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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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永遠のメロディ

 
前書き
今回の最終章はシリル以外のオリキャラたちにも活躍の場がたくさんある予定です。そのためシリルが出てこない話だったりが増えることがあります。どうか気長にお楽しみください。 

 
カルディア大聖堂に現れた一夜。予期せぬ男の登場にもっとも驚いていたのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一同だった。

「一夜さん!?」
「なんでここにお前が!?」

うずくまっているラクサスでさえとなぜこの男がここにいるのかわからず唖然としている。すると一夜は真剣な表情で彼らに返した。

「まさかあの仕打ちを忘れているとはね。まぁいい、まずはコイツを排除しようじゃないか」

先日クリスティーナでアルバレスまで乗り込んだ妖精の尻尾(フェアリーテイル)一同。その際彼らは当然のようにマグノリアまで彼らに送ってもらっていたのだが、礼もなしにギルドへと戻ってしまったらしく、一夜とタクトは2人で整備に終われていたらしい。それが終わりようやくギルドに帰ろうとしたところでアルバレスが攻めてきたため、怒りを覚えた彼らはそれを排除しにやって来たのだ。

「雑魚がでしゃばってんなよ」

一切気配を感じさせずに接近してきたことで第一撃は喰らわせることができたが、ワールと一夜の魔力の差は歴然。真っ正面からぶつかり合えば相手になり得ない。

「消え失せな!!」

妖精たちを排除するために溜め込んだ魔力をその男に向ける。一夜は己の攻撃を最大限に活かすためにかなり接近していたこともあり避けることなど不可能。

「私をなめてもらっては困るぞ!!」

放たれた魔力の塊に一夜は避ける素振りも見せない。まるで蚊を払うかのような動きでそれを弾くと、行き場を失った攻撃はカルディア大聖堂の壁を突き破り民家をなぎ倒した。

「ウソッ!?」
「あの攻撃を弾いた!?」

いくら強化されているとはいえスプリガン16(セーズ)の一撃をものともしないこの男にグレイとジュビアは目を見開く。それはワールも同様で、言葉を失っていた。

「短い間だったとはいえ青い天馬(ブルーペガサス)に在籍していた・・・つまりは私の家族同然!!そんな彼らを傷つけられ、黙っていることはできないのだよ!!」

腰にぶら下げていた瓶を鼻に突っ込む一夜。そのインパクトに見ていたものは顔面蒼白。

速度(スピード)香り(パルファム)!!零距離吸引!!」

目にも止まらぬ速さでワールに飛び込む一夜。パワーも相まってさすがのワールも押され気味。

「こりゃ確かに強ぇ!!面白ぇ奴もいるもんだな!!」

強敵とのバトルに笑みを溢すワール。それとは対照的に真剣な表情の一夜だが、無双タイムはそう長くは続かない。

「オラァ!!」
「ぐっ!!」

巨大化していた体が次第に小さくなってくる。心なしか速度も先程のキレが見られない。

「アッヒャッヒャ!!時間切れって言ったところか!?」

最大筋力、最大速度、どちらも瞬発力系の魔法であり、長期戦には向かない。ましてやそれを同時に使ったとなれば、一撃で決める以外に勝利の方法なんてなかった。

「短距離対物(アンチマテリアル)魔導砲!!」

鈍くなった動きの天馬に容赦なく砲撃を撃ち込む。一夜はそれを避けることができず、地面に伏せた。















自身の魔法を無力化したタクトを睨み付けるラーケイド。それに彼は気が付いたが、一切気にしている様子はない。

「まさか私の魔法を無力化できるとは」
「人間には芸術性が備わっています。それを刺激されれば、いかなる欲も抑制できる」

魔力で作り出したバイオリンを消し去り敵を見据えるタクト。彼は頭の中に浮かび上がる楽譜を魔力に込める。

音楽魔法(ミュージックメイク)・・・真夏の夜の夢!!」

目には目を、眠りには眠りを。睡眠中枢を刺激する旋律でラーケイドを追い込もうとしたタクト。彼はそれに一瞬目を閉じそうになるが、すぐに頭を振り眠気を払う。

「「隙あり!!」」
「!!」

その一瞬の隙をついて接近してきたシリルとウェンディ。2人は足に魔力を込め、タイミングを合わせて一気に蹴り込む。

「水竜の鉤爪!!」
「天竜の鉤爪!!」

幼馴染みコンビらしい息のあった連携攻撃。しかしそれはラーケイドに払われ2人は地面を転がる。

「鉄竜棍!!」

相手に反撃の余地を与えないため、ガジルが後方から続けざまに魔法を撃ち込む。それを再度ラーケイドは払うと、今度はナツが飛びかかるが、まるで読んでいたかのように回避した。

