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夢にまで見たが

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第一章

                夢にまで見たが
 遠山彩花はその料理の名前を聞いて不思議な気持ちになった。
「オマール海老のスープ?」
「何でも物凄く美味しいらしいわよ」
「そうらしいわよ」
 幼稚園で同じクラスの娘達にこう言われていてそうした気持ちになったのだ。そのうえで彼等の話を聞いていた。
「もう一度食べたら忘れられない」
「そんな味らしいのよ」
「とても美味しくて」
「私達そう聞いたわ」
「誰から聞いたの?」
 彩花は自分に話す波多野満里奈と弓月美奈子に問うた。三人は仲良しでいつも一緒にいる。
「それで」
「先生が言ってたの」
「オマール海老のスープって本当に美味しいって」
「前に海老フライのお話を二人でしてたら」
「そう言ってきたの」
「そうなの、海老フライより美味しいの?」
 それならとだ、彩花は満里奈と美奈子にまた問うた。満里奈の丸い顔と美奈子の細くてはっきりとした目の顔を見ながら。彩花は眉が太くはっきりした顔立ちだ。
「オマール海老って」
「そうみたいよ」
「本当に美味しいらしくて」
「ううん、伊勢海老みたいなものなの?」
 海老フライより美味しいと聞いてだ、彩花はこう考えた。
「それじゃあ」
「そうじゃないの?」
「やっぱりね」
「そんなに美味しいなら」
 今度はこう言った彩花だった。考えつつ。
「是非ね」
「食べたいのね、オマール海老」
「オマール海老のスープ」
「食べられたら」
 こう思うのだった、そしてだった。
 彩花はこの時からオマール海老のスープを食べたいと思う様になった、それで家に帰って両親にも姉にも話すが。
 話を聞いた小学生の早百合はこう言った。
「伊勢海老よりも美味しいの?オマール海老って」
「そうかも」
「伊勢海老って凄く高いけれど」
 普通の海老に比べてとだ、早百合はこうも言った。妹よりも眉は細いが顔立ち自体は姉妹でよく似ている。
「その伊勢海老よりも高いのかしら」
「そうじゃないかしら」
 彩花はよくわからない顔のまま姉に答えた。
「やっぱり」
「そうなの」
「凄く美味しいっていうから」
「凄く高いの」
 高いイコール贅沢イコール美味しいとだ、姉妹で考えて話していた。
「そんなに高いなら」
「私達食べられないよね」
「そうよね」
 二人でこんな話をした、そして両親も彩花に言われてだ。それでだった。
 子供達が寝てからだ、こっそりとこう話した。
「オマール海老な」
「そういえばまだ子供達食べてなかったわね」
「そうだったな」
「そうよね」
「オマール海老な」
 二人の父は考える顔でこう言った。
「料理出来るか?」
「ううん、海老よね」
 二人の母はこう返した。
「そうよね」
「あれだろ、大きな海老だろ」
「ハサミのある伊勢海老よね」
「だったらな」
「私海老は調理出来るから」
 伊勢海老の様な大きな海老を捌けるというのだ。
「魚介類捌くの得意でしょ」
「そうだよな」
「だったらね」
 それならというのだ。 
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