろ」

 彼女の手料理なんて、男からしたら大概嬉しいモンだしな。多少不味くても頑張って食うだろ。1つ摘まんでヒョイと口に放り込む。予定通り、卵白のお陰でパリッとした衣の食感が心地良い。その中から染み出す鶏の肉汁と醤油の味わい、それにニンニクと生姜の風味が合わさってハーモニーを醸し出す。揚げ過ぎで少し焦げ臭さが鼻に付くが、それ以外は申し分なく美味い唐揚げになっていると思う。

「うん、まぁまぁだな。後は揚げ具合に気を付けてやればいいだろう。そんじゃあ味付けのバリエーションを教えてくか」

「よ、よろしく頼むぞ!」

 まずは定番のバリエーション、塩唐揚げを伝授するとしよう。



《提督秘伝のジューシー塩唐揚げ!》※分量2人前

・鶏モモ肉:300g

・塩:小さじ1/2

・砂糖:小さじ1/2

・酒:大さじ1/2

・胡椒:少々

・すり下ろし生姜:小さじ1/2

・すり下ろしニンニク:適量

・卵白:Lサイズ1個分

・片栗粉:大さじ1.5

・薄力粉:大さじ1.5





「手順はほぼ一緒だ。モモ肉から筋と余分な脂を取り除いてカットし、下味を付けて20分寝かせる。卵白を揉み込んだら粉をまぶす」

「ふむ、手順は変わらないが……味付けが変わるのか。しかし塩唐揚げだから塩が入るのは解るが、砂糖は何故入れるのだ??」

「あぁ、それなぁ。水でも良いんだが、酒と塩と砂糖を一定の割合で混ぜてやると、肉に水分が染み込み易くなって、肉がジューシーになるんだ」

 大分科学的な話になるが、砂糖には肉のタンパク質と水分を結び付ける働きがある。そして塩には肉の表面をコーティングして保水を助ける働きがある。この2つを上手く組み合わせると、パサつく鶏むね肉もパサつきにくく、鶏モモ肉は更にジューシーに仕上げられる。水100ccに対して砂糖と塩を5gずつ加えて溶かした物を『ブライン液』と言い、こいつに15分程漬けておくだけで肉の味が段違いに変わる。是非とも試してみてくれ。

※ただし、5%以上の塩分濃度にすると浸透圧の関係で逆に水分や旨味が抜けてしまうので注意!

「成る程……理屈は解らんが、何となく理解した」

「細かく計量したりするから、料理に科学は付き物なんだがな?」

 料理は愛情!と語った料理研究家もいるが、愛情を込めるのは当然の事。そこから美味さを追求するならそれなりのやり方や法則がある、というのが俺の主張だ。

「さて、衣を付けたら揚げてくぞ」

 味付けをして寝かせておいた鶏肉に、卵白と薄力粉、片栗粉を纏わせる。

「そういえば、片栗粉だけではダメなのか?」

「ダメって訳じゃあねぇが……片栗粉だけの衣じゃあ、竜田揚げと大差ねぇぞ?」

「そうか、片栗粉の衣では竜田揚げになってしまうか……」

「まぁ、その辺は作る相手の好みに合わせれば良いんじゃねぇか?」

 唐揚げを引き上げる為に那智が油に突っ込んでいた菜箸がビクッと動き、その瞬間に跳ねた油が目の下に着地した。

「ぅあっち!」

「すまない、大丈夫か!?」

 跳ねた箇所が箇所だったから多少ヒヤリとしたが、揚げ物やってりゃ油ハネなんて日常茶飯事だからな。大した事はない。

「にしても、作る相手の好みに合わせれば……って言われて狼狽えるなんざ、初心いなぁ?」

 ニヤニヤと笑いながら指摘すると、那智の眉間にシワがよっていく。

「あまりからかうな!」

「おやおやぁ?俺は別に『彼氏の好みに合わせろ』なんて言ってねぇぞ?作る相手の好みに合わせろとは言ったけどな」

「な、な、な……」

 みるみる内に赤くなり、酸欠の魚のように口をパクパクさせる那智。作ってやる相手を思いやって作るのは、料理の基本中の基本。それが恋人に対してなのか、家族や友人に対してなのかはさておき。