「面倒ですね。これは」

休む間もなく繰り出される攻撃を対処してはいるものの、なかなか反撃の糸口を見出だせない。しばらくその状態が続いていると、優しげな表情だった彼の顔が豹変した。

「目障りだ」

そう呟き目を細めた途端、彼を中心に大地が揺れる。解放された魔力により生み出された風により、彼らは吹き飛ばされてしまった。

「きゃああああ!!」
「うおおお!!」
「「「うわあああああ!!」」」

地面を転がった5人。彼らはすぐに体勢を立て直して敵を見据えると、彼はフッと口角を上げた。

「見せてやろう、抗えぬ欲の魔、“R(レスト)I(イン)P(ピース)”を・・・」

大地を揺るがす大魔力。感じたことのないそれに少年たちの額から汗が零れ落ちる。それを見たタクトは、ある決断を下すのだった。

















「アイスメイク・・・氷撃の鎚(アイスインパクト)!!」
「ウォーターネブラ!!」

グレイとジュビアによるコンビネーション攻撃。上からは氷の鎚、下からは押し寄せてくる水。逃げ場などどこにもなかった。

「その程度の攻撃じゃ無力!!無力なれば!!」

まともに攻撃を喰らっていたにも関わらずワールの体は無傷。まるで重戦車のようにそれを突破すると、空中で無防備なグレイの腹部に拳を叩き込む。

「グハッ!!」
「グレイ様!!」

最愛の青年が吹き飛ばされたのを見て心配するジュビア。だが、そんなことをしている余裕は彼女にない。

「戦いの最中に余所見とはねぇ」
「!!」

後ろを振り返るとそこにはアサルトワールの姿。彼は腕に取り付けられた銃口を向け、ジュビアへと撃ち込む。

「それはジュビアには効きません!!」

彼女の体を突き抜けていく弾丸。だが、ジュビアは痛みを一切感じていない。彼女の体は水でできており、ダメージを無効化することができるから、物理攻撃は意味を成さないのだ。

「へぇ、ならこれは?」

続けて拳を繰り出すワール。ジュビアはこれを水の体で受け止めダメージを回避・・・したかと思った。

「きゃああああ!!」

それなのに彼女は悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。攻撃を受けたと思われる部位は赤くなっており、煙が立ち込めていた。

「ジュビア!!」
「そんな・・・なんで・・・」

なぜダメージを受けたのか本人にもわからない。2人はワールの方を見ると、その原因がわかった。

「こいつ・・・腕から蒸気を・・・」
機械族(マキアス)なればこれくらい容易いこと」

ありとあらゆる装備が彼には備わっている。状況に応じてそれを使い分ければ、彼は常に優位性を保っていられる。

「水には雷ってのも定石だよな」

ラクサスとの戦いで溜まりに溜まった雷の力を開放。人1人を始末することなど容易いほどの雷撃をお見舞いする。

「そいつを待ってたぜ!!」
「ラクサス!!」

ジュビアに命中する直前で割って入ってきたのはラクサス。彼はそれを食すと青ざめていた顔がわずかではあるが治り、敵へと向かっていく。

「しまった!!まだ動けたのか!?」

魔障粒子のせいでラクサスは動くことができないと踏んでの一撃だった。このチャンスを逃すまいと加速し拳をラクサスは撃ち込むが、ワールはやはり表情を崩さない。

「だが俺にも雷は効かん!!貴様の攻撃は無意味!!」

向かってくるラクサスに同等の速度になるために背中からブースターを出す。加速したワールはラクサスの顎を上げさせると、防御体制が取れない彼に至近距離で爆撃をお見舞いする。

