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魔法少女リリカルなのは 大切なもののために

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第3話

 みなさんこんにちは、涼です。
 アルおじさんと話したあと、僕はすぐにお父さんとお母さんを説得に行ったのですが・・・

「ダメだ。」

 と、一言で一蹴されてしまいました。

「なんで!?お父さんもお母さんも魔導師だったんでしょ!!」

「ああ、確かに魔導師だったよ。だけど、この世界に来たのはお前やリュートに魔法に関わって欲しくなかったからだといったはずだろう?それに僕たちはもう、魔法を捨てたんだ」

 お父さんは僕の目を見つめたまま語り、お母さんはそんな僕たちをっ心配そうな顔をして見つめていた。

「じゃあ、なんで家には向こうの世界の道具や魔法に関する本がまだ残ってるの?それって、お父さんがまだ魔法に未練があるからじゃないの?」

 僕の一言でお父さんの表情が一瞬だけ反応する。

「それでもダメだ。リョウ、お前はまだ8歳だ。魔法を学ぶのはこっちで大きくなってからにすればいいじゃないか」

 僕が簡単に諦めないとわかったのだろう。お父さんは結論を先延ばしにする提案をする。
 正直に言うと、僕は同学年の子達よりも早熟で頭の回転も早いと自覚している。だからこそわかる。お父さんは優しすぎるんだ。僕が大切だから魔法に関わって欲しくない、だけど、僕が大切だから非情にはなりきれないんだ。

「だったら、あと一年。あと一年でお父さんを超える魔導師になる。僕がお父さんに勝てたら僕がおじさんのところに行くのを許してもらうから。」

 そう言い捨てると、僕はそのまま席を立ち、リビングを後にした。



 リョウくんが部屋を出て行ったあと、リュウジさんはソファに脱力したようにもたれ掛かった。

「アルのやつ、リョウに妙なこと吹き込んで・・・」

「でも、リョウが魔導師になりたがっているのは知っていたじゃないですか」

 リュウジさんがこぼした一言に私はそのように返した。

「それはそうだけど、僕はリョウを守りたいんだ。」

「わかっています。守りたいけど、大切だからリョウくんの将来を閉ざしたくないってことも」

 私はコーヒーメーカーから沸きたてのコーヒーをカップに淹れて彼に渡す。

「でも、私はリョウくんが魔導師じゃなくとも、魔法を学ぶのは実は賛成なんです。」

「え?」

 彼がキョトンとした顔をする。ああ、やっぱり、リョウくんが魔力に覚醒してからずっと魔法の勉強をしていること、知らなかったって顔だ。

「リョウくん、魔力に覚醒した時からずっと魔法の勉強してたの知らなかったんですか?」

「魔力に覚醒した時から!?じゃあ、3歳の時じゃないか!!」

「ええ、こっちに来るときも捨てる予定だった魔法学関係の本もこっそり持ってきてましたし」

「そんなに前からか・・・ということは、独学で学ぶことに限界がきはじめて、そこにアルからの誘いがあって本気になってしまったってことか」

 さすがに執務官をしていただけはある。あれだけの話の内容で状況を理解した。
 正直、いまでもリュウジさんが管理局を離れたのは損失だと思う。
 彼にとっても、局にとっても。
 魔導師ランクや総魔力は低く、支援型魔導師であっても、ずば抜けた状況判断力と情報収集力は提督陣も一目置いていたのだから。
 それに、アルティス提督やリューネ先輩のような近接戦を得意とする魔導師とコンビを組ませるとほぼ敵はない人なのだから。

「やっぱり、僕が局を辞めたのはマイナスだと今でも思ってる?」

 驚いた。私は口に出していないのに、表情だけ見てそう言ってきたのだから

「正直に言うと、その通りです。リュウジさんは局に・・・いえ、海にとっては必要不可欠な人でした。リューネ先輩や私のように陸の魔導師と分け隔てなく接し、他の陸の魔導師からも慕われていたあなたは管理局のこれからに絶対に必要だと今でも思っています。」

「そうだね。でも僕はこの道を選んだ。それを認めてくれたから君も来てくれたんだろう?」

 リュウジさんの横に腰を下ろしていた私の肩をそっと、抱き寄せてくる。

「そうです。私は貴方の考えを受け入れました。だからリョウくんの考えもう軽量と思います。」

「そうか・・・リュートがもし、同じことを言っても?」

「ええ、もちろんです。」

「そっか、わかったよ」

「もしかして、リョウくんが私の子供じゃないからとこ思ってました?」

「・・・・・・・・・少し」

 まったく、この5年、この人は何を見てきたんでしょうか?
 少し腹が立ったので脇腹をツネってやりましょう。

「イテテテテっ」

「見損なわないでください。リョウくんは私の子供です。例え、誰がどう言おうと私の愛しい息子です」

「わかった、わかったから、もうつねらないで」

 まったく、変なところで鈍感なんですから。
 でもリョウくん。お父さんに勝つといったからには、勝つまで私は認めませんからね。
 あなたのお母さんは意外と厳しいんですから