「さて、アワアワしている暇はねぇぞ?基本の醤油と塩の唐揚げは教えたからな。こっからはアレンジレシピを教えてくからな」






《お家で簡単再現レシピ!?なんちゃってKFC》※分量:必要なだけ

・鶏肉(モモ肉、むね肉、手羽先等。骨付きオススメ!):食べたいだけ

・牛乳:400cc

・卵:1個

・薄力粉:2カップ

・黒胡椒:小さじ2

・オールスパイス:小さじ1.5

・塩:大さじ1.5~2


 フライドチキンと言えば、あの白一色のじいさんが目印のチェーン店が有名だよな。たま~にだが、無性に食べたくなる時がある。あの店独自の味付けは11種類のハーブやスパイスのオリジナルブレンドから成り立っているらしいが、これは家庭でそれに近い味を作れないか?とチャレンジしたレシピだ。

「さてと。まずは鶏肉の水分をペーパータオルを使って拭き取っておく。こうしないと、衣が上手く馴染まないんでな」

「私は何をすれば良い?」

「んじゃ、そこにある卵と牛乳を混ぜ合わせておいてくれ。粉を付ける前に浸しておく卵液だ」

「了解だ」

 那智が卵と牛乳を混ぜ合わせている間に、俺は秘伝の粉を作るぞ。秘伝っつっても、薄力粉に塩、黒胡椒、オールスパイスを混ぜ合わせてやるだけなんだけどな。オールスパイスが無い時には、シナモン、ナツメグ、クローブを1:1:1の割合で混ぜてやると同じような味になるぞ。

「那智、卵液が出来たら鶏肉を浸してくれ。5分位で良い」

 その間に油を200℃まで温めておく。卵液が肉に十分馴染んだら、粉をまぶす。余分な粉ははたき落として、温まった油に投入していく。

 揚げ時間は骨の有無なんかによっても変わってくるが、焦がさないように引っくり返しながら12~15分は揚げるように。衣が暗めの茶色になるくらいまで揚げないと、中まで火がとおっていなかったりするからな(特に骨付き)。

 揚がったかどうかの目安としては、肉汁が揚げ油に溢れ出して『ジュワーッ』と音を立て始めたらそろそろだ。

「こ、こんな感じか?」

「うん、今度は良さそうだな」

 焦げすぎている訳でもなく、美味そうだ。火の通り具合のチェックも兼ねて1つ摘まみ食いしてみる。ザクッという歯応えのある衣の中から、ジューシーな鶏肉が顔を出す。味が濃い目の衣と相俟って、酒の進む味に仕上がっている。生焼けの箇所も無いしバッチリだ。

「うん、こりゃ美味い」

 どんどん揚げて、店内にいた連中に配っていく。味が濃い目のフライドチキンに酒。合わない道理がない。揚げて配る側から消えていき、酒のお代わりの大合唱が響く。

「うむ、これは美味いな」

 那智も1本手に取り、かぶりついている。

「そういやぁ、那智は結婚を前提とした付き合いをするつもりなんだよな?」

「う、うむ。まぁ、そうなるな」

「そうか。なら俺からのアドバイスだ。家事は程よく手抜きにしとけ」

「な、何故だ!?」

 これはウチのお袋の受け売りだがな?付き合い始めや結婚当初に張り切り過ぎていつも以上に家事を完璧にこなすと、それが基準点になっちまう。そこからグレードを落とせなくなっちまうんだな。もしもグレードを落とせば『手抜きをしてる』とか『昔はこんなに雑じゃなかった』と言われて気分も悪い。

 だから、ある程度の手抜きをして余力を残しておけって事。基準点から上に行く余地があれば、自分も相手も心の余裕が出来る。ギクシャクしない。

「な、成る程……含蓄のある言葉だ」

「まぁ、いつもの干物女全開でいたら彼氏にも愛想尽かされるかもな?」

 そう言って俺がニヤリと笑うと、

「そ、それは幾らなんでも失礼じゃないか!?」

 那智は真っ赤になって抗議してきた。いや、さすがに休みの日に芋ジャー着てゴロゴロはダメだろ。 
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