「ああああああああ!!」
「うわああああああ!!」
「きゃあああああああ!!」

グレイたちさえも巻き込む大爆発。カルディア大聖堂を消し去るほどの力を前に彼らはなす統べなどなかった。














「ナツ、私はあなたを必ず殺さなければならない。そういう運命なのだよ」
「はぁ?」

冷静な表情で最後の言葉をかけるラーケイド。ナツは彼が何を言いたいのかわからず聞き返すことしかできない。

「僕は父さんを解放しなければならないんだ、君と言う呪縛からね」

次第に魔力を高めていくラーケイド。その足元から無数の札が舞い上がる。

「この欲には誰も抗えない。永遠なる死の眠りを!!R(レスト)I(イン)P(ピース)!!」

再び押し寄せてくる眠気。これを相殺しようとタクトがバイオリンで目覚めのリズムを繰り出すが、一行に眠気が覚めない。

「マズイ・・・目が開けてられねぇ・・・」
「このままじゃ・・・」

このまま目を閉じれば楽になる。しかしそれは生きることを諦めることと同義。彼らは懸命に抵抗しようとするが、そう簡単にこの魔法を振り払うことはできない。

「シリルくん、ナツさん・・・ミラさんたちを連れて遠くに離れてください」
「え?」
「何言ってんだ!?オメェ」

いつ死んでもおかしくない状況下でのタクトの提案に困惑せざるを得ない。突然の提案を出した張本人は、なぜか笑みを浮かべていた。

「確信しました。こいつは俺1人なら勝つことができます」
「なっ・・・」
「本当ですか!?」

にわかには信じがたい彼の言葉に目を見開くガジルとウェンディ。タクトはそれに頷くと、改めて口を開く。

「ですが、逆に皆さんがいると厳しい。足手まといになってしまうので」
「なんだと!?」

眠気がある中でも、この言葉を聞き流すことはできなかったナツが掴みかかろうとする。しかし、彼の鋭い眼光に足が止まった。

「カルディア大聖堂で一夜さんが戦っているはずです。そっちに向かってください」
「一夜までいるのかよ!?」

一夜までいることに驚いていたガジル。本来ならここでナツが納得がいかずに食いつく場面なのだが、この時の彼はなぜかそれをしなかった。

「いいんだな?任せても」
「ええ、もちろんです」

柔らかな表情の彼を見て大丈夫だと感じたのか、ナツはエルフマンを担いでこの場を後にする。

「俺がこっちの2人は運ぶ。行くぞガキども」
「は・・・はい!!」
「わかりました」

ミラとリサーナを抱えてガジルもそれに続く。シリルとウェンディはこの場を本当に離れていいのか迷ったが、この場はタクトを信じて立ち去ることにした。

「私を倒す?あなたが?」

2人だけになったその場所でラーケイドは不満げな表情を見せる。無理もない、明らかに格下の相手にそんな発言をされては、苛立たない方がおかしい。

「何か作戦でもあるのですか?」
「あるよ、もちろん」

タクトはそう言うと魔力でピアノを作り出す。彼は椅子に腰かけると、悠長なことに演奏を開始した。

「このタイミングでピアノとは・・・随分な余裕が・・・」

1歩歩み寄ったところで心臓が大きく跳ねるのを感じた。ラーケイドは立っていられなくなりその場に膝をつく。

「ただ、これは勝つための作戦ではありません」

なおもゆったりとした曲調の音楽を奏でるタクト。その目の輝きは少しずつ薄くなっていた。

「大切な人たちを守るための、僕の最後の一曲です」


















♪♪♪♪

遠くから聞こえてくる音楽。はっきりと聞こえるわけではないが、それが誰の物であるか、この男にはすぐにわかった。

「タクト・・・」

ボロボロの体を何とか起こした一夜。彼は時おり聞こえてくるメロディに合わせるように立ち上がる。

「あ?まだ立ち上がれるのか?」

グレイもジュビアもラクサスも、全員が地面に伏せている。それを見た彼は自分の無力さを呪った。

「なぜ君たちが倒れている。なぜ君が生きることを諦めなければならない・・・」
「あ?」

目から零れ落ちた一粒の雫。一夜はワールの前に倒れるラクサスの前に歩み寄ると、彼にある瓶の匂いを嗅がせる。

「なんだ・・・そりゃ・・・」
「案ずるな。君は眠っていてくれればいい」

一夜は彼の前に差し出した瓶を自ら嗅ぐと、ある変化が起きた。
魔障粒子に犯され青ざめていたラクサスの顔色が元に戻った。変わりに、これまで何ともなかった一夜の顔色が一気に悪くなる。

