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天国と地獄<中世ヨーロッパパロディー>

作者:Gabriella
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10 謎かけの答えが唄の中にある、のは人間が好きなパターンの一つである。

図書館に着いた。
後から来る総悟たちのためにも、
席は長テーブルに確保する。

神楽ちゃんはしばらく座っている、
と言うので、私は早速ダンテの本を探しに行った。


「ラテン語文学」と書かれた本棚を探しだし、著者の「ダ」の列を探す。

ダ、ダ、ダ…ダンテ、
あった!



ダンテの「神曲」の地獄篇を探しだし、席に戻る。
すると、神楽ちゃんはいなくなっていたが、総悟たちは来ていた。

_「あれ?神楽ちゃんは?」

_「チャイナ?
オレたちが来たときにはいなかったですぜィ?なァ、多串くん。」

_「なァ、多串くんじゃねェェェッ!だが、あァ。総悟の言っているのは事実だ。オレたちが来たときにはチャイナはいなかった。」


え?

_「うそ…5分前くらいには確実にいたのに…なんで?」

_「零杏、それマジですかィ?」

_「マジです。だって、その5分くらいの間にこの本を取りに行っていたのだから。」

と、ダンテの『神曲』を見せる。

_「そして、一緒にこれの宿題するはずだったのに…なぜ?」


荷物はそのままだったので、数分したら帰ってくるか、と思いしばらく待っていたが、神楽ちゃんは戻ってこなかった。


荷物を探るためそれをどけると、宿題で出されていたプリントが置いてあった。だが、この宿題は、原文から写さなければならない宿題なので、神楽ちゃんがしたとは思えない。また、字体が神楽ちゃんのものではない。

では、誰がしたのか?



_ Questi la caccerà per ogne villa,
fin che l’avrà rimessa ne lo’ferno
là onde'nvidia prima dipartilla.

この猟犬は(あまね)く町を巡りて彼女を追い()い払い、
始めに妬みによりて地獄から引き離されし彼女を、
再び其処(じごく)に戻してしまうならむ。




これは、授業でやった地獄篇(やつ)だ。
どうやらこれには、魔法がかかっているらしく、私が読んだら次に進むようにできているらしい。

隣で読んでる総悟たちには、まるっきり理解できていないようだ。


_ Ond'io per Io tuo méperso e discerno
che tu mi segui, e io sarò tua guida,
e trarrotti di qui per loco etterno.

そこで我汝の最善を鑑みて決意す
汝我に従い、我汝の案内人となりて、
そして汝をここより永遠の地に導かむ。



_ e vedrai color che son contenti
nel feco, perché speran di venire
quando che sia a le beate genti.

さらに炎の中で心満ちたる者どもに会えるならむ
時来らば祝福されし人々のところに
達する望みがあればなり。


_ A le quai poi se tu vorrai salire,
anima fia a ciò più di me degna:
con lei ti lascerò nel mio partire;

後にそれらの人々の処に汝昇り行くを願わば、
我よりもそれに適しき魂が在りなむ、
我の別れの際に汝を彼女に託さむ、



_ ché quello imperador che lá sù regna,
perch'i'fu'ribellante a la sua legge,
non vuol chén sua città per me si vengna.

かの上に君臨せし帝は、
我は彼の掟に背きし者なれば、
我を介して人が彼の(みやこ)に来るを望まぬが故。
 
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