 あの後、カレンがお風呂に入りに行くと、僕は通信パネルを展開する。

「よう、こんな時間にどうしたんだ?」

 そこに映し出されたアルの顔が少しだけ憎く思える。

「どうしたもなにも、リョウに余計なことを吹き込みやがって・・・」

「ああ、そのことか。リョウの奴、もう話しやがったんだな」

「いきなり、話があるって言われて正直驚いたぞ。」

 僕の疲れた顔を見てアルは苦笑する。

「くく、ま、お前の表情見る限り、8歳の息子の反抗期に手を焼いたってとこか」

「ああ、その通りだよ。全く」

「正直に言うぞ、リュウジ。」

 急にアルが声色を変える。

「・・・なんだよ」

「例え管理外世界にいても魔法関連の事件に巻き込まれる可能性はゼロじゃない。」

 その通りだ。アルの行っていることは正しい。僕たちがコンビを組んでいたときに担当した事件のそのほとんどが管理外世界の事件だったのを覚えている。

「それに、お前が行った第97管理外世界な。かの『ギル・グレアム』の出身世界らしい」

「何!?あの歴戦の勇士、グレアム提督か!?」

「ああ、彼は出身世界で局の魔導師と出会い、魔法に目覚めたそうだ。つまり・・・」

「わかってる。独学で学ぶより、本格的に魔法の勉強をして自衛の術を持っていたほうがいいってことだろ?」

「そういうことだ。まだまだ、頭のキレは衰えていないな。」

 アルの言うことはわかっているつもりだ。魔力に覚醒したんだ。おそらくリョウにも僕と同じあの力があるはずだ。
 そうなると、魔力の制御をしなければならず、ほおっておけばどうなるかわかったものじゃない。

「それに、もし事件に巻き込まれたらお前たち二人だと攻めに転じれないだろ?」

「・・・そうだね」

 僕は支援型魔導師でカレンは典型的な結界魔導師だ。
 並大抵の犯罪者なら撃退も可能だが、手練や集団だった場合に家族を守りきる自身は正直ない。

「・・・守るって誓ったはずなのにな・・・」

「何も、大切に箱の中に閉じ込めるのが守るって方法だけじゃないぞ。」

「・・・そうかもしれないな。でも、僕を超えるといった以上、僕が認めないとそっちには行かせないからな?」

「わかってるよ。そうだ、ちょっと情報な、お前も気になってただろうし。」

 なんの情報だろう?もしかして、あの事件関係のだろうか?
 確か、最後にミスが起きて事故が起きたと聞いていたが・・・
 リューネが死んだあとは極力あの事件関係の情報は遠ざけていたから詳しいことは知らない。
 知ろうと思った頃には情報規制がされていたから、アルに調査を頼んでいたのだ。

「あれの事件の最後にクライドの奴が殉職したそうだ」

 ガタっと、座っていたテーブルの椅子を立った拍子に倒してしまう。

「クライドが・・・死んだ?」

「ああ。正確には死んでいただがな。リューネが逝っちまった後にだ」

 そんな・・・リューネだけじゃなくてクライドまで死んでいたなんて・・・
 クライドも僕とアルと同期生で同じく同期のリンディと結婚して息子もいたはずだ

「それでな、クライドの息子がこの春に入局した。」

 それも衝撃だった。
 まさか、クライドの子供が・・・確かリョウの一つか二つ上だったような気がする。

「リンディも承知なのか?」

「そりゃあ、そうだ。今では提督やってて艦も一隻任されてる」

「そっか・・・彼女は今も頑張ってるのか・・・」

「ああ、その子もな。お前も覚悟は決めとけよ」

「うん。わかってるよ」

「そっか、それじゃあ、もう切るぞ?」

「悪かったな、遅くに。」

「気にするな。じゃあ、お休み」

 そう言うと、アルは通信を終えた。
 僕も覚悟しろ・・・か・・・そうだね、僕も覚悟しなくちゃいけないかもしれない。
 子はいつか必ず親の下から離れる。
 それが遅いか早いかは人それぞれか・・・
 でもね、リョウ。僕を納得させるだけの実力を見せないと許可は出さないからね。
 そう決意した。
 
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