「なんだ!?何が起きている!?」

なぜ一夜の顔色が悪くなりラクサスが治ったのか分析が追い付かない。一夜は力の香り(パルファム)で自らの筋力を最大限に高める。

「知っているかね?人間は、追い込まれた時にこそ本来の力を発揮できるのだよ!!」

一夜の使った魔法は入れ替え(チェンジ)香り(パルファム)。体内の異常を入れ替えることができる魔法。

「まさか!?自分を追い込むために魔障粒子を!?」

自殺行為としか取れないその行動に驚愕しないわけがない。ラクサスが持っていた魔障粒子を引き継いだことにより、一夜の息は上がってしまう。

「この一撃にすべてを賭けよう。友がしてくれているように」

次第に高まっていく魔力に危機感を抱いたワールは近付けさせまいと攻撃を連射する。しかし、背水の陣で臨む一夜にはまるで無意味だった。

「食らうがいい!!力の香り(パルファム)!!MAXメェーン!!」
「ぐあああああ!!」

ワールの肉体を破壊した一夜。心臓部を壊されたワールは機能が停止し、動くことができなくなった。

「タクト・・・死んではいけ・・・ない・・・」

体力の限界に達した一夜はそう言葉を残してその場に崩れ落ちる。彼の目から零れ落ちる涙は、大切な友に向けてのものだったのかもしれない。














♪♪♪♪♪

地面に四つん這いになり苦しみ悶えるラーケイド。その傍らでピアノを弾き続けるタクトの顔色も、少しずつ青くなっていた。

「この魔法はまさか・・・“永遠のメロディ”!?」

胸の辺りを押さえているラーケイドはこの魔法を知っていた。タクトは恐れ戦く彼の顔を見て思わず笑ってしまう。

「僕はこの曲が好きなんですよ。禁術とされているこの曲がね」

好きな曲・・・それなのに彼の顔から楽しさは一切感じられない。懸命に溢れ出ようとする何かを堪えているのは、誰の目から見ても明らか。

「やめろ・・・これは術者も死んでしまう魔法の―――」
「だから今使ってるんじゃないですか」

この魔法が禁術とされたのには理由がある。この音色を聞いたものは誰であろうが関係なく意識を奪い取り、永遠の音楽の中で行き続けることになる。つまりは、この世界からの解放・・・死を意味していた。
そしてそれは、音楽にもっとも近い術者も例外ではない。

「いいのかい?この音楽が終わってしまえば私も君ももう欲を満たすことはできない!!ただ何もない世界で行き続けることになるのだよ!!」
「何もないとは聞き捨てならないな・・・」

説得に入るラーケイドの言葉に不愉快な顔を見せるタクト。彼はすでに輝きを失った瞳で哀れな強者を見下ろす。

「僕はこの美しきメロディと生き続けるんだ、永遠に」

一切迷いのないその姿に、ラーケイドは唖然とした。動くことも何もできない彼は目を閉じ、その場に崩れ落ちる。

(一夜さん・・・僕はあなたに出会えて幸せでした)

タクトの中で蘇るのは、一夜と出会ってからの日々。彼に巡り合ってから、毎日が充実していた。

(背が大きすぎて気味悪がられていた僕を天馬に誘ってくれた一夜さん・・・ヒビキさんにはヘアスタイルを教えてもらった・・・イヴさんには接客、レンさんには飲み物の作り方を教えてもらいましたね)

走馬灯が頭を過る。この時が永遠に続けばいいのにと思っていた彼も、それが今日で終わってしまうのだと心が揺れた。

(一夜さん、僕は絶対に泣きません。皆さんが幸せであり続けることを信じて、深い眠りに付きます)

震える指先。一瞬でも気が抜ければ落ちてしまいそうな、それほどに体は疲弊していた。

「サヨウナラ・・・どうか・・・生き残って・・・」

魔力でできたピアノが消え去り、地面に崩れ落ちる骸。その表情は爽やかなものだった。
音楽を愛し、音楽に愛された少年はその短い人生に幕を下し、深い眠りについた。永遠のメロディとともに。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
先に言っておくと、今回の最終章はかなり多くのキャラが命を落とすことになりそうな予感です。
ぶっちゃけ、原作キャラにも被害が及ぶかも・・・
その辺考慮して、心構えだけしておいてもらえると幸いです。